なつぞら60話 感想あらすじ視聴率(6/8)嫁入り道具にそれちょうだい

さぁ、おバカな芝居が始まるよ〜!

さて、十勝の阿川家では。

天陽が牛乳を届けにきました。
弥市郎は天陽のことを褒めています。初出品での受賞だと感心しているのです。

素人の絵が珍しかったんだと苦笑する天陽。
謙遜のようにも思えますが、本気かもしれません。

彼はあまりに天衣無縫で、判断基準すらよくわかっていないかもしれない。

そんな天陽ですから、牛乳だって善意で届けているのでしょう。
深い動機はさしてないはず。

「柴田牧場の菊介です。バターを持ってきました!」

すると、そこへ菊介がやってきます。
遠吠えが響く中、高まる緊迫感。照男が作るおいしいバターをアピールする菊介は、天陽を見て警戒します。

「なしてここにいんだ? 砂良さんが好きなのかー!」

そして、思いっ切り照男の恋心をバラす菊介。
どういうことなんだよ!

まぁ、バレバレだったけどさ。いや、そうだと理解できるのは視聴者だけ。この誤解が、話をややこしくしそうです。

そんな菊介が天陽に挑みます。

「わかってんのか?」

「わかりません」

うん、こんなもん、わからんわー!

牛乳は白いが、腹は真っ黒。
なっちゃんに振られたから砂良なのか。そう言い出す菊介。
むしろそれは照男……いや、何でもありません。

こいつと比べたら、真っ白な心、十勝晴れのような砂良さんを思っているんだ!
それが伝わっているかと迫る菊介。

「いえ。わかってるかって言われても」

「そんなバカな男、相手にするものか」

引いている砂良。
呆れる弥市郎。

天陽がいて暴走したのかもしれませんが、こんなの配達人選ミスにもほどがあるでしょ!

と、ここで扉の向こうで、何者かの気配がします。
ヒグマか?
と思ったら、照男でした。

おいしい人生の照男、猟銃の砂良

「すみませんっ!」

「どういうつもりだ、お前ら」

ここで、照男による全力のプロポーズです。

「砂良ちゃん、好きです、結婚してください! お願いします、お願いします! 牛飼いの家に嫁に来てください。酪農家の家に来てください。ずっとおいしいものが食べられることを約束します。おいしい人生を約束します!」

猟銃を手にした弥市郎は、砂良に言います。

「どうする? 撃つか?」

「撃たなくていい。撃つ時は、自分で撃つから。嫁入り道具にそれをちょうだい」

なんというハードボイルド!
それがプロポーズへの答えなのか!

「本当にここまでバカとは思わなかったわ」

そう笑って、砂良はプロポーズを受け入れるのでした。

天陽はバカな芝居につきあわされたと、なつに手紙でその結婚報告をします。

おめでとう、お幸せに!

その手紙を受け取るなつは、正月でも十勝に帰省しておりません。
新宿の花園神社で、天陽のことも祈ったと報告してくるのでした。

なつは仕上げに打ち込んでいると報告します。

職場のシーンで、「色パカ」があると富子が指摘します。
パンダの腕の色が一枚だけ違う。動画の塗り忘れです。

当分、北海道には帰りません。
帰れません。
送り出して良かったと、そう思ってもらえるまでは。

おいしい牛乳を搾れるように、自分で肯定できるように。

十勝に帰りたい!

みんなに会いたい!

それでも振り返らずに、私はここで生きていく――。
そんななつの手紙と重なるのは、天陽が打ち込むなつの絵なのでした。

恋する心も、悲しい気持ちも、描くことでしか表現できない。
それが天陽です。

なつよ、力をつけよ――。
父も天からそう励ます中、来週へ。

ポリコレを考慮せねば滅びるのみ

朝ドラの雑な時間稼ぎ代表といえば、脇役の恋愛です。

昨日指摘した『あさが来た』は、五代様退場を脇役恋愛で補いたい気満々で、後半は辛いものがありました。

使用人同士の恋愛で、冷静に考えると年齢差がアウトとしか言いようがないカップルもおりましたね。

あの『レオン』ですら、あれが出世作である女優からダメ出しされる時代ですから。
あれはどういうことだったんでしょうか……最初から恋愛を描くと決めた上でのキャスティングとは思えません。

