げえっ、坂場!
坂場は、原稿用紙に向かってゴシゴシと消しゴムを動かしております。
脚本も自分のアイデアを取り込みつつ、こうして書くわけです。
そして、その夜。
酔客が楽しそうに呑んだくれている風車に坂場がやって来て、なつを呼び出します。
おでん屋の雰囲気が、坂場に、に、似合わない……。
亜矢美と客は盛り上がりながら、部屋にいるなつを呼びます。
「なっちゃーん、彼氏来てるよぉ〜。いい男だよ。早く、早くぅ〜!」
そう言われても、動じない。
それが坂場です。誤解を解く気すらない。
なつが降りてくると、相談があって来たと告げるところはまだしも、その場で自身の企画書を見せようとする有様です。
狭い店内ですからね。場所を考えようってば!
と、突っ込みたいところですが、できないのでしょう。
彼の頭の中は、企画書をどうするか、その一点で思考回路が回っていて、周囲のことなんて理解できなくなっている。
なつはとりあえず、自室に入れます。
ここでの坂場の目線がおもしろくて、派手なワードローブに気が散りそうなそぶりもあるのです。目の前で何か動いたら追いかけてしまう――って、猫じゃないんだからさ。
なつも考えていたと、ここで切り出します。
なつも相当な変人ですよね。
いい男認定の坂場が自室にあがっている。それでも一切ドキドキはも何もなく、アイデアのことで頭がパンパンなのです。
慌ててお茶でも淹れようとするあたりは、少し社会性があるということかな。しかし……。
「結構です、すぐおいとまします」
坂場はここでそう返します。
茶を飲んでいる場合じゃねえ!
彼の目線が、千遥の絵と写真に留まりました。
彼なりに、家具や室内からヒントを探していたのでしょう。
うーん、こいつの脳内は、アニメのことしかないとみた。
彼氏がいるかどうか、服のセンスはどうか。そういうことはどうでもいい。
なつはそんな坂場に、妹も絵を描くと告げます。
この絵こそがパンである、と、ある人(=夕見子)が言ったのだと。
パンを道標にする。
それで『ヘンゼルとグレーテル』をやろうと思った。話が通じます。
坂場の相談とは、そのあらすじです。
あの物語では、魔女が兄・ヘンゼルを食べるために菓子で太らせようとしていました。妹・グレーテルはその手伝いをしながら、隙を見て魔女を釜に突き飛ばし、焼き殺してしまうのです。
「それでいいんでしょうか?」
坂場はそう疑念を示します。
実はなつも引っかかっていました。子供に魔女を焼き殺す残酷な場面を見せるのは、いかがなものかと。
※この映画では、兄は糖尿病になるわ、兄妹揃って魔女狩りに目覚めるという内容で……
これも、考えると奥深いのです。
空襲経験者であるなつは確実に、焼死体を見た経験があります。
※アニメ「福井空襲」
魔女を殺さずに逃げるとしたら?
そして魔女が追いかけてくるとすれば?
それは【社会の理不尽】だと、坂場は言い出します。
ラストに引っかかった点は同じでも、両者の理由は違うのかもしれません。
なつ:それでは子供にとって残酷だから
→なつにとってのアニメは【子供の夢】
坂場:それでは単純だから。【社会の理不尽】を描く方が、世界の真相に迫る深い作品になるのでは?
→坂場にとってのアニメとは、【大きな嘘から、本当のことを描く】
坂場はここで、こう言い出すのです。
「きみの話を聞いて、確信しました。これはきみが作るべき作品です。そのために、僕は必ず、この企画を通します! 失礼します!」
そう言うやいなや、さっさと立ち去ろうとする坂場。
「あっ、ちょっと待ってください!」
なつはあわてます。
これも坂場だからさ。
・美辞麗句やお世辞は無駄だから、そういうことは言わない。なつの話に心の底から感動しているのです。
・感心したからこそ、最善の道だからこそ、尽くす。そこには感謝しろという押し付けはありません。ただただ、本音です。
・それならばここで油を売っている暇はない! 即座に去ります。
誰もが長所があればこそ
坂場をさんざん「表裏比興」と書いてきました。
これは本来、
「本音と建て前の違いがありすぎて、信頼できないおかしい奴」
という意味です。
本レビューでは使い方がちょっと違います。
別に彼は嘘つきでもありません。けれども、信じていいかどうかもわからない。
そこがややこしいんじゃあああああ!
坂場にせよ、『真田丸』の真田昌幸にせよ。
そうではなくてむしろ常に本音しかない。
建て前? 知らん。
そういう思考プロセスに思えるのです。
「いや、裏表などござらん。ただ、最善だと思うことが常に変わるだけなんじゃ」
「言うことが毎回変わるって意味がわからねえよ、信じられないんだよ!」
「裏切るのではない。表返るのよ」
「…………!!」
この坂場に、一週間で疲労困憊しているのがマコ。
二人の間に何があったのか?
