なつぞら120話 感想あらすじ視聴率(8/17)育児と仕事に優劣あらず

できるとも、できるともさ

山川は苦しそうです。
現実に望んだとしても、叶えられるのかどうか。

実は、次の作画監督にはなつを起用しようと考えていたのでした。
女性初です。
妊娠を聞いた時、がっかりしたのだと。

山川は、悪い人でもない。
断固たる差別主義者ではない。
出産育児こそが女の本能だと言っておりません。

会社と社会の慣習に引きずられているだけ。そういう普通の人なんです。

だからこう素直に本音をいえてしまう。
女は下、女が上に立つなんて嫌という人間であれば、堀内あたりを起用したかもしれません。

「やらせてください、ぜひ、やらせてください!」

「大丈夫、なっちゃん?」

「やります、やってみせます!」

「子供を産んでもできる?」

「はい、できます!」

ここで、山川も承諾します。

「よくわかった、そんな君の意思を尊重しよう! 社員として、頑張ってくれたまえ」

「よしっ、がんばれーーー!」

この場面について、批判があることは想像できますよ。

安請け合いだの。無責任だの。綺麗事だの。現実的じゃないだの。
当時にしては甘いだの。

いいじゃないですか、フィクションなんだから。ドラマは理想を反映させる場、問題を訴えかける場でもあって、カッチコチの歴史再現をするところではありません。

魔法があっても、いいんですよ。
アニメの話なんだから。

それに、なつがこの開拓者魂を貫けないのだとしたら、それは周囲の問題でもある。
社会の問題でもある。子供は社会が育てるんだ。

本作のモデル詮索はなかなか興味深いのですが、そこまで意味があるとは思っていません。

「薔薇戦争」と『ゲーム・オブ・スローンズ』程度の関係性だと思いますよ。

だからこそ、ドラゴンを飛ばしてもいい。

予測もできない未来が待っている

なつは、赤い受話器を握りしめて、イッキュウさんに報告します。

わかってもらえた。
意思を尊重してもらえた。

私が頑張ったんじゃない。みんなが、みんなが背中を押してくれた。
なつはそう言い切ります。

「それでね……それは帰って、ゆっくり話す」

なつはそう言い切ります。なつは、やっとここで腹部にふれるのでした。

作中で、妊娠を安堵して腹を撫でる場面は初めて。笑って母になれるのは、周囲の支えあってのことなのです。

なつよ、予測もできない未来が、君を待っている。
恐れずに、来週に続けよ――。

父がそう言う中、来週に続きます。
その予測もできない未来が、もう予告で見えました。

マコさーーーーーん!
やったー、マコさんが戻ってきたーッ!

硬直化は必敗を招く

どうしたって思い出したのは、このニュースです。

◆朝ドラ「エール」が週5回に短縮、4K制作と働き方改革のため – SANSPO.COM 

◆(ニュースQ3)朝ドラ「週5」、働き方改革の夜明け:朝日新聞デジタル

これに懸念材料なんて言われているようですが。

いやいや、因果関係が逆ではありませんか。
元は5日だったのを、6日にした。それを戻すだけでしょう?

コンビニの24時間経営と同じ流れじゃないですか。

◆セブン経営陣、24時間営業を死守する「撤退できぬ病」の重症度 | 情報戦の裏側 | ダイヤモンド・オンライン

んで、頭コチコチになった結果が、これなんじゃないですかね。

ニュースを並べれば、組織硬直化くらいは想像できます。

◆7pay終了へ 記者会見の一問一答まとめ – ITmedia NEWS

朝ドラにしたって、作品によっては露骨に時間稼ぎをしているものもあります。
6日を余らせている。半年の使い方が無茶苦茶な作品もあるわけでして。

脇役の恋愛だの、エロマンボダンスだの、パンチラだの……そういう姑息な時間稼ぎをしていた作品があったじゃないですか。

NHK東京から改革スタートというのは、良い兆候かつ当然だと思いますよ。

NHK大阪はね……。プロットのぐだぐだした乱れ方を、主演女優の育児のせいにしていたニュースがあって、心の底からげんなりさせられたものです。
ママさん出産シーンアピールとセットで考えると、ますますめまいがした。

労働時間短縮にせよ、出産育児にせよ。
そういう労働者の権利と福利厚生を、仕事ができない言い訳に使わないでください。

予想と煽りタイム

はい、ここでちょっと予想タイムだ。

お前は次に……
「私は、私の妻は順従して辞めた! わがまま、甘い、苦労知らず」
と言う。

会社でも言ってきたんっスよね〜ッ!

でも、綺麗事を放置した結果が、今なんじゃないですか?

