音問別の農家総大将・柴田泰樹を攻略せよ。
そんな任務を受け、説得に向かう剛男の見通しは暗い。
そしてこれは、なつの人生をも揺るがすことになるとは、本人も気づかないのであった――。
有働由美子アナが、そうOPの後で語っても違和感がない。
2年を超えて、日曜20時から平日8時に、いきなりあの大河が始まったんじゃないか?
そう錯覚させる展開でしたね。
『真田丸』
「父上、武田も滅びました。次にどの大名につくか。考えるべきではないでしょうか」
「うるさいわ」
『なつぞら』
「義父上、これからは農家も協力すべきです。そこにつくべきか、考えるべきではないでしょうか」
「うるさいわ」
だいたいこんな感じです。
「食卓」
柴田家の食卓で、剛男は山田家のレンタル牛について話を振ります。
時々、人物の口調に『真田丸』が混じりますが、そういうものだと思ってください。
剛男は、なつにこう問いかけます。
「いい牛だったよね? 天陽くんも喜んでいたよね?」
そこは素直に認めるなつ。
照男と富士子は呆れ気味です。本能で、危険を察知していたのかもしれません。
どっちでもいい。聞き流せ。巻き込むな。
そう制するのです。
剛男が、どこぞの朝ドラの父のように、怒鳴り散らせるのであれば違うのでしょうが、それはできないわけでして。
ここで、イジワル軍師・夕見子(演:直江兼続)が口を挟みます。
「天陽殿は、恋人ではござらぬか」
「ちゃうってば!」
そう否定するなつ。
夕見子としては、こんなところかもしれません。
「ククク、そこまで進展しておらぬことくらいお見通しよ。それでも、兄・照男となつ、一言で二人が動揺する。いや、違うな。父母も祖父もそうだろう。これは面白い!」
ありえるでしょ。
夕見子の性格的にありえるでしょ。
本当に面白がっている感じが伝わってきて、今朝も強い……!
彼女の策で、案の定食卓は混乱。
妹の明美も「わかんなーい!」と言い出します。
「牛耳」
富士子(演:小松姫)が、なつではなく、言いたいことがある人に直接言えと言い出します。
じいちゃんに、農協のレンタル牛について語りたいと見抜かれているんですね。
まぁ、バレバレだもんな。
しかし、その相手である泰樹(演:真田昌幸)がこれですよ。
「そんな話は聞いとらん。聞きたくない」
なつは、聞きたいから一緒にと言い出します。
あっ、なつがこうなってきましたね。
なつ(演:真田信繁)
ここでやっと泰樹が折れます。
「じゃあ喋れ」
BGMもちょっと戦国っぽいな。
農協では、牛を買う資金がない農家に、レンタルを始めました。
冷害に襲われるこの土地では、酪農と農業の二本立てこそ、安心できるから。
しかし、そこで泰樹はこう懸念を示すのです。
「農協が牛耳るつもりか」
ここで、富士子が「牛耳るっていうけど、どうして牛の耳なのか」と気にしています。
『春秋左氏伝』ですね。
古代中国で、盟約を結ぶ時に牛の耳を切り、その血を諸侯がすすっていたことが由来です。
富士子の面白さがクローズアップされるカタチですが、それだけではない効果があります。
この手の言い回しは、戦国武将も好きそうではありませんか。
剛男(演:真田信之)は、農家のためだと言い張る――それを泰樹はきっぱり否定します。
「牛飼いのことを何もわかっとらん!」
剛男は、ここで情に訴えるようなことを言い出します。
「富士子ちゃんと結婚して22年、父上の力にはなれなかったかもしれませぬが!」
即座に娘の明美が、
「出たよ富士子ちゃん」
と笑うあたりが、辛すぎる!
「電気」
あー、ダメだよ、剛男。相手は情が通じないってば。知略99なんだぞ。
「何か問題があるのでしょうか!」
「問題はない。農協がこじらせた」
これが知略99……情に訴えた相手をいなし、問いかけにイエスかノーかで答えず、相手の責任を追及する。
怖いよ……!
農協の上司からもプレッシャーを与えられる剛男は、次にこう訴えます。
「農協が電気を引いたんですよ!」
「わかった。電気はいらん。電信柱を引っこ抜け。明るいといろいろ見えすぎていかん」
唖然とする剛男。
これは想定外なり!
