ゴールデンカムイ アニメ感想あらすじ 第二期24話「呼応」(完)

先遣隊結成! 待ってろアシリパさん!

鶴見は、ここで少数精鋭の先遣隊を送ると言い出します。
選ばれたのは、月島はわかるとして、鯉登です。キエエエエ!

鶴見中尉殿、少数精鋭って言いましたよね。それなのにこのキエエエなのですか?

鯉登本人も疑問を感じております。父である鯉登閣下の頼みなのだそうで。父の意見ともなれば、不満でも従うしかない鯉登でした。
って、鯉登でいいのかよ!

土方組は、地下に潜っております。永倉との合流は遅れています。

すると犬童ヤンデレコレクションが判明。このコレクションを元に、土方は刺青人皮を奪うべく、南へと向かいます。
よかったね犬童、大好きなトシさんに貢献できたねッ!

杉元は、戦艦に乗り樺太を目指しました。
そこへ、鯉登平二が登場。
ここでの彼は、なかなか人徳のあることを言います。

息子が死ぬかもしれないと警告する杉元に、兵士の命を預かる指揮官となるからには、苦労をしてでもたくましくなって欲しいと語る鯉登平二。
その息子、鶴見の写真を見て涙ぐんでおります。
花沢幸次郎は、生前我が子の勇作が戦死して、親の面目を保ってくれたと。

うーん、このあたり、乃木希典を思い出すなあ……。
日露戦争は、尉官階級の戦死者がかなり多かったのです。

明治のラストサムライ・乃木希典 大帝に殉死す

まあ、花沢幸次郎は尾形のことを思うとゲスなんですけどね。
鯉登平二は人格者らしく、大勢の子を戦地に送るのに、我が子を守っていてはいけないと語るのです。

これはヨーロッパでもあった考え方です。
王族や貴族の子弟こそ、戦地に向かい、戦う義務がある。
エリザベス女王も、第二次世界大戦では整備兵として従軍しました。

※軍務から解放されてパーッとはしゃぐ王女時代のエリザベス女王を描いた映画

この傾向は、悲劇的な結果や社会制度の変革にもつながりました。
第一次世界大戦では、多くの貴族子弟が従軍、そして戦死を遂げてしまいます。その結果、断絶する家が相次ぎ、貴族制度のあり方が問われることとなります。

※『戦火の馬』での戦死する中にも、貴族子弟がおりました

現代でも、これは指摘されることです。
アメリカには、「チキンホーク」(腰抜けタカ派)という言葉がありまして。

「昔は貴族の子こそ従軍したのに、現代の政治家は我が子を真っ先に従軍させないようにする! 卑劣だ!」

そんな意味あいですね。
戦争を政治家が促すくせに、自分たちの家族は従軍させないなんて、腰抜けのくせにタカ派を気取りやがって、ということです。

※ベトナム帰還兵オリバー・ストーンが、「このチキンホークが!」と言わんばかりに作り上げた映画『ブッシュ』

鯉登平二は、そんな気持ちからアシリパの父であるウィルクに思いを馳せます。
我が子を先頭に立たせてこそ、アイヌの蜂起を促すことができるのだろう。そう思うわけです。

杉元は、アシリパのことを思います。
ウィルクに再会させる約束を破れなかったこと。

そのことを詫びながら、絶対に迎えに行くと叫ぶのです。

その願いは、アシリパにも届いたのでしょうか。
アシリパは、杉元の夢を見ていました。

白石は、正夢かもよと言います。あいつは死ぬわけがないと言い切るアシリパ。

俺は不死身の杉元だッ!

鯉登平二はよい父なのか?

はい、ここで完結してもよいのですが、もう少し。

どうにも育児に関してはダメな父が多い本作。
尾形とその弟をあんなことにした花沢幸次郎がそのゲス父筆頭です。

アシリパのアチャ(父)も杉元全力のツッコミ通り、その育児はどうかと思うものがあります。
鹿児島弁ネイティブの大川透さんが演じる鯉登平二海軍少将は、立派な方のように思えますが……どうでしょうね。
だって息子がアレですよ、アレ。キエエエエ!
いや、別に、いつもの【鯉登少尉への当たりがキツイタイム】じゃないから!

シーズン3があれば主人公一行に入るわけですし、背景の描かれ方がまだまだ不足気味ですし、ここで歴史考証しつつ補おうかなというわけでして。

まず、薩摩隼人アピールされている彼の性格ですが、あんまり典型的な薩摩隼人らしさはないわけです。
べ、別に列車内からブツを投げろとか、ビール瓶で頭を殴らなくちゃと言いたいわけじゃないです。

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明治時代ともなれば、薩摩隼人らしさを養ってきた「郷中教育」はなくなっております。

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薩摩閥明治の上流階級ともなれば、当時のお坊ちゃまとしての育ち方になるんですね。
明治時代を生きた、鯉登と同じ薩摩閥お坊ちゃまといえば、来年の大河ドラマに出る人物と、五輪がらみの人物がおります。

三島弥彦と、バロン西こと西竹一です。

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鯉登は、まさにこういうボンボンタイプですね。
つまり、鯉登平二は息子をそう育てたということです。

ここで、
「いやいや、鯉登父は頑張ったはず。それに育児は母親の役目でしょ!」
となるのは、それまた明治だからなのです。

江戸時代以前、育児を担当する役割は同性の人間でした。
つまり、男児は男性が育てるものでした。

「私が育てたのに、こんなバカボンになってすみません! 切腹します!!」
となってしまった、戦国時代の有名事例もあります。

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伊達政宗のように、やたらと「ママァー!!」と主張する例は、こだわりがありすぎる特殊ケースだと思いましょう。

