「あ〜れ!」
今朝はここから始まります。
待ってました、とよババア無双だー!
「あんたがここに来るってことは、よっぽどのことだべさ」
お前の悩みを言ってみろオーラを出すとよババアの、大物感がハンパない……。
北海道編ラスボスと化した泰樹と対抗できるのはこの人だけです。
泰樹ジジイ、とよババアに修行をつけてもらう
高校卒業後、東京修行へ行く雪次郎になつを同行させてくれと、泰樹は頼みました。
とよは、孫の雪次郎は送り出す。
我が子・雪之助もそうしたのだし、当たり前とドーンと構えています。
この対比もうまいなぁ。
男親がどっしりしていて、女親が悲しみながら送り出す――そういう典型的なパターンを、敢えて外している感があります。
むしろとよが、孫みたいななつを送り出していいのか? 寂しくないのか? と泰樹を気遣いますからね。
本作って、こういうことが多い。
普通にしていれば手垢の付きそうな話を、男女逆にしたことで斬新さを醸し出す、そんな人物像が豊富なのです。
泰樹は、照男とくっつけようとしたことも正直に白状しました。
結果、他人と思っている証拠だとなつに言われて、傷ついてしまったのだと。
とよは、ズバリと言い切ります。
「なっちゃんにとってはきょうだいと結婚しろって言われたようなものだもの。女に見られて恥ずかしいかったんだべさ」
泰樹が感心すると、
「乙女の気持ちは乙女よ」
と言い切る。
「どこが乙女だ」
泰樹はそう突っ込むわけですが……。
とよババア〜〜〜〜〜〜!
出たっ、北海道編、もう一人の能力値が極限レベルで高い人!!
統率99、知略89クラスですわ(※『信長の野望 大志』徳川家康クラス)。
泰樹の策に対して、富士子、剛男のように、それはないと指摘してきた人はいます。
なつ自身もそうです。泰樹だって考えてきたことでしょう。
それがとよの場合、この短いやり取りだけで、ズバリと本質を突いて来た。
しかも、乙女云々で茶化して、重たくし過ぎない。
そしてあの軍師である泰樹すら、乙女にしか突っ込めない。
そうだ、このババアに相談すればいいんじゃああ!
泰樹がそう信頼していたとして、何の不思議があるのでしょうか。
北海道編最強のカードが、かくして揃ったわけです。
これは壮観ですな!!
※このレベルの対決が朝ドラでも!
これからはホイップクリームの時代
話が一息ついたところで、雪之助がパフェを運んできました。
十勝初のパフェです。
ホイップクリームをのせた見慣れぬスイーツを見て、泰樹も興味津々です。
これからはこれがどんどん流行する。いや、流行しているのかも。
そう考えている雪之助です。
泰樹は未知の味を口にしながら、思うところがある様子。
かつては、バターという新境地に挑んできた。それこそが若い世代の夢だと託そうとして来ました。
流行最先端の「雪月」だって、バターを熱望しています。
しかし、それだけではありませんでした。
バターじゃない。クリームも出て来ている。「雪月」は立ち止まっていないのです。
東京ではとっくにクリーム時代かもしれない。そう雪之助は指摘しています。
北海道は遅れている。
時代の流れからそうなっているのかもしれない。
クリームを食べて、泰樹が思ったとしてもおかしくはないですよね。
これから雪次郎がクリーム菓子を東京で学ぶように、なつも何か未知のものを学びたいのかもしれない。
そういう意味で、このクリームは大事だと思うんですよ。
「なつを連れて行ってくれ。頼む」
かくして泰樹は、そう頼み込むのでした。
その頃なつは、弥市郎を描いたノートをめくって、絵の修正しているところ。
「あああ〜!」
嘆くなつの背後には夕見子がいるわけですが。
「なによ」
「私ってバカだな〜!」
「知ってる」
今朝も夕見子は、短時間で直江兼続っぷりを発揮し、ニヤリとするのでした。
こいつに情緒面でのサポートを期待すんなよ。
そして何度でも指摘したい。
夕見子は面白い、私も大好きです。
しかし、側にいたら、こいつむかつくんじゃああああ!! ってなる人も多いかもしれません。
まぁ、それでも私は好きですけどね!!
