なつは納得します。
楽しさに限りはない。どんなことでも、それを自分で求めるんだ!そう信じています。
だって日本のアニメは、まだ始まったばかり――。
なつはここで、こういうところはじいちゃん譲りの図々しさだね、と照れてみせます。
こういう芸術性の広がり。相互刺激、いいですね。
全ては彼女の奥深さがそうさせている。
雑な投げ方をしてはいない。
なつは別に、力説していたわけでもない。自然体に振舞っていましたからね。
モモッチもそういう感受性の鋭さ、受け入れるおおらかさがあるのでしょう。
ここでまた夕見子を持ち出すと、彼女はそういうところはあんまりありませんよね。
なつの落書きは治らない病気と、そう言い切ってましたし、そのことを家族に言うわけでもなかった。
自分のことに集中するタイプなんでしょう。
ただ、別に咎めるわけでもない。
自分とは違うんだな。それで終わります。
夕見子は寛大ですよ。
なんか変なことして時間を無駄にしている、私みたいに勉強すればいいのに、とは押し付けませんでした。
勉強よりも、くだらないとも言いません。
自己完結型軍師は、実はそういう意味では無害なんですよ。ただ口が悪いだけで……。
上層部説得問題が発生していた
仲と井戸原は、なつの才能に可能性を感じ、上層部へ直談判へ向かいます。
露木になつのラフを見せるのですが、苦笑されてしまいました。
「演出にないものを描くのは、どうかと思うなぁ」
ここでキレない仲。
アニメーターは二人しかおらず、補ってもらわねばならない。人手不足なのです。
それになつは、そもそも動画志願者です。
それが誤解で落ちただけだと、仲が主張します。
出た……不穏要素をきっちり回収して来ます。
◆仲と陽平の説得成否不明
→大杉の誤解を解くと仲はなつに誓ったわけですが、面接に不在でした。つまり、説得成否がわかりません。
赤い星座が「赤いゆえにパージされかねない」問題。
咲太郎の愚連隊疑惑問題。
これはただ、大杉社長が忘れていただけで未解決でした。ギャアアアア!
それに、堀内と比べると技術的には未熟です。素人レベルである。
そこがひっかかるわけです。
しかし、仲は説得に入ります。
「上手い下手は練習で技術があがります! しかし、センスはそうじゃない。まだ19才、20才なんです。どこまで伸びるかわからない!」
おぉ、仲よ……あなたにも足りないものがある。それは弁舌、プレゼンの才能かな。
そこは緻密な軍師が補うといいんですけどね。夕見子とか、ひしもっちゃんとか。毒舌だけれども、強いからさ。ひしもっちゃんも、その弁舌で宇太郎を完封していたもんね。
仲の説得は成功するのか?
じっくり見守っていると、条件が出されました。
再試験です。
そこを引っ張ったまま、翌日、なつは彼からランチに誘われます。
アニメーター再試験を受ける気はあるのか。
そう問われ、なつは目をまん丸くしてうなずきます。
「やります! やらせてください!」
なつよ、まずは口を拭け――。
そう父のナレーションが突っ込みます。
なつの欠点もわかりましたね。
実は集中力が極端なのでしょう。マルチタスクに弱い。夢中になるといろいろ忘れちゃう。
おしゃべりしていて仕上げをおろそかして、モモッチに指摘される。そしてケチャップを口につけても、気づかない。
いいんだよ、そういう弱点を補っていこうね!
理詰めの残酷『なつぞら』ワールド
今日、『半分、青い。』のある場面を思い出しました。
鈴愛による、秋風の【原稿捨てるぞ脅迫問題】です。
「漫画家にとって命の原稿を脅迫に使うなんて、信じられない!」
そして、常軌を逸するようなしつこいバッシングがあったもんです。
本日、その理由がハッキリと見えました。
あっ、この先、あの作品アンチの方はページを閉じてくださいね。
原稿を粗末に扱うことに、漫画家、および同人活動をしている人が鈴愛や脚本家に対してブーイングを投げかけておりました。
そういった方たちの動機が今日、つかめました。
本作における堀内タイプですよね?
技術はある。けれども、センスで劣る。
そうではありませんか?
