恋愛話が致命的に盛り上がれない
じゃあ、ロリコン神部とタカの恋愛がいいかって?
いや、全然。
お互い性格はゲスで、演出もベタで臭い。
女に学問は不要と言いたげな価値観押しつけはクソ寒いですし、互いの写真すら不気味に見えてきました。
今週の担当者がラブロマンスに自信があるとしたら、目を覚ませと言いたい。
最大の問題点は、神部にもタカにも、食堂美女にも魅力ゼロというところでしょう。
あの食堂美女は美形ではありますが、男が出てきた途端にデレデレして仕事そっちのけって、残念じゃないですか?
福子(まんぷく立花福子モデル→安藤仁子)のホテル時代から思っていましたけど、本作に出てくる人間って全員仕事人として最低なんですよ。上から見下ろして、唾すら丼に入りかねない、麺も伸びる状況で、ダラダラ話す飲食店店員。いったい何なんでしょう。
本作特有のガードのゆるさしか見てとれません。
だから恋愛が致命的に盛り上がらないんですよね。
『マッサン』で、マッサンとエリーが木立の中を走っていたあの爽やかさ。
『あさが来た』で、新次郎から算盤「パチパチはん」をもらったあさの、あの目の輝き。
そういう要素が1ミリもない。
萬平がパンツを見せつけても福子がボケーっとしているとか、そんな出会いばかりでしょ。
パンチラロマンスってジャンル、初めて知ったわ!
どうにも
「マッサン、あなたのウイスキーに懸ける情熱。そこに恋をしました」
「あさちゃん、あんさんのああいうおもろいところに惚れてもうたわ」
というようなフックがないんやね。
このオスとこのメスはエエ子を作りそう
本作では、女はガードがゆるくて、言いなりになるか。
男はブランド。
そこしか見ていない。
そんなのは恋愛じゃない、ただの打算だ。
スーパーで50円引きの惣菜を見つけて、
「お、ラッキー。安いやん」
とカゴに放り込む、そんな心理と大差がないんや!
どうせこのラーメン屋美女だってアイテム扱いでしょ?
東京ステージでは、ラーメン店で美女も得られる、そういう【ラーメン屋がRPGのぱふぱふ酒場】システムなのです。
もうエエよ。そんなんもうエエ……。
赤ちゃんができた――というせっかくの報告すら、シラけてくるのはそこに感動もへったくれもないからでしょう。
【鮭の卵に白子をかけたら、稚魚がふ化しました〜】レベルの感慨しかない。
だって、そこには愛がない。
ただの繁殖。鈴やら福子やらが、子作りだの赤ちゃんが増えたらだの、デリカシーもなく吐き散らす理由も腑に落ちます。
『まんぷく』には、夫婦愛なんてないんです! 少なくとも視聴者に感じさせる努力はしていない。
このオスとこのメスはエエ子を作りそうやな〜と考える、そんな競走馬の種付けと同じやで。
考証手抜きすんなや!!
最後に、もう一つツッコミさせていただきます。
ラーメンが根幹にあるドラマなのに、考証手抜きすんなや!!
そもそも近所のラーメン屋が立花一家の圧力に屈し、家出した鈴や面倒見切れない源の預け先になることから嫌な感じを再確認しておりました。
本作には情熱なんて欠片もない。
ナゼって一番大事なラーメンの考証すらミスばかりですからね。
・不自然なまでの中国由来削除
・普及時期がおかしい
・戦前は男性や肉体労働者が食べるものだったのに、福子とその友人が女同士で食べている
この点は今までも突っ込んできましたが、今日新たなる考証ミスです。
なんや、あの丼はー!!
あの具材はー!!
お店のメニューにあった【烏龍茶】なんて、当時、普及してへんがな!! しかも何でしょうか? 「うーろん茶」というひらがな表記って?
