なつぞら149話 感想あらすじ視聴率(9/20)なぜ雅子は千遥に店を任せたか

千遥はすぐに仕事を探すと引き下がり、なつが援軍を出します。
私たち家族がいるって。だからこそ、千遥も決意できたんでしょうね。

だからどうか、千夏を奪わないで欲しい。そう訴えるのです。

「千夏は、ちゃんと育てます!」

ここで、咲太郎も援軍に出動します。

戦死した三きょうだいの父は料理人だった。
浅草の料亭で修行をしていて、そこで女中をしている母と出会い、結ばれたのだと。

奉公人だから、お互い家族とは縁が薄い。それでも小さな店を持ち、家族は幸せだった。

戦争さえ、なければ――。

戦争が幸せを破壊する。
そう言い切る本作には、誠意を感じます。

咲太郎の夢は、そんな小さな店の再建です。おっ、諦めていなかったんだ。

いや、諦めていたのかも。
千遥との再会で思い出したのかな? ともかく、そんな店を千遥に持たせることが夢になったのです。

ここで、雅子が動揺を見せます。

「ちょっと待って、その浅草の料亭の名前って……!」

なんと、亡夫・春雄も浅草の料亭で修行していたと言います。
名前まではわからないと咲太郎。

それでも、雅子は感慨深い顔になっているのです。

「そのころから、あなたとうちの人は、縁があったのかもしれない……」

雅子の態度が変わり始めました。

雅子にとっての青空

「あなたたちの気持ちは、よくわかりました。夫婦仲はこちらが悪いことも認めます」

雅子はそう言い切り、清二の気持ちを確認します。
ここは母に逆らえない、そんな清二です。

「千遥さん、思い違いをしていません? あの店は、あなたがいないとやっていけない」

この店の味は、あの人――つまりは春雄が見込んだ料理人である、そんな千遥でなければ出せないもの。

亡夫の味を伝えたい。この店を続けたい。
そんな雅子は、離婚してもこの店を続けて欲しいと千遥に言い切るのです。

清二にだって、父としての責任は残る。
愛もあるけど、これは味の問題でもあるのでしょう。千夏の養育費で悩んで、千遥の味が落ちたら? それは春雄の味が守れないということでもあるのです。

「どんな形にせよ、この店はあなたがここで受け継いで。千夏もここがいい」

「いいんですか?」

「引き受けてもらえる?」

雅子はそう千遥に頼み込むのです。

「さすが母さんだ!」

ここで、やっと清二がそう言うのです。って、おい! 母親に丸投げしていただろ!

こう納得する理由も、理解はできます。

・千遥に別れたいと俺から告げるの、嫌だよな〜

 

・千遥の生い立ちにつけ込むのも、なんか嫌だしな〜

 

・俺、料理のセンスねえし、そこは千遥に丸投げしたい

 

・まあ、養育費くらいはいいんじゃね?

こんなところですかね。この無責任野郎がぁ!

「お前が言うな!」

「そうですね」

そこは雅子が、突っ込みます。

うーん、雅子さんも苦労してきたんでしょう。
清二が駄目男そのものでして。胡座になって、母に叱られまた正座に戻る。これは悪い人ではないけれど、組織のトップには向いていない奴やで……。

「あー、これですっきりしたわね!」

雅子は気分晴れ晴れといったところです。

皆も、そうなのでした。

解決! ここで遅れてあの男が到着

一件落着のあと、千遥はこうお礼を言います。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、本当にありがとう」

「よかったね、千遥。千遥はほんとうに、親方に愛されていたんだよ」

なつがしみじみとそう言う横で、咲太郎の推理タイムです。

「その親方とうちの親は、きっと同じ料亭で修行していたんだ! 絶対にそうだよ!」

本作チームって、大森氏以下、推理小説やミステリが好きではありませんか?