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特殊といえば豊臣秀吉もそうです。
親がシングルマザーに近い。
淀による母乳子育てもこれまたかなり特殊な例です。

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鯉登平二の世代は、育児が父から母のものとなる、そういう過渡期であったと言えます。

幕末から明治にかけて、女子教育の必要性が叫ばれるようになります。
これは、西洋では母親が育児をするものだと、そういう思想が日本に導入されたためです。

明治の女子教育とは、「良妻賢母を育成することで、彼女らが育てる子がより賢くなるから」というものでした。女性たちの知識欲や好奇心を満たすという認識は、まだまだ先のものであったわけです。

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鯉登父子は、育児が父から母になった最初期の世代でしょう。

じゃあやっぱりお母さんが我が子を甘やかしたのか?
その結果がアレなのか?
そう言いたくもなるわけですが……。

ただ、これは鯉登母が我が子をデロデロに甘やかしてあの結果だよ、と言い切れるものでもないところはあります。
以前も指摘しました通り、彼の性格は軍隊もののボンボン将校典型例です。

※要するに、こういうタイプ

育ちはいいけれど、間抜け……彼が相当よい教育を受けたことは、シーズン3であかされることでしょう。
それがよい形かどうかは保証しませんけどね。

こういう残念なボンボンは、自滅して終わりかというと、そうでもありません。献身的に面倒を見て、救うことになる有能極まりない従者がくっついているものなのです。

月島軍曹は、残念ボンボンの横で輝く有能従者

先日、美智子皇后陛下が言及し、話題となった翻訳小説があります。
『比類なきジーヴス』シリーズです。

これはちょっと間抜けな伯爵家のお坊ちゃまウースターと、彼を支える従者・ジーヴスを描いたユーモア小説です。面白いですよ〜。

ジーヴスを「執事」とするのは、実は大きな間違いです。
彼は「執事」ではなく「従者」です。

これまた日本ではよくあるミスでして、ご主人様にくっついている献身的な使用人は「執事」ではなく「従者」!
ついでにツッコミますと、女性主人に従者はつきません。
「侍女」がつきます。

貴族女性侍女であったロジーナ・ハリソンの手記『おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想』は邦訳も出ております。
このあたり、『ダウントン・アビー』でかなり定着しましたね。

※これぞ英国貴族ぅ〜

『ダウントン・アビー』でのベイツと言えば、従者がどういう存在かぱっと浮かぶ人も多いでしょう。

ベイツはボーア戦争の時、主人であるクローリー伯爵の従卒であったのです。
軍隊生活を通して、彼らは信頼を育んだわけです。

※クローリー伯爵はいい人だけど、時折ちょっと抜けてますよね

鯉登と月島の関係は、実はこういう貴族主人とその従者的な、そういう典型例におさまるものでもあるのです。

そしてこういう従者の真骨頂は、どういう状況なのか、考えてみましょう。

それは、アホなボンボンが間抜けをやらかして、冷静な顔でフォローするその時なんです!
つまり、アホなボンボンとくっついていなければ、月島は輝かないッ!

有能な鶴見の右腕としてよりも、残念ボンボン鯉登の従者としての方が、月島本来の役回りではないかと思うわけです。
そこを計算して作られたキャラクターかもしれませんね。

そんなわけで、シーズン3はこの主従に注目しましょう。

鯉登は月島のためにも、アホな言動を続け、二言目には従者の名前を呼ぶ、そういう可哀相なボンボンなんです!

※ボンボンがアホだと、従者が光るのだ!

戦場でのこの手のコンビといえば『ゲーム・オブ・スローンズ』におけるジェイミー・ラニスターとブロンですね。
ブロンも、知性的なティリオンよりも、猪突猛進型ジェイミーの横にいる方が、活躍が増えている気がします。

※いいよね、ブロン!

この二人がどう活躍するのか、期待がかかるところ。
こんな定番ナイスコンビが加わって、そりゃ面白くならんわけがないでしょ!

最後に

最後に、本作出演者、スタッフの皆様、お疲れ様でした。
素晴らしい作品に仕上がりましたね!

本作は何かを持っている作品だと感じます。
ちょうどラスト間際、日本とロシアの間において領土問題が取り上げられるようになりました。

この問題は、土地の話だけじゃない。

そこには、かつて暮らしや文化を持っていた人がいるのです。
アイヌはじめとする先住民族の方々です。

日本とロシアは、彼らに誠実に向き合って来たと自信を持って言えるのでしょうか。

アイヌを描くのであれば、北海道を舞台にするのであれば、日本とロシアが踏みにじった一面を避けては通れません。
そして、その150周年を描くとすれば、そこへとつながる幕末の歴史も必須。
そういう歴史への、誠実なアプローチが光ったのが本作ゴールデンカムイです。

歴史を便利なコンテンツ、アクセント扱いをして、考証で手を抜く作品がある中で、本作はそこが違います。

明治維新から150年という節目において、本作ほど歴史に誠実に向き合った作品はそうそうありません。

2018年に『ゴールデンカムイ』を鑑賞できた視聴者は、私を含めて皆幸運であったと思います。
素晴らしい作品をありがとうございました!

第3シーズンも、期待しております!!

※うわぁあああああああ、金カム、見逃してしもたっ><;
って、方はPC・スマホでゴールデンカムイ見放題のFODがありますよ


文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
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