漢字で「烏龍茶」でも、カタカナで「ウーロン茶」でも、外国由来だということがわかりますよね。ところがひらがなというまったく一般的ではない奇っ怪な表記ですと、なんだか日本のお茶みたいですね。あーら不思議! よくもここまで卑劣なことができますね。
昭和の時期、ラーメン丼は中国ルーツを強調するようなものでした。
「雷紋」という中国由来の模様や、龍の絵がおなじみです。
ラーメンといえばあの柄をおもいおこす人もおられるでしょう。
たとえお店で見かける機会が減っても、アニメやマンガでは使われていたりしますよね。
ラーメン店や中華料理店も、中国ルーツを強調していたものですよね。
漢詩文の名句から名前をとるとか、なんとか軒という名前とか。
「三国志」とか「赤壁」という店名に思わず吹き出したこともありましたけど、インテリアも中国ぽい照明や壺がアクセントになっておりました。
そういう中国要素が後退し、丼も無地でどっしりとしていて、高級感のあるものが好まれるようになったのは、平成になってからのことです。
具材もおかしい。
どう見ても、現在のラーメン店のもの。
昔はもっと、チャーシューひとつとっても素朴でした。
朝ドラつながりならば、『ひよっこ』でみね子たちが銭湯帰りにすすっていた光景を思い出してくださいね。
全然違いますよね?
そういえば『わろてんか』で登場したブーケが、そのへんの花屋でスタッフが買ってきたとしか思えない、当時としてはありえない形だったことを思い出しました。
今回は、それに輪をかけて酷い。
中国要素をいかに抜き去るか?
クソ駄作だった『わろてんか』より酷い――正直、そんな展開は予想だにしませんでした。
『まんぷく』ではテーマであるラーメンの考証すら、とにかく雑!
なぜメインとなるテーマで考証のミスが連発するんでしょうか。どう考えたっておかしいでしょ。
『カーネーション』が衣類について手を抜くとか、『マッサン』のウイスキー作りの手順がデタラメまみれとか、そんなことありましたか?
お笑いの考証が手抜きで、時系列を数十年単位で間違えていた『わろてんか』も呆然としたものでしたが、本作はもっと酷い。
ラーメン考証については一貫した信念を持って間違えています。
それは
【中国要素をいかに抜き去るか】
ということです。
ラーメン店の中から、中国風のインテリアや食器が消えている。
中国系の経営者や店員、戦時中、中国にいた経験がある人すら出てこない。
そして最大となるこうした変更は、言うまでもなく安藤百福氏から台湾ルーツを削除したことです。
こんな邪悪な食文化簒奪ドラマは正直【打ち切り】がふさわしいとしか言いようがありません。
個人的に、こういうくだらない忖度を【新潮45現象】と呼んでおります。
あれはどうせLGBTを叩いたほうが受けると判断し、大炎上休刊となりましたよね。
そういう世相や受け手を読み間違えていることが、本作と、そして大河『西郷どん』の戦略ミスだと思いますね。
「今受けるのは、日本発のパーっと世界中で受けた製品だ! チキンラーメン、インスタントラーメンなんてそうだろう! なにぃ、台湾ルーツだと? そんなもん、消したるわ。ラーメンを日本のものにしても視聴者は気にしないだろう。ついでに、NHK東京制作の生意気女が叩かれていたっけ。ああいう生意気女が大嫌いな層に届く作品にすれば、絶対に受けるぞ! よし、多少手抜きしようが、セクシー描写とウケ狙いをすればいいだろう! 子持ち三十路女優を主演、セクシー男優を相手役にすれば、主婦層だって文句なしだ!」
こういう打算を邪推したくなる。
さほどに異常なんです。
聞いてみたい。
ねぇ、ねえ、まさかここまでナメくさった気持ちじゃありませんよねえ?
新潮社のライバルである文藝春秋がNHKの面白いスクープを出しましたねえ。
文藝春秋さん、次はNHKドラマチームの腐敗にでも、ちょっとメスを入れてみまませんか?
※スマホで『半分、青い。』や『八重の桜』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!
本日の放送もめちゃくちゃでした。
そもそも奨学金を給料と見なすために脱税となった程度で軍事裁判って・・・・
で、社長(旦那)が獄中にあるのに奥様と社員が中華料理屋で宴会です。
しかも料理食べて奥様が「おいしい」と満面の笑顔で・・・・
強制労働させられている旦那は、フォークリフト用のパレットをつくっていました。
描いているのはいつの時代なんでしょう?