いかなる大事なものであろうと、技術ならば再度のアウトプットは可能です。
そこはアシスタントに任せてもよいもの。
ですから、秋風もネームを紛失されたときの方が怒る。
アイデアを借りたボクテも破門にした。
それは彼が、
【センスこそ上位である】
と判断する、マコや仲と同じタイプだから。
作劇上の効果を考えるのであれば、あそこで鈴愛が原稿を捨てる脅迫は、ありなんです。
そこをすっとばして、技術のアウトプットを貶されたようで、しつこくあの作品を叩きましたね。
つまり、あの場面のアンチは、無意識のうちにコンプレックスを刺激されてしまったのです。
作劇の大枠を叩けないから、技術を粗末にするところを叩きにいった。
そうじゃない! と言いたいかもしれませんが、本人でも無意識だからこそ厄介なのです。
『半分、青い。』は優しいんです。
せいぜい、無意識のうちに、そういう人のコンプレックスをつつく程度です。
一方で、本作は容赦なく残酷です。
無意識でなく、ブスリと刃を突き立ててきた。
大森氏、隙がない……。北川悦吏子先生よりも、はるかに手酷くぶっ飛ばしてきます。
オブラートにくるんではいますけれどね。
北川先生ほどあけっぴろげでもないし、SNSもないから、反撃のしようがない。
大森氏との戦い。
それはまるで、武田信玄との戦いだ。怖い。
でも、別に技術上位でセンス下位だからと、自分を卑下して劣等感を持つ必要なんてありません。
適材適所。それが違うだけ。
補ってくれる人とチームを組めば、貴重な存在です。
くだらない作家バッシングをして時間を無駄にするくらいなら、自分の長所を伸ばすに限る。
まぁ、私も****叩きはやっていますけど、あれは反面教師としては最高だから。
比較対象として注目すれば、分析精度があがるからなのです。
諫言は耳に痛い そして叱咤激励は難しいのである
はい、この辺で本日のマコに視点を戻しまして。
彼女の言いたいことは厳しいものがあります。
思い出したのは、鈴愛が漫画家を辞める決意を秋風に告げる場面です。
ネームを投げない――。
ダメ出しもしない――。
そのことで、鈴愛は悟りました。
あの秋風がそうしない。
それはもう、見捨てられたということだ――。
愛の反対は憎しみではなく、無関心とも言います。
きつい言葉を投げかけることは、真剣に考えている証拠。
マコもそうです。
堀内を貶す時も容赦がありませんが、褒める時はどこがよいのか、具体的にそうするのです。
本当に情熱的な褒め言葉ですよね。
秋風もそうでした。
不器用だけれども、自分の価値観を信じている。
だからこそ、言い切る。そういうタイプなのでしょう。
ともかく叱ればいいってものではありません。
こういうダメ出しに耐えきれない人もいるでしょう。個々人の相性もある。そこを無視すれば、それはただのパワハラ。
ついていけない相手もいるでしょうから、そこは慎重にならねばならない。
秋風の弟子もたったの3人ですし。
そこまで深く考えないと、ダメなんです。
「なんか怒鳴りつけるのって、妥協しなくてカッコいい〜」
と、薄っぺらな考えでそこだけを真似ると、クソクソ連呼、俺のいうことを聞け! と、ただの暴君になり、ハイ、**さぁんの誕生です。
褒め方っていうのも、難しくて。
「じゃあ褒めればいいよねっ!」
というのも、時にシンドイものですよね。
「具体性がない褒め言葉とは、ただのおべんちゃら。お世辞、おだてれば仕事をやるって思っていないか? 腹が立つ……」
「具体的にどこがよいのかわからんではないか。こうなると、次にどうすればよいのかわからん。もうよかろう、もっと具体的な指示を出す総大将を求めて出奔するか」
こういうめんどくさいタイプもいます。おそらく夕見子は、それ系かもしれません。
雪次郎がなつよりもめんこいといっても、クールに受け止める一方、具体性が乏しい相手には、怒るんです。
褒めておいて、気遣っておいて、なんであいつは怒るのよ! 理不尽だろ! となりますが、そういう軍師っているからさ……。
「それがしが優秀であることくらい、知っておる」
褒め方。貶し方。指示の出し方。
ともかくこれが正解ということはなくて、個々人の性格によって変えないといけません。
そんなのめんどくさいよ〜!