◆名作映画『レオン』から25年、ナタリー・ポートマンが「リメイクを望まない」理由

BSプレミアムで『大草原の小さな家』が再放送されています。
今見ても心揺さぶられる名作です。

ただし、大きな欠点があります。

◆『大草原の小さな家』NHK公式サイト

ネイティブアメリカン描写があまりに酷い。
見ていて辛いものを感じました。名作だろうと、ダメなものはダメ。

『北京の55日』感想レビュー 古きハリウッド大作は“肌の問題”で色褪せてしまいがち

2019年新作でありながら、この問題を踏んづけた****がダメであることは、今更いうまでもないことでしょう。

◆なぜNHK「まんぷく」は、安藤百福の“台湾ルーツ”を隠したのか

作られたことそのものが過ちでした。

本作は、そこを理解していると痛感させられます。
そこが、あのプロポーズでした。

脇役の恋愛をコンパクトにおもしろく、かつ問題がないようにまとめあげる。これぞ超絶技巧です。

バカな芝居と言ってはおりますが、いやいやどうして。
これがバカな芝居なら、****の雑なプロポーズは何だったって話です。

・照男「おいしい生活を保証します」

→「あなたを幸せにします!」というプロポーズの定番は、2019年ですと古いもの。女性の人生を男性が支配するニュアンスがあります。
その点、照男は家業を条件として提示しつつ、生活を幸せにするニュアンスもにじませています。絶妙な落としどころです。

・弥市郎「どうする? 撃つか?」

→このプロポーズで、実は弥市郎にはアプローチがなされていません。
照男は娘をくれとは言わない。弥市郎は砂良の意思を確認しています。いきなり照男に「俺の娘はやれない!」とは言っていません。

・砂良「撃たなくていい。撃つ時は、自分で撃つから。嫁入り道具にそれをちょうだい」

→とどめを刺すのであれば、私がやる。
ハードボイルドにもほどがあるセリフではありますが、面白いだけではありません。
結婚、離婚、そうした婚姻関係の決めるのはあくまでこの私。そう言い切っているのです。

結婚とは、当人の意思によるものである。
娘とは、父親が好きにしてよいものではない。

そういうことを、あの短いセリフにきっちりと詰め込んで来ました。

「結婚するなら会社勤めの人としなさい〜」
「誰のおかげで大学で勉強できているんだ!」
そんな最低の親ばかりが出てきた、前作****とは決別しています。

「ポリコレを取り入れるとつまらなくなるんだ〜!」
「堅苦しくなるんだ〜!」
というのは、ただの逃げ。
こんなふうに、取り入れつつ面白くできる。そういう作品はいくらでもあるのです。

※『キャプテン・マーベル』とかね

相手がタップだけで手に入る。
そんなもん、ただの暇つぶし以上の価値なんてありません。

天陽の悲しさ

そしてこの照男と砂良のプロポーズ。
実は、天陽の悲しみを増幅させていて辛いものがあります。

牛乳を鍋に入れる砂良を見た瞬間、恋に落ちた照男。
せっせと牛乳を通して恋心を見せてきた照男。

なつぞら40話 感想あらすじ視聴率(5/16)大賢者とよババア

恋をすればひたむきで、まっすぐです。
門倉番長と似ているけれども、こちらは成功例ですね。

なつぞら42話 感想あらすじ視聴率(5/18)それぞれのキャンバス

その一方で、天陽は違うのです。
告白すら実はしていない。

なつ本人以外、両親も柴田家も知っているのに、すれ違ってしまう。

天陽の恋心を、誰もわかっているようで、実はわかっていないのです。
理解できるのは、本人だけ。

なつぞら59話 感想あらすじ視聴率(6/7)空気を読む奴、読めない奴

彼は見合い結婚かもしれません。
あるいは、相手のアプローチに押されて結婚してしまうのかもしれない。

それって、萩尾律&より子ルートになりかねないのだけれども……。

半分、青い。128話 感想あらすじ視聴率(8/28)より子に憐憫の情もある

心の底からわかり合える相手は、彼女だけだ。
それでも、彼女には拒まれてしまう。

律と違って、天陽はあの夏虫駅すらなく、一人で絵筆を握るだけなのです。

半分、青い。73話 感想あらすじ視聴率(6/25)結婚という違和感

感覚を通した恋心の伝え方。
これも『半分、青い。』と共通点があります。

律を呼ぶ笛の音。傘に当たる雨音。その聴覚を通して、鈴愛と律は結ばれていました。
天陽は、視覚を通してそうしたいのでしょう。

けれども、鈴愛と律と違う。
なつと天陽には、あの晴れやかなラストはないのでしょう……いや、ありえるかもしれませんけれども。
その可能性が高いとは思えない。

悲しすぎる。
照男と砂良の直後に、あの天陽を見せてくるなんて、残酷にもほどがある。

なんでこんな酷いことをするんだよぉ!