考証って言葉はどこかに行ってしまったんでしょうね。
『まれ』『わろてんか』をも凌ぐ出来の悪さ・くだらなさ。
その点からすれば、打ち切りにしてしまっても何も問題はないかもしれないようにも思えるが。
しかし、朝ドラ史上稀有の、不名誉極まる「打ち切り」という事態になったとき、世間はこぞって全ての原因を出演者になすりつけようとするであろうことは、火を見るより明らか。やれ容姿がどうだの、独身者でないからどうだのと、的外れな非難があふれかえる様が容易に想像され得る。
今作の場合、原因は全てNHK大阪の制作陣、脚本担当等にあるのは、これまでレビューで述べられ続けてきたとおりなのに。
そうなると、「真の悪は出演者非難の騒動に隠れて知らん顔」となってしまう。
ならば、「打ち切り」は良いとは言えまい。
まあ、今のNHKに、「打ち切り」の決断などできる筈もなかろうけど。
ならむしろ、今のままダラダラ続けさせ、こちらのレビュー等で問題点を繰り返し明らかにし続けるのが良いだろう。
必ず人の目には触れるし、少なくとも、本来「被害者」である筈の出演者が不当に貶められる事態は避けられる。
ごめんなさい、
「視聴前」です。
訂正します。
武者さん初めまして。
『あさが来た』以来の朝ドラとして『まんぷく』を見ている者です。
今となっては一体何を期待して見始めたのか分からないのですが(『八重の桜』が好きだったので尚之助様を求めていたのかも知れない)、鈴さん家出週で完全に心が折れました。しかしその後も鈴さんに対する作品のスタンスは変わらず、ギャグパートと化し、笑えない私は真面目に心折れてアホでしたとしか言いようがありません。
試聴前に武者さんの厳しい見解は読んでおりました(台湾ルーツの消失)。考えさせられ納得の指摘でしたが、慌てて決めつけることもないだろうと楽観視しておりました。忠告は聞いておくべきでした。
ところでこちらのサイトを知ったきっかけは『西郷どん』(が面白くなかったから)です。大河ドラマは習慣なので面白くなくても最後まで見ますが、唯一途中離脱したのが『花燃ゆ』でした(不快だった)。当時武者さんのレビューを知っていたら続けて見ていたかも知れません。
『まんぷく』も武者さんのレビュー(問題提起)が続く限り見て、純粋に楽しむのは『あさが来た』に譲ります。
『あさが来た』はほんとに楽しかった。ドラマが終わってロケ地の近江八幡へ行ったんです。はつさんお嫁入りのシーンはここだったんだとめちゃくちゃ感激しました。
そして再放送では自分が実際見てきたお堀が画面に映し出されると、あさちゃんがお姉ちゃんを追って走った堀沿いの細い通路を私も歩いたよ!!と再び感動して胸があつくなりました。
本放送当時は知らなかったので、再放送にあわせてレビューも楽しく拝読しております。アップ待ってます。
長くなりました。
では武者さん、どうぞくれぐれもお体に気をつけてお過ごしください。
「紛らわしい名称の偽物が現れる」…『べっぴんさん』では、きっちり描かれていました。
今日はこの作品でもそんなシーンが出てきたものの、比較にならないくだらなさ。
まさに、「『偽物騒動』の偽物、まがい物」ということか?
てるてる家族でチキンラーメン出てきて良かったな。
今日のヤフーニュースでちょっと批判的な記事が出ていて、それが朝日系のものでした。コメント欄に記事の内容よりも朝日由来を叩き、反日よばわりするコメントが散見しています。
現政権がらみの記事へのコメント欄を彷彿させる辺りで、まんぷくの評価は歪められていることを確信しました。
なるほど、中国由来を消したいわけだ。
もちろん、中には純粋に楽しんでいる方もいるとは思いますので、そこを否定する気はありません。
朝ドラを見たことがない脚本家が持つ朝ドライメージで作られた物を、王道と呼ぶ浅はかさ。
深く考えずに見たくても、不愉快にしかならないこのドラマを許容して心から(ネタではなく)面白がれる人とは、たぶんわかりあえないんだろうな、と私個人は感じています。
まあ、わかりあいたいとも思わないか。