あさが来た 34話 感想あらすじ お妾さん、囲っておくれやす!

産気づいたはつをてんやわんやで助ける加野屋の面々。
お産が穢れとされた時代なら家から放り出されたことでしょうが、迷惑どころか加野屋はハッピーモードで畳を剥がしています(昔のお産の風習です)。

あさと新次郎は「かわいらしいやろなあ!」と言い合いはしゃぎますが、そういうあんたらもかわいらしいわ!
正吉とよのも喜んでいます。

漏れたホンネだから問題あるので

出産を終えたはつを見送りに、あさが出ていきます。
するとよの「ははぁ〜」っと大きなため息をついて、あれがうちの孫だったらば、やっぱりあさではなくはつが嫁ならばよかった、と言い出します。

あ〜あ……しかもそれをあさが聞いてしまいます。
さすがによのは焦っていけずを言ったわけではない、本音が出ただけと弁解。のぉおおお〜……それが問題なんですよ。

菊のように狙い澄まして狙ってくるパワハラよりも、ある意味こういう天然系本音が刺さるというのはよくあることです。
明治のお話ですが、この関係は平成の今にも通じます。

「お嫁ちゃんはどうして外で働くの? 働くより早くお孫ちゃんの顔を見せてよ」

「お嫁ちゃん、仕事をやめたらどうなの? お孫ちゃんがかわいそうじゃない〜」

共稼ぎではないと回らないなんてコトがわからずに、自分の若い頃基準で嫁が働くことを「本音で」とか「お孫ちゃんがかわいそうなの〜」とかそんな理由で反対するお姑さん、あるあるでしょうね。

よのにはあさがいなければ加野屋が潰れたかもしれないとか、あさが現在だって加野屋の立て直しに頭を痛めているとか、そんなことを理解しようとは思わないのです。

待望の初孫が生まれた栄達は生き生きしています。

一方で菊は孫の顔を見ようともしないで突っ張っています。
ここまでひねくれていると気の毒になるほどです。

それにしてもこんなかわいい子が産まれたのに、惣兵衛はどこにいるのでしょうか。

借金は新政府が返済というが……

年が明け、明治4年(1871年)になりました。

明治政府は廃藩置県を実施。
大名家の借金は新政府が返済することになります。

これがまた無茶苦茶な話で、金額ではなく年代で区切り、古いものは帳消し、新しいものは五十年掛けて無利子で変換するというもの。

大河『花燃ゆ』の廃藩置県では「勝ったのにどうして奥御殿を閉めるのじゃ?」とか能天気なことを銀姫が言い、しかもそれを制作側は「こういうのが女性の感性でしょ!」とかドヤ顔しておりました。

また奥御殿が閉じる時、ヒロインが上から目線で「せわぁない」とかスピーチし、暢気そのものでしたが……。

あさは眉間に皺を寄せ、そろばんを弾いて損害額を計算しております。

こうして比較すると大河は「女性視点だから能天気」ではなく、「下々の苦しみなんてわからない、おにぎりがなければスイーツを食べればいいじゃない鈍感女視点」であったのがよくわかります。

敏感なあさは廃藩置県ショックをきっちりと味わっています。

石炭手にして山屋が来訪

あさや雁助は苦い顔でそろばんをバチバチ弾いております。

あまりの形相に、お調子者の弥七が二人の顔を東大寺の仁王像に譬え、亀助は凛々しい男が二人と言うほどです。

その話を聞いてクスクス笑うのはふゆ。
無事、加野屋に雇われたようでホッとしました。

そこへ山屋が来訪。手にしているのは石炭です。
あさは興味津々で石炭を眺めますが、うめにとっては石にしか見えないようで片付けようとしてしまいます。

ここで山屋はあさを「加野屋の四男坊!」と褒めます。
嫁ではなく、息子を増やしたようだと言われているとか。鉱山の持ち主は櫛田と言い、先ほど亡くなったそうです。その未亡人が鉱山を売ろうとしているとか。

正吉は乗り気になってきたようですが、まだまだお金は足りません。
あさは櫛田夫人と直々に会い、分割払い案でいけるかどうか交渉したいと正吉に提案します。

正吉は交渉のために家を空けることも含めて、覚悟はあるのかとあさに問いかけます。
そうであれば、もう止めないと微笑む正吉。
この父娘も、かなり腹を割って話せるようになりましたね。

お妾さん、囲っておくれやす!

次の場面、寝室で寝間着姿のあさが髪をおろし鏡をじっと見ています。

寝室に入ってきた新次郎に、九州での交渉は最低でも半月、場合によっては一ヶ月かかる、その間旦那様のお世話ができないとあさは言います。

新次郎は「何が言いたいんや?」と優しく微笑みながらあさの隣に座ります。

たぶんですけれども、新次郎はあさが「うちは寂しい」と言うことを期待していると思います。視聴者も、そうだと思うのですが。

ところが深々と手をつき頭を下げたあさが言ったのは、
「どうかお家のために、お妾さん、囲っておくれやす!」
でした。

衝撃的なラストです。
実は史実の浅子もなかなか子に恵まれず、かつ難産であるため一女しか産んでいません。

原案でも妾を夫に勧めています。

しかしドラマではカップル萌えも納得のラブラブっぷりでしたからね。こうくるとは予想外でした。

積もり積もって、その上での決断か

では唐突か?
というとそうではありません。

よのが妾計画を進めていること。それにはつの出産でわかった、夫も自分も赤ちゃんが好きなこと、よのが孫の顔を見たがっていること。周囲から男のようだと思われていること。

いくら図太いあさでも、こうしたことを見聞きした際にショックを受けた反応をしています。
彼女の中で積もり積もって、その上での決断だと思います。

あさと新次郎は相思相愛です。お互いわかっているでしょう。
それでもあさは、加野屋のためにはどうしても九州に自ら赴かなければならない。それもわかっているでしょう。

家のためならば自分の気持ちよりも優先しなければいけないことがある。
当時はそれが当たり前だったとしても、そこには葛藤があります。

その葛藤を「女性はこういうの嫌だろう」と安直にカットするのではなく、敢えてそこを丁寧に描く本作に、誠意を感じます。
どこぞの至誠を連呼する作品より、よほど視聴者にも時代にも誠実に向き合っています。

大河ドラマでも、跡継ぎや側室問題で悩み苦しむ女性が描かれてきました。

ところがいつの間にか、戦国武将でも例外的な側室のない武将ばかりが主役に選ばれるようになり、そうした描写は消えていきました。

今、それを朝ドラが取り戻したのは勇気あることだと思います。

本作はまるで実力あるフィギュアスケーターが、敢えて難易度の高い技をたくさん入れたプログラムを滑っているような、そんな感覚があります。

安全なポイント稼ぎで仕上げてもよいところを、敢えてハイリスクハイリターンで跳ぶ。
そんなチャレンジ精神が感じられます。

この熱く誠意ある挑戦、どこまで跳びきれるか見守ってゆきましょう!

※大河ドラマも朝ドラもU-NEXTならスグ見れる!
スマホでもOKです。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください

あさが来たモデル広岡浅子と、五代友厚についてもリンク先に伝記がございます

【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]→amazon link

 

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