ひねりにひねって、朝ドラ視聴者を崖の底にけり落とす。
そんな非情なテクニックも、そこにはあると思えるのです。

おまけ:パクチー&タピオカ山盛りメニューはいりません

コメント欄を見たい気持ちと、見たくない気持ち。
誤字脱字のご指摘と、感想はありがたいのですが。

申し訳ありません。

いつもは答えられませんが、今回気が向いたのでお答えします。

【補色】につきまして。
私が絶対許さないと、いつから思っておりました?

◆『****』の補色衣装

・急いだやっつけ仕事(※脚本が押せ押せだったのでしょう)

・悪趣味、センスがない

・恋のことしか考えていない、そんなキャラクター設定にあっていない

・時代考証? 知らない概念ですね……

◆『なつぞら』の補色衣装:

・時間をかけているとわかる丁寧な仕事

・奇抜だがセンスのよさはわかる

・かぶき者、ファッション上級者の亜矢美だからこそできる組み合わせ

・そういうキャラクター設定に合わないなつが着回すことで、誤解が生じるプロットにも合っている

・時代考証はもちろん考えている

ちょっとカラーチャートのお勉強でもしましょうか。

カラーのセンスがなくても大丈夫、効果的な色の組み合わせ方をやさしく解説

補色は奇抜な組み合わせです。
だからといって、禁止されているわけでもない。

上級者があえて使うのであれば、これほど効果的なものもありません。
使い方次第では、劇的なものです。

ただし、あくまで上級者向け。いわばきついスパイスですね。

「これは蘭州牛肉麺だから、入れないとね」
と、パクチーを加えるのが、本作だとすれば。

「流行しているからともかく入れるんですぅ〜〜〜!」
と、山盛りパクチーでサラダを作って大喜び。
しかもタピオカまで、ばらまいてニッコニコ。

それが前作****のやっつけ仕事です。

私は、パクチーもタピオカも好きですよ。
ただ、パクチー山盛りメニューだの、ビールにタピオカを入れたものだの、そういうものを見た瞬間は、脳みそが沸騰しそうになりました。

流行っているからって、何でもかんでもやればいいってものじゃないでしょ!

パクチー&タピオカサラダを有料で食えと言われたら、その場を立ち去ります。

加減、ニュアンス、組み合わせ、効果。
すべてバランスの上に成り立っております。

※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

【参考】なつぞら公式HP

 

12 Comments

ガブレンツ奮戦

来週の予告編に、アベルト・デスラー…じゃなくて山寺宏一さんが声優役で登場していたような。

これは見ものですな。

匿名

はて? 「衣装が当時のものでない」という投稿なんかありましたっけ?
補色云々の的外れな投稿はあったと思いますが…

わんわんわん

土曜日の放送前に北海道ローカルで放送されてる「なつぞらノート」という番組で、天陽のモデルと思われる画家・神田日勝を取り上げていました。日勝もドラマの天陽同様、兄に影響されて絵を描き始め、兄は東京の大学に行ったのと対照的に十勝に残って農民画家として絵を描き続けますが、32歳の若さで亡くなります。

ドラマでは、なつと思われる女性の描かれた未完の絵の上から赤の絵の具を塗った天陽。日勝の絶筆となった馬の絵は上半身だけが描かれた未完の作品でした。何か天陽の悲劇的な運命が暗示されているようで怖いです。

「なつぞらノート」については、NHK札幌放送局のサイトで内容を見ることが出来ますので、興味のある方はどうぞ。

話変わりますが、一部の週刊誌で東京編以降の不振がつぶやかれているようです。
北海道編の出来に比べ、東京編がイマイチということなのでしょうか? 件の記事では、北海道を描いたことで評価がよい方に補正されてた部分があったが、東京編はそれがない分苦戦しているというような事が書かれていました。

ここのコメント欄でも、町並みや電車、花束に続いて今週は衣装とか、当時になかったようなモノがドラマに出ているとの指摘がなされてます。これらはいずれも北海道編でいえば牛舎に搾乳のパイプラインがあるとか、牛に個体識別番号を記した耳標がついているというレベルのミスでしょう。(耳標は外すことはできないので画像処理?でうまく消してましたな。)

景色とか内地と異なる生活とか北海道補正がかからない分、東京編は北海道以上に気をつかうべきだったのではと思ってしまいます。

或点不意寄るど!