自然に生きることこそが幸せだから
そしてここから、本作の人外に突っ込みつつある天陽タイム。
天陽の下に、照男がやって来ました。
なつにちゃんと話したのかと気にしているのです。
「東京に行ってもいいのか?」
天陽はそう言われ、悟りきった顔を見せます。俺にどうすることもできない。
なっちゃんはいなくなる。この土地にずっといない。それが自然なこと――。
そう穏やかに言い切るわけです。
照男は諦めるのかと問い詰めますが、果たして天陽と話が通じているのかどうか。
「俺はここで生きると決めた。なっちゃんがそうしてくれたように、なっちゃんの決めたことを守ります」
天陽はもう恋愛感情を飛び越えちゃてる。
かつてなつは、幼い天陽がここで暮らしたいと言ったとき、泰樹に頼み込み、その願いを叶えました。
彼はなつに対して、その恩返しがしたかった――陽平を羨ましいと思わないのも、そのせい。
どこかではなく、この十勝に根を下ろして、その自然を絵筆に込めていく。
自然の前では、恋心なんてちっぽけなもの。
いや、恋心すら勘違いであったのかもしれない。
そんな存在になっちゃったのか……天陽。
昨日も挙げた『ゲーム・オブ・スローンズ』のブラン・スタークは、【三つ目の鴉】という神秘的な存在と一体化して、人間を超えた存在になりました。
天陽も、もう十勝の自然と一体化してしまっています。
学校に通う必要はない。誰かの助言もいらない。
彼に対して、倉田があまりにざっくりとした指示を出したことが、不可解に思われていました。
でも、天陽にはアリなんだと思います。自然と一体化しつつある芸術家だから。
とんでもない存在になっちゃったな。
まさかブラン・スターク級の人物が、朝ドラに出てくるとは。
これを脚本化する大森氏、演出するチーム、演じる吉沢亮さん。
本当に頭が下がる思いです。森の妖精を描いているようなもんだからね。
東京でしたいことがあるのかも
泰樹は帰宅し、富士子からドコに行っていたのか?と問われます。
「どこでもいい」
そう言い切る泰樹をニヒルと見るか、強がりと見るか。
これも相手次第というか、とよの前だと剥がれますからね。
カッコつけているけど、このジジイ、「雪月」でとよババアに吹っ飛ばされて、パフェで傷心を癒していたんですぜ……クスクス。
「父さんちょっと」
「なんだ」
富士子はここで、なつには東京でしたいことがあるのかもと言い出します。
ハッキリと聞いてはいないけれど、そんな気がするのだと。
「なんでそれを言わん」
「農業高校とは関係ないから。言い出せないのさ」
だからこそ、数年働いて恩返ししたかったのかも。
「そうゆうことでないかい」
と富士子は気遣います。
泰樹ほどの男だって、そこを気付かないわけではないと思います。
富士子のようにノートを見ているわけではない。そして「雪月」で思うところがあったのでしょう。
自分の過失だけではない、なつ自身の欲求。
そこに近づくことで、彼自身が救われる道へと向かっていきます。
※続きは次ページへ
思えばこの『なつぞら』、始まってまだ二ヶ月にならないんですよね。
にもかかわらず、視聴者に挑んだ真剣勝負の数々。これほど真剣に物語に向き合うことを要求する朝ドラがかつてあったでしょうか。
もちろん視聴する当方も、制作側に「手抜き」と感じる兆候が見られたら、容赦なく責めましたが。
まだ三分の一にも達していないんですよね。
まだまだ真剣勝負は続きます。
泰樹がなつに、東京行きを雪月に託したことを告げる。
そして、もし東京で人生を歩んでいくことになったとしても家族に変わりはないこと、いつでも帰って来れる場所であること、を説いて聞かせる。
このときの泰樹の、目の奥に悲しみをたたえた表情。
見ているこちらも胸に迫るものが。
だからこそ、ラストのなつの、「じいちゃんを裏切ってしまった」と泣き崩れるところにつながるのです。
とよはなつに、どんな言葉を授けるのでしょうか。