信哉の捜索スキルといい、この咲太郎ノリノリ推理といい、そういうものを強く感じます。

私は大好きです。
でも、一長一短かもしれない。あまりに精密に詰め込みすぎて、ちょっとついていけない、なんかうっすらとした気持ち悪さがある――そう感じる人がいても、仕方がないとは思います。しかも朝ドラですし。

まぁ、なつも千遥も受け流していますが、これは答えは出ないと思うんですよね。

浅草の料亭で重なることは、ありえないわけでもないけれど。
当事者が死亡しているからには、答えは出せません。

出そうと思えばできるのでしょうが、そこまでする意味もあるのかどうか。
咲太郎、そんなことを信哉に頼まないでくれよ。

なつぞら148話 感想あらすじ視聴率(9/19)堂々と生きたい

さて、そのころ。
剛男が、全てが決着したあとでいそいそとやってきています。

富士子じゃないけど、あんたが何の役に立つのさ?
そう突っ込みたくなります。泰樹と違って、頼りないですし。

そんな剛男は、ある少女を見かけます。

「あれ、千夏ちゃん? やっぱり千夏ちゃんか!」

でも、これには意味がちゃんとあるようでして。

やっぱり柴田君、心配で来てくれたんだね――。

そう柴田剛男の戦友であった、奥原家の父が語りかけます。

奉公人だけど、家庭を築いた

咲太郎が語る、そんな奥原家のファミリーヒストリー。
これにも奥深いものがありました。

両親を病気で失った泰樹は、労働力として期待されました。
奥原家の両親も、それよりはマシでも、似たような境遇でしょう。

なつぞら140話 感想あらすじ視聴率(9/10)圧巻の北海道開拓史

最低限の義務教育も、受けられたかどうか。
ともかく早いうちから働いてこそ、社会の構成員になれる。そう周囲から期待されて生きてきたと。

朝ドラでは、ヒロイン周辺の家族はすんなりと勉強できてはいますよね。特に近年、その傾向を感じます。

2015年下半期『あさが来た』であさが説く女子教育にせよ。

ヒロインのお約束である、袴姿の女学生時代にせよ。

明治時代の「衣食住」に注目~江戸時代から何が変わって何が流行った?

どうして彼らは学校に行けるの?

お嬢様、お坊っちゃまだからではあります。

あさのモデルである広岡浅子なんて、当時、日本屈指のお嬢様ですからね。
彼女と自分を重ね合わせるのって、アラブの石油王と自分を重ねるくらい、無理があるっちゃそうなんですよ。

あさが来たモデル・広岡浅子69年の生涯をスッキリ解説!銀行・保険・女子大などを手がけた女実業家の素顔

富士子世代あたりでは、私は女学校卒業だと誇りにしている方もいたもの。
それだけ高等教育は、特権階級のものであったのです。

朝ドラは特権階級、上流階級出身者ばかりを描きすぎていませんか?
そのせいか、日本人の近現代史知識をねじまげてしまった部分があると思うのです。

時代ものがクランクインすると、女優の袴スタイルがここぞとばかりにニュースになる。
コスプレ感覚かな?
そういう袴イラスト、ファンアートを投稿してこそファンだ。そういうノリもあるのです。

そのことそのものに、文句はありませんけれども。
もっと、背景の教育史にも、触れてもよいかなぁと……。

朝ドラ初期は当事者や視聴者の知識があった。
だからこういう設定は、フィクションだと理解できた。自分の祖先とは違うと理解できた。

ところが2019年ともなると、そういうスタイルで続けると非常に危険。
そう察知した誰かがいるのではないかと思うのです。

愛を守り、筋を通す女将

今日の雅子を見て、どう思いましたか?

「態度が変わりすぎぃ!」

「あまりに御都合主義!」

そうなりませんか?
私も最初はそう思い、二度目でピンと来て、レビューを書いていて気づきました。

どうして変わったのか?
それは亡夫への愛でしょうね。

雅子の言動の端々からは、高い知略が伺えます。
ともかく千遥陣営を蹴散らしたくて、言葉尻を掴み、弱点を探っているのです。

嫌なテンプレ姑のような態度は、計算の上でしょうね。

それが咲太郎の言葉から、パズルのピースがはまった――そんな感覚がありました。

どうしてこの嫁に、あそこまで夫は目をかけていたのか?

夫の味と、嫁の味、どうしてここまで似ているのか?

夫と嫁の間には、何かが存在する。

その謎が解けた!