日曜午後など、次の更新まで空き時間が長い時間帯は、「揚げ足トリ男くん」の出現帯域か。

匿名

誤字脱字を訂正されないのはなぜですか。
Illustrator処理でもされているならともかく、文字を直して再度のアウトプットは難しくはないのでは。

こけにわ

天陽君の悲しさ。
胸が締め付けられます。あの手紙の後で、なつの絵は描けない、辛すぎるよね。
でも!彼の絵は認められたんです。
よき理解者と出会うきっかけとなってほしいです。彼は自覚してませんけど、
ちゃんと世に出たんですから。
その点では、なつはまだまだ頑張らないと。

第279ザルツ空挺大隊

ポリコレに関しては、第一週の頃のコメントで、「ポリコレのせいで最近の作品は歪められている」等といったとんでもない主張をし、「レビューでポリコレ云々を書くな」とも繰り返していた(表面的な言葉遣いは穏やかではあったものの)投稿者がいて、実に嫌な気分にさせられたこともありました。

やっぱりあんな考え方はない、あり得ない。
そう確認できました。

904bis型

訂正・補足します。

×落語家師匠が、 → ○落語家師匠が語った、

904型

本作に、「不自然な主人公補正」はない。
良いことです。主人公補正は、使い方が肝心。むやみに多用されると、話が空々しくなりますので。

合格はできなかったけれども、時間内に30枚もの画を描き上げたなつ。

脳内にイメージが湧いてくる。溢れるように。湧いてくるままに、それを絵にした。
OP画像にある、「アニメーターが描いている画の中のキャラクターが、紙から飛び出して駆け出していく」というシーンは、まさにそれを象徴的に表したシーンのように思えます。

少し前の回で、「風車」に来ていた落語家師匠が、「命が籠められていたら、絵は勝手に動き出す」という趣旨の言葉も思い出されます。

まるいと

天陽君が目に涙を浮かべながらなつの絵に朱入れするシーンはショックだし本当につらかったです。「帰れません。帰りません」という、なつの、天陽君の気持ちには無配慮な頑張る宣言に心臓をつかれたようでした。なつならわかっててもやったかもしれませんが、まだこの段階では無意識にやってるだろうことで攻めどころをなくし、天陽君にとっては残酷さが際立つ気がします。

録画で見直して、あの直前のプロポーズに成功したみんなと鍋を食べてるシーンの彼の内面のつらさも倍増しました。

今回はなつの不合格の告知シーンもあり、これだけのことをたった15分に(不自然でなく)詰め込めるもんなんだなぁと本当にその手腕に感嘆します。

そのせいか(?)、アップの時間も少し遅めだった今回の感想もいちいち得心しながら読ませていただきました(ポリコレの話は個人的に最近ピンとくることもあって響きました)が、一点だけ、照男君はなつに恋心はなかったんじゃないかな(だからサラさんにふられて乗り換えたわけではない気が)と思いました。まぁ、些細なことですが。

いつも楽しみに読んでます。ありがとうございます。

匿名

勉強岳→勉強が

スマホは入力は便利なようです難しいですね。

匿名

なつちゃんの服装を見ていて、この子は絵の勉強岳で頭がいっぱいで、服装のことは考えない。だから、何も考えなくても服を選んでくれる人がいるのは、とてもありがたいのだろうと思う。制服がなければ、「今日は何を着ていこう」と考えるのは、けっこう大変なので。それが、彼女らしいと思います。

「あさが来た」の話が出ていますが、私も後半恋バナばかりで、他にもっと色々あるのにもったいないなと思っていました。ヴォーリズも出して欲しかったのに、得体のしれない外人が出てきただけ。へいさんと美和がひっついたのも安易。モデルは中川小十郎なのに。成瀬仁蔵についても、ものすごくひどいキャラに変えられた。それでも、あのドラマは総じて楽しかったし、長年見たことがない朝ドラを見るきっかけとなった。その役割としては成功でしょう。

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