◆やっぱり若者は東京へ。日本の人口政策が大失敗している論理矛盾

それに、いくら綺麗事と言っても、台湾の発明品を日本人のものだと言い張るよりは、現実的じゃないですか。
収監中に【自宅】で発明って、できないんですよ。****教団員の皆さん。

◆8月15日、終戦記念日に考えてほしい「台湾統治」のこと(田中美帆) – Y!ニュース 

女ごときの話を大きくするなって?
女を切り捨てた結果が、男にも及ぶんです。

日本人以外、女、契約、派遣……ってね。
全員に及ぶ。ペストの死の舞踏と同じだ。

どうせうまくいくわけない、綺麗事。そう言う人がいることはわかる。
きっと大仰な反響もあるんでしょうよ。ブーブーいう声、その内容も想像はつきます。

でも、世界は今も変わっている。
そこから目をそらすことはできません。

◆BBCニュース – NZ首相、国連総会に赤ちゃん同行 おむつ交換に日本代表団びっくり

さて、このへんで煽りはやめておきましょう。本題だ。

隠された姿

なつは普通の人でしょうか?
そうじゃないか?

いいえ、普通の人だし、歴史的な普遍性も持っています。

話が大きくなるので控えめにしておきますが、南北戦争にも多数の女性が参戦していた。
けれども、関連の映像作品に彼女らの姿は見えますか?

どうなったのか、日本の歴史からも学べます。

◆戦時中、少女たちが憧れた「女性だけの陸軍部隊」。元隊員が見た「戦争」とは 

この観点でいえば、映画『ドリーム』は邦題がダメ案件でして。
原題の”Hidden Figures”とは、隠された存在ってことです。彼女らはどの歴史にもおりました。

アニメの世界でもそう。
本作が2019年放映ということは、興味深いことでもある。

女性のアニメファンは当然のことながらおりますが、彼女らがどれだけ踏んづけられるかという話でもある。

イケメンが出てくれば、腐に媚びただの。
あの漫画がつまらなくなったのは、女のせいだの。作者も編集者も男性でも、女のせいだそうですよ。
表現にクレームをつければ、表現の自由ウォリアーズ襲撃にあうだの。

そこをふまえまして!
本作の作り手は、一体どれだけの深慮遠謀があるのか。おそろしくなってきてしまう。

アニメという女性ファンが謎の排除をされやすい、歴史からクリエイターすら消去される。
そういうテーマを朝ドラで取り上げる。

今日のデモや組合にしたって、レッドパージ、カラスをデモにする、十勝農業王国……繰り返し、繰り返し要素として散りばめてきた。
これを正面切って持ち出したら、突破できたとは思わないけれども。

「かわいい広瀬すずちゃんを主演にして、みんな大好き、クールジャパンコンテンツであるアニメをテーマに、ゆるふわドラマにするんです」
と言われたら、まぁ、通りますわな。
反論する理由もないですし。

やっぱり朝ドラって、面白いなあ!
ドラマの皮をかぶった企業宣伝もできるし、こういうこともできる!

NHK東京のチャレンジがおもしろくて、当分目が離せそうにありません。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

5 Comments

けいいち

なつは見事に、また一つの道を開拓しましたね。

なつほどの特殊技能や情熱の持ち主はなかなか稀有ですから、それが認められて社員待遇を約束されたように見えました。
そうじゃない平均的な社員たちにおいても、出産・産休を理由に不利にさせられることがない会社になるといいですね。
そのあたりは、神っちが心強く感じます。

と思ったところで、我が身を振り返ります。自分も会社に働きかけられることはまだあるなぁ。。。

朝ドラビギナー

毎日内容の濃いレビューありがとうございます。武者さんは「なつぞら」が好きで好きでたまらないのですね。その様子が文章から滲み出ているようで私までほっこりしてしまいます。
この勢いを保ったまま最終回まで突き進めば歴史的傑作になりそうですね!
武者さんが大河レビューで少し触れられていましたが「いだてん」の迷走によって過去作にまで泥を塗ってしまったクドカン氏とは逆で「なつぞら」関係者は役者からスタッフまで代表作を手にしましたね。今後の活躍が楽しみです。また武者さまの筆も乗りまくり冴えまくりなので「武者さま=なつぞら」の代名詞にもなりましたね。

或点不意寄るど!

ほう、前作の表現が「当然」ねえ…

しかし前作には、「反映させようとした理想」も「訴えかけようとした問題」もない。

まめしば

謎の排除…の下りで思い出したのが「怒れる男性ゲーマー」でした。
多分、あれと同じく『男性を弱体化し(彼らにとっての)自然なジェンダ―役割を引っくり返される』と恐れているんでしょうね。
女子部隊にしても『俺たちより劣っていたはずの女に頼らざるを得なかった。その事を認めると、間接的に俺達が女より劣っていると証明してしまう。』から認められなかった。
ある意味彼らも「男は女より優れていなくてはいけない!!」と刷り込まれた、社会の犠牲者ですよね。

乾燥芋

>いいじゃないですか、フィクションなんだから。
>ドラマは理想を反映させる場、問題を訴えかける場でもあって、カッチコチの歴史再現をするところではありません。

まさに仰る通りだと思います!
前作で台湾ルーツを再現しなかったのもフィクションだから当然ですよね。

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