夕見子にしても
「その手があったか……」
と参考にしているのが面白すぎます。
なつは、牛舎を掃除しつつ、悩みます。そこで照男が言うのです。
「天陽は関係ないから気にすんな」
「天陽は関係ないってば!」
照男の恋心が見え見えでちょっと微笑ましいほど。彼は帽子を脱ぐと、かなりイメージが変わるものです。
本作の若年男性は、皆わりと似た髪型です。当時の流行なのでしょう。
※続きは次ページへ
土曜日にBSでまとめて視聴しています。そして、月曜日にこちらのレビューを拝見しているので、数日遅れのコメントになってしまうことをお詫びします。
「真田丸」・・・じゃなかった「なつぞら」面白いですよね! 前作を惰性と意地でなんとか完走した身としては、今作の期待を上回る内容にワクワクが止まりません。レビューを拝見するのも楽しくて楽しくて。
今回のレビューは、小見出しが二文字縛りで「真田丸」仕様なんですね。嬉しくて思わずコメントしてしまいました。これからも楽しく読ませていただきます。
ガブレンツ奮戦様
丁寧な補足をいただき、ありがとうございました。お考え、お気持ち受けとめました。
本日、18日の放送は夜のBSで視聴予定で、まだ見ておりませんが、
今後も、視聴者が腑に落ちるような展開になることを期待して、
ドラマも本レビューも楽しみたいと思います。
連続して失礼します。
『なつぞら』も本レビューも、農協そのものについては善とも悪とも言っていません。
ただ、コメントを見ていると、今回の描写から、農協自体を悪く受け止める理解・感想を持つ方もおられるのだなとは、思いました。
何故そのような理解・感想が生まれるのかなと思い、その背景を考えてみたものです。
わかりやすく言うと、
○規制改革会議や、規制改革推進会議の提言は、一つの考え方を示してはいるが、絶対的なものではない筈。
○しかし、特にTV報道に顕著なのは、規制改革会議・規制改革推進会議の言うことを絶対視し、異なる立場の意見を貶めるかのように受け取れる内容が多い(※個人的理解ですが)。
○農協関連について言えば、規制改革会議・規制改革推進会議の言い分も、利用者から見ればあまりにかけ離れた、利用者不在と受け取れるものも少なくなかった(※個人的理解ですが)。
○規制改革会議・規制改革推進会議の言い分ばかり無批判に丸呑みされると、特に報道等を通じてバイアスのかかった内容を丸呑みされると、肝腎の利用者が無視された、歪んだ理解になってしまう。そういう理解に基づいた「農協叩き」は意味がない。
ちなみに、作品に対する本レビューの分析・執筆方針については、私は前作の頃から賛同しています。
「『無批判に丸呑み』はいかんよ」という意見に、「内閣府規制改革ホットラインはすぐれたものなんだ」という反応を返すというのは、少し違うと思う。
「ここの電気も、農協が引いたんですよ。だから農協の事業にも協力してくださいよ」
→ これだけなら、○かな。
「ここの電気も、農協が引いたんですよ。だから農協の事業を利用しない人には電気は送りませんよ」(あるいは、「使用料を取りますよ」)
→ × 完全に独禁法違反
ガブレンツ奮戦様の書かれている主旨は私にはよく理解できませんが、
内閣府の規制改革ホットラインは、国民の声がよく届く、
すぐれものだと感じています。
本作も、本レビューも、
私にとって、
痒いところに手の届く、
実にすぐれた作品と思います。
規制改革会議・規制改革推進会議も、現政権が言わば自ら「お墨付き」のようなものを出すために設けたものですからね。
連中の言ってることも、「的外れ」と決めつけるには及ばなくとも、少し引いて受け止めなければ。
無批判に丸呑みして、一方的に「○○叩き」なんかやってると、ごく一面的な歪んだ見方しかできなくなると思う。
>若年男性は、皆わりと似た髪型です。当時の流行でしょう。
今の流行で当時はあんな頭流行ってないですよ。
髪型に関してはもう少し昭和30年感出して欲しいですね。
「何の話だ」
思わず牛達も注目!
つい吹き出してしまいました。
農協の預託乳牛事業や、共同出荷。
意義は作中で剛男が語った通り。当然、なるべく多く出荷量を確保して売り先に対し有利に販売をしたいところ。
しかし、同意の取り付け方があれではねえ…
下手くそ。どんな苦手な相手でも、組合長が胸襟を開いて話し合い、譲るべきは譲るつもりで望まねば。
規制改革会議あたりの言い分に乗せられて、単純に「農協悪玉論」で見てしまいがちですけれど、それではせっかくの描写がもったいない。
草の根レベルで生産者を農協がまとめ上げていくプロセスとして、善悪抜きで見てみれば、得るものも多いのでは。
自分の住む地域は東北電力管内です。
戦後間もないころだと地域(特に田舎)によっては電気を使うという生活は無く、
東北電力の営業マンが各家庭を回って、電気を引きませんかという営業をしていたと聞きました。
当然、電気製品を使っていない家庭では、そんなものは要らない、といって営業マンを追い返したという話です。
それでも、説得を続けて電気は便利なものですと何度も通って契約を取り付けるといった具合だったということです。
必要ないといわれる商品を売る営業マンも大変です。
いまは電気がなかったら死に値します。
柴田家でも今のところ電燈だけに電気を使っているようなので、今まではそれすらもいらなかったのでしょう。剛男の付き合いで契約しただけかもしれませんね。
いや~~!今日は驚きました。
朝ドラが『ガイアの夜明け』並に日本の牛乳問題に踏み込みましたね。
(牛乳問題については【JA/牛乳/自由】等のキーワードで検索してみてください)
JAがの当初の『農家のための農協』という志を忘れて『農協のための農協』に変貌してしまった昨今。
このドラマなら当然、農家・酪農家の視点で描かれることでしょうが、成り行きがどのようになるにせよ、とにかく踏み込んだということに敬意を表したいと思います。
まったく前作の‥‥‥ は言わないでおきましょう。
今日の「電気」の辺りは、前作の盗電への皮肉ととらえてしまう。