とは、なりますよね。
露木らも、現状できているとは言い難い。
ところが、本作には一人、オールマイティ叱咤激励可能、総大将の器持ちが出ていると思う人物がおります。
とよババアだよ!
あれは強い……そう思ってしまうのです。
なんでここまできて、とよババア無双なの? 強いからそれも仕方ない。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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捨てられてたラフ画を勝手に持ってきたことについて、仲さんらのことを一言も出さないなつの潔さや覚悟に感銘。
そんな姿勢が時に反感を買いながらも、結果的にももっちや、堀内、マコまでをも、三者三様に奮い立たせている(作業に入った堀内のちょっとはにかんだような笑顔や、マコが気合いを入れて髪を結ぶ姿は良かった)のに、(当時の?)この業界自体の、クリエーター集団としての健全な向上心みたいなものを感じて嬉しくなります。
なつが手を加えた動画を、堀内が書き直したものと早合点するマコ。
褒められたのに、「こんな稚拙な絵は描かない!」と、変なところでプライドを傷つけられて言い返す堀内。
マコの「どうしてこの絵を描いた?」のニュアンスが伝わらず、答えが迷走しかけるなつ。
これらズレ具合が、何とも絶妙。ツボにハマってしまう。
面白いですねえ。
それに、
今回の出来事は、せいぜいマコの記憶に強く刻まれるくらいで、なつにはまた修行の日々が続いていく…のだろうという程度の感じで見ていたら、何とまさかの「再試験」。
予想もつかない展開。
次回がまた期待されます。楽しみですね。
そういう感じ方も、一つの感じ方としてもちろんありでしょうが、
しかしあの鈴愛のシーンは、そこにばかり狭い視野で焦点を当てることに意味はない。
鈴愛と秋風先生の間で繰り広げられた駆引きの中の出来事に過ぎない。
それに、様々な漫画家の人達のエピソードには、原稿にとんでもない扱い方をした逸話も幾つかある。
ある一つのエピソードだけをもって、あの鈴愛のシーンを一方的に非難するのは、正当な評価とは言い難い。
漫画家の藤田和日郎先生のお名前は武者さまもご存じかと思います。
あの方の原稿は、何度も何度もホワイトで修正した上から書き直すという事を繰り返すため、完成した際にはずっしりと重くなっていると、以前Eテレの番組で語っていらっしゃいました。頭の中にあるイメージを、ケント紙の上に忠実に再現するための試行錯誤の結果と言えるでしょう。
理想とそれを具現化するための行為なり行動なりは、表現者にとっては車の両輪といって良いものでしょう。
そういう意味で、やはり楡野鈴愛のあの原稿を盾にとった脅迫は、表現者としてはよろしい事ではなかったと思うのです。
まず自分の頭で考えるべき。答が見つからないならそれまでのこと。
幸はピンク基調のセーターに緑のパンタロンで亜矢美は緑のカーディガンにピンク基調のスカートでした。
上下が逆になっただけで色使いは同じなのにどう意味が違うのでしょうか。
亜矢美のキャラクター上、意味のある色使いだから、何ら問題なし。****のは意味なくヘンな色使いだったからダメなだけ。
****の幸の補色ファッションに苦言を呈されていた武者様は
亜矢美の緑×ピンクやなつのターコイズのネックレス×ピンクのカーディガン等の
補色ファッションをどう思われているのか気になります。
いやあ、昨日から面白過ぎて、この作品で初めて録画を繰り返し観ています。芸術家肌で、感じたことをズバズバ言ってしまうマコ、周囲との軋轢は気にしません。このトンガリ方、好きですねー。貫地谷しほりさんの繊細な演技が素晴らしいです。
昨日のラストからは、今日マコがなつに直接問い詰める展開を予想したのですが、実際の脚本は巧みでした。そうしないと、なつの絵を生き生きと褒めるシーンは生まれません。
良い作品だと武者さまの解説もますます冴え渡りますね。いちいち頷き読ませていただいてます。鈴愛のあの名シーン、総集編から外されてました。忖度したのか、あれはガッカリしました。