想像してみますと……。
Typeマコ「脚本なしで進めるなんてありえない!」
マコは、決着をつけて、【計画を立ててから進みたいタイプ】です。
旅行前に、計画書を作ってくれる。
宿の予約からレンタカーの手配まで、お任せあれ。頼りになるんです。
その一方で、予定外のことが起こると慌ててしまいます。
こういうタイプにサプライズをすると、激怒して絶縁になりかねません、注意しましょう。
長所:計画通りに進められる、整理整頓が得意、マニュアル化した業務が得意
短所:アクシデントに弱い、決めつけて柔軟性を失う、時代の変化に応じてアップデートできなくなる
人間関係でのトラブル要因:きつい態度、決めつけをするところ
まるで豊臣秀吉を支えた石田三成ですね。
※戦国時代なら兵糧管理を任せたい!
Type坂場「最善のアイデアを常に取り入れるから、脚本はいりません」
坂場は、【そのときどきの情報をできるだけ取り入れるタイプ】。判断基準を変えていきたいと思っています。
今日よいと思ったことでも、明日そうであるかはわかりません。
衝動的に旅行に出て、食べたかったレストランではなくて、別の店で食事をしても平然としているのでしょう。
ルールは守れません。
空気? 読めません。
さりとて、問題はありません。
長所:柔軟性がある、時代や価値観の変化に応じた創作が得意、アイデアを閃く
短所:整理整頓ができない、遅刻する、行方をくらます、しょうもないミスや事故を起こす、締め切りという概念すら理解できない
人間関係でのトラブル要因:あまりに空気を読まない、情緒ケアをしない
チームには、両方いたほうがよいでしょう。
坂場タイプだけだと、締め切りに遅れ、なかなか完成しません。
ドライブからいきなり帰省した夕見子も、この坂場タイプかな? 計画変えても平気、平気!
本作のよいところ。
金曜日までにひとまず課題を片付けて、土曜日に次週へのフックを出すところ。
夕見子が出てきたことが先週のそのフックでした。
思考回路で似ている彼女と、坂場の意見が合致することは不思議でもないわけです。
そして、みんな個性が違って、それぞれ長所短所があるとわかることです。
マコは、計画的で有能ですし。
坂場や夕見子タイプのアイデアも、役に立ちます。
なつの豊かな想像力も大事です。
けれども、それではギスギスしてしまう。
咲太郎、亜矢美、モモッチ、下山のような優しいムードメーカーだって、いなければチームが崩壊します。
そういう個性があって、それぞれ役に立っている。
そうわかるからこそ、会話シーンが抜群に面白いのです。
*ちゃんが宗教的法悦で何かを思いつき、**さぁんが怒鳴り、その鶴の一声に皆頷く。
そんな前作****の会議描写は、面白みも何もないのです。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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ゆきんこさん、
女将さんは戦災孤児として私を届出て、自分の戸籍にいれた、との千遥ちゃんの回想がありました。
戦災孤児を問題視しているのではなく、不潔な犯罪予備軍のように偏見の目で見られていた浮浪児としての過去の方だと私は解釈しています。
それでも、女将さんが千遥を「奥原家の遺児」として正直に届出てないのは明白で、千遥も恩義でその不誠実を黙認しています。
探偵等を使って置屋を特定させて、奥原兄妹との階段をセッティングする。私も、このくらいの事を夕見子には提案してほしかったと少し引っ掛かりがあります。
あとあの女将さんが悪い人でないのなら、柴田家の住所を通じて咲太郎&なつに連絡をすると思います。その辺りが描かれるとよいですが。
モモッチは、チキンライスを食べている。
なつは何を食べている?
ドライカレーかな?
本当は怖いグリム童話を日本は結末を甘くしている、その他日本の昔話も、最近はラストが甘くなったいると何度も言聞きましたが、それが、焼死体を山ほど見た人たちの思いがあるとしたら、辛い話です。
ほんとうに、こんな場合もあったかもしれませんね。
花柳界も極道も世間様からややハズレた世界なのは一緒
元親分から千遥情報が得られる気がしますが。
昨日の回の夕美子は面白くしてくれそうと思ってましたが、面白いものの、意外な話に展開してしまいましたね。
まだまだ世間知らずなところもあるかもしれませんが、札幌という都会に出たのですから、
「置屋の娘はよくって、戦災孤児はだめって本当に上流なのか。
兄姉と会うなという結婚の条件があるのか」
「疑え、悪意でなく、安心させるための嘘もあるぞよ」
とか言い、
そこから本格的な千遥探しが、アニメと並行して行われると想像してました。