運動は妊娠期間・個々人によります
数ヶ月後――。
なつはすっかりお腹が大きくなっています。
荒井の席に作画を持っていくと、彼は動かんでいいと気遣います。
なつは、むしろじっとしている方がよくないって。
このへんもよく考えています。
◆妊娠初期・中期以降、やっていい運動vsダメな運動はどんなもの?
お腹を蹴ってくる。
蹴られると急かされているみたいとなつは言います。
荒井も、こう来ました。
「ハハッ、ええ子やな」
あの派手でなんか怖い荒井が、ニッコニコ!
妊婦が職場にいることのメリットを感じた気がします。私も荒井みたいなことを、職場でだって言いたいよ。
妊婦なり赤ん坊を遠ざけると、社会はギスギスするし、思いやりもあたたかみもなくなると思うんだな。
これは女性だけの問題ではなくて、社会そのものの問題でしょう。
なつが休憩をしていると、下山がやって来ます。
彼は長編映画が終わって、ほっとしているところ。なつは、映画は終わりが見えていいと言います。
「なっちゃんも、終わり見えてきた?」
下山はそう妊娠のことを言います。
「終わりじゃなくて、始まりです」
なつはきっぱりそう否定します。
結婚や出産がハッピーエンドというストーリーはありますが、確かにスタートですよね。なつは、茜と明子が元気かどうか尋ねるのでした。
ここで、下山はこう切り出します。
「なっちゃんは知ってる? あの人が戻って来ていることを」
あの人……あの黒い人か。
あの黒いアニメーターが波乱を巻き起こす
そう、マコさんですよ!
帰宅したなつは、イッキュウさんに報告しています。
「えっ、マコさんが? 日本に?」
「アニメに!」
ドドドドドド……この気配は。
チャイムが鳴って、ガラリと戸が開きます。
【ジャーン、ジャーン、ジャーン!】
「お久しぶり」
げーっ、マコさん!
話してたところにやって来る。流石はアニメ界の小野政次だ。
「ほんとうにマコさん? 教えてくださいよー」
なつの反応がいいなぁ。
確かにマコは唐突だ。
電話もしない、ハガキもない、人づてに連絡するわけでもない。順番がちょっとおかしい。夕見子と近いところがあるもんね。
マコは本物だと言い切り、なつは変わっていない、変わらないと安堵しています。
マコって、愛想笑いをニコニコするわけでもないし、むすっとしていることの方が多い気がするし、声もいつもハスキーなんですよね。
本作の女性は、無理してキャピキャピとして話し方をしない傾向がきっちりとありますけど、その中でも低いほうかな?
「きゃーやだぁーおひさしぶりぃ〜」
「うふふ〜もぉ〜〜!」
そういう再会じゃないんですね。
お土産だって、イタリアのコスメあたりではなく、今住んでいる吉祥寺のものだそうです。
なつ邸が西荻窪だったのでお隣の駅。
だから、夜に唐突にやってきても不思議じゃない立地です。
イタリアに行った建築家夫はどんな方なんですかね。
高山のあれこれを思い出すと、容赦ない姿で登場しそうな予感がしますが。
なつは、イッキュウさんとちょうど話していたと言います。
ここでイッキュウも立っているのですが、さりげなくお盆を手にしています。この丸くて植物模様を大きく描いているお盆も、この時代らしいもの。
昭和って、家電製品や食器にボタニカル柄を使うことがブームだったんですよ。
このあと、イッキュウさんの食事をマコが味わう流れに。
作るお煮しめが実は美味しい、そんなマコさん。
頬張って、納得しております。
「おいしい!」
あの不器用なイッキュウさんなのに、この味とは! そう驚いています。
イッキュウさんはそういう人なんだ。
不器用だけれど、時間と手間をかけると美味しくできる。指は切るけど。
適当や少量が理解できなくて悩む。指を切る。そうなれば、もうこいつは食事作らなくていいや……そうなってしまうかも。
でも、そこを乗り越えると、彼らは美味しいものを作れるんですよ。
熱伝導率まで計算し始めて、銅製天ぷら鍋を買っていても不思議はないタイプ。だからジックリと見守らないと。事故は怖いけどね。
自分が作るからスゴイのだと威張らず、のほほんとしているところも魅力があります。
なつぞら115話 感想あらすじ視聴率(8/12)あなたの心ですマコは味わいながら、漫画映画と同じだと言い切ります。
「漫画映画では切るのが指ではなくて、自分の首だったけど……」
マコさん? どういうセンスなのっ! 夕見子あたりが聞いたら大喜びしそうではありますが。
「ははっ、あはははは!」
イッキュウさんはこうだし。ある意味納得するけどさぁ。
「なつかしい!」
なつはこうだし。やっぱりなつは、夕見子と泰樹で慣れたのかな?
あの【抹殺パンチ】の奴らに鍛えられたもんね。
「そんなことでなつかしがらないでよ」
マコはそう言いつつも、なんだか彼女もなつかしそうで、安堵していることが感じられます。
ここでマコは、『神をつかんだ少年クリフ』に感動したとしみじみと言います。
ひねくれているようで、相手の才能や芸術性は素直に認めるのがマコさん。
「またやりたいと思った……」
「えっ、うれしい!」
なつとイッキュウさんもここで大喜び。
そして彼女は単刀直入に切り出します。
「それでイッキュウさんを誘いに来た! またアニメを作る気ない?」
来たぞ、なんだかすごいことが来た!
カラスをデモのようにしろと言われ、イライラしていたあのマコさんが、満を持してイッキュウさんを誘いに来たぞ。
なつよ、この再会が波乱を呼ぶことになりそうだ――。
父がそう告げる中、次回へ!
本作は何かが引っかかる……
本作は、『半分、青い。』と何らかの相互関係がある。
マコの結婚がどうなったのか、わかりません。
律とより子離婚の時間経過をシャッフルして、その経緯をじっくりやれという批判もあったあの作品ですが。
その反応をふまえて、またやりそうな予感がして来ました。
マコは夫の話を一切しないし、イタリアの土産すら持っていない。一切イタリアのことを口にしない。性格もあるとはいえ、避けているようにすら思える。
何かひっかかりますよね。
そこまで観察していないけど、結婚指輪をしていたっけ?
日本ではそこまでではなくともヨーロッパ暮らしならば指輪をしていないほうが不自然では。
どうだっけ?
まぁ、明日を待つか。
もし離婚しているのであれば、どういう経過かは想像がついて来ました。
鈴愛と祥太郎の男女逆転パターンです。
監督してのキャリアのために、離婚をつきつけた祥太郎。
絶望した鈴愛は、
「死んでくれ……」
と漏らしたばかりに、袋叩きにあいました。いや、あの状況ならあれは仕方ないんでないかい。
これを男女逆転したら?
キャリアを選んだマコに、夫がげんなりした顔で暴言を吐き捨てたら、どういう反応があるでしょうか。
その人が鈴愛を叩いて、マコ夫を叩かないとすれば?
その反応から、男女への偏見と差別が明らかになる。
そこまでやっても、本作ならばおかしくないのでは?
やっぱり本作は引っかかるんだよね……
ありとあらゆる不可能を排除して、残ったものこそ――それがどれほど信じがたい結果であっても、真実である。
冒頭にあげた労働組合の話ですが、自分なりに週末考え続けました。
・田辺組合長のこと
→彼は和人設定のように思える(設定上判断不可)。
ただ、演じるそれ宇梶剛士さんはアイヌ。彼に演じさせ、かつアイヌ伝説をモチーフとした演劇と絡める。
和人の利益のためにアイヌをつまみ食いする、あまりよい態度ではなく、そこに対する批判はあって当然と言えました。
ところが、田辺は再登場し、かつ彼の指揮のもとで十勝農業王国となる。
そういう後半部があると、そのニュアンスがまた変わってきた。
そういうことを本作はやる可能性がある。
終わるまで判断ができないことがあまりに多い!
というわけで、【時期尚早】かな……とは思うのです。判断保留で。
何が仕掛けられているかわからない場所には、思い切りよく踏み込みたくないのです。
そしてこれ。
・モデルとドラマ描写の一致度が低い
→モデルに何らかの要素を加える傾向がある
ここが重要な点では?
神っちのモデル。
あのレジェンドは、神っちとマコ、二分割されていませんか?
見たいですよ、マコさんの描くエボシ御前!!
今朝見て、そのあたりが見えてきました。
このアニメ会社の退職と、新会社設立の経緯。
そこでは、明確な主導権の比重移動がある。
男性が主役ではなく、女性主役へと転換していること。
『ゲーム・オブ・スローンズ』で、男のヴィセーリスが早期退場して、女のデナーリスが先頭に立ったことと同じ構図っちゃそうですね。
サーセイはじめ、他の人物もそういう構造。
『真田丸』スタッフはあのドラマを意識してわけですが、彼らはこの作品にも参加しております。
そう考えると、わかりやすいかもしれない。
あの産休騒動の先頭に立ったのは、なつ。
背後に軍師・イッキュウさんはいたものの、立ったのは彼女です。
そしてアニメ会社設立先導は、マコ。
神っちの結婚関連は、モデルとは違う。
茜と結婚していないし、これから妻を結婚引退させるかすら不明。
本来男性がいた場所に、女性を立たせる。
その結果、どうして労働組合運動が後退したのか?
王ではなく、女王による統治を描くためでは?
【史実】
※労働組合の王! アニメスタジオの王!
【ドラマ】
※労働組合の女王! アニメスタジオの女王!
労働組合の女王! アニメスタジオの女王!
それは【おにぎり女子マネ】の否定ってことでもある。
そう、あれは2015年大河。せわぁない。
当事者でも、労働運動賛同者でも、どうしたって目をそらしたい不都合な史実はあるはず。
それは、女性におにぎりを握らることはじめ、サポート役にしていたという事実。
今でも続いています。
あの手のプロテスト運動でも、参加者のためにお茶を入れて、おにぎりを握る役目は、女性に回ってくる。女性自身も、そこを疑念に思っていない気配すらある。
女性がそういう運動に関心を持って話を聞きに行っても、
「旦那さんはどうですか? 旦那さんの名前は?」
と言われるとか。
男女共におにぎりを作ろうと呼びかけても、男性はどこかへ消えるとか。
会合で、男性が酒を飲んでつまみを食べているところに、女性がせっせとビールを運んでお酌をするとか。
女性への性的暴行で失脚した社会派ジャーナリストを「あの程度のことで」とかばうとか。
男性当事者の妻の品評会をして「内助の功」と言い出すとか。
女性相手に「才色兼備!」を褒め言葉として使うとか。
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とやられたら、どちゃくそわけわからんのですよ……。
これは古今東西ある現象ではある。
平等を訴える集会に行く男が、女は飯でも作って家にいろと言うことは、古典的っちゃそうだ。
あの偉大なるモデルでありアニメのレジェンドだって、ジェンダー観点で満点を取れるかどうかはわからない。
偉大であることは、そうだけれども。
ましてや今のアニメはどうか……って話になる。
本作は、その手の欺瞞を許すつもりが一切ないようだ。
【#Metoo】をここまで厳密に撃ち抜く試み。なかなかないことですね。
応援しつつ、見守らせていただきます!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
近年まで人類は成人男性のみであり、女性は所有財産、所により共有財産であった。今でもそう思っている男は多い…という言葉を思い出しました。
これを聞いたとき腹が立つより、色々なモヤモヤが晴れて(社会で味わった理不尽の謎が解けて)スッキリし、それがまた腹立たしくてやりきてなくて仕方ありませんでした。
何せ最初に思った事が「女性を何だと思っとんだ!」ではなく「騙しやがって!!なら最初から『お前らはヒトじゃなくて財産だから!!』と素直に公言しとけ!!」でしたからね。
立派に世の中に毒されてました。