雅子が嫉妬まみれでゲスだったならば。
なんだかいけない不義密通疑惑へと暴走しそうですが、聡明な彼女はそうではなかったのでしょう。

それどころか、実は彼女もできの悪いバカ息子・清二よりも千遥の才能を感じてはいた。

それを認められるか?
どうするのか?
そう悶々と悩んでいた。

千遥を失うことで、夫の形見である店と味を失うなんて、どうしたって嫌ではある。

そういう悩みが、咲太郎の言葉で晴れていった。
解決策も浮かんだ!

亡夫と縁があり、見出し、鍛え上げた――そんな千遥こそ味と店を守ることができる。

それならば、条件に折り合いをつける。
それが私の【夫への愛】なんだ。

夫の味を引き継いだ千遥を守ること。
そのために、彼女の条件を飲むこと。

ねえあなた、私はあなたの店と味を守ったんですよ――。

そういう爽快感が、あの笑顔にありました。

信哉の「あの女将は筋を通す」という言葉も、彼女の態度にはあてはまります。

夫への愛を守ることが、彼女なりの筋の通し方。
そのためならば、いくらだって策謀を練り上げる。

そのためならば、妥協だってできる。
柔軟性だって発揮できる!

そんな爽快感があります。
演じ切った浅茅陽子さんは、流石でした。なほ子の原日出子さんも素晴らしかった!

えっ、清二ですか?
彼はある意味、部外者でしょう。

責任感のある男

はい、清二ですが。
なつがただの無責任だと喝破しましたが、そういう男だと思います。

問題児で、あいつはなまらやばいと話題になっていた咲太郎。
それでも彼には筋を通す意地と、責任感はあった。仁義はある男なのです。

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そして、剛男も。

そんな彼に対して、どれほど泰樹はじめ柴田家が塩対応であるか。
そこが笑いのポイントとなってきましたね。今朝だって富士子にも、役に立たないと呆れられていた。

でも、それだけじゃない!

剛男がノコノコとあの場に行った理由は、ナレーターである奥原家の父が語っていました。

心配で来てくれる。戦友の子を見守るために、わざわざ来てくれる。
そのことが、どれほど友の心を救ってきたことか。

頼りないし、すぐに戦死しそうだし、性格的に上官からバキバキとしごきを受けていそう。そんな剛男。

◆生死の境、3度経験 元整備兵の証言

マイペースであるがゆえに、ビンタされまくっていた。
そんな水木しげるさんと話が合いそうですね。

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彼には折れない芯がある。
戦友である奥原には、それがわかった。

だからこそ、見つかれば大変な制裁を受けかねない、手紙を互いに託したのでしょう。

我が子の運命だって、託すことができた。
そういう万感の思いが、ナレーションに込められていました。

その対比は、自分の家族と店のことなのに、ぶん投げてボケーっとしていた清二と比べると、わかるかと思います。

キャスティングもお上手で。

渡辺大さんは、責任感にあふれたビジネスマンが似合いそうではある。スーツ姿も決まっていて、ルックスもイケメンだ。

農協の制服といい、普段着といい、そのへんのおっさんぽい剛男。
藤木直人さんの柔らかさが出ております。

彼らを見て、どちらに責任感があるかとアンケートを取ったら?
渡辺さんが勝利しそうではある。

そういう見た目ではない、心の奥にある折れない心を、本作は見せてきたと思います。

味の継承

今日も、しれっと関ヶ原だったね!

そう言いたくなるのが、あの出汁について。

奥原家の両親、親方、そして千遥。
出汁の味がきっちりと継承されています。

ああいう料亭の味は、秘伝中の秘伝でして。浅草ならば、江戸時代からの秘密のレシピがあってもおかしくはありません。

クックパッドで作り方を学べば、同じになるってもんでもないからさ。

この一連の描写は、****の致命的なプロットホールを暴く役割をまたも果たしました。

あのドラマでは、**さぁんが苦労して開発した味を、多くの競合他社が短期間で模倣する――そんな描写がありましたね。

あれは無理なんです。
あのプロットですと、まず不可能。産業スパイ一人でできる芸当じゃありません。

これも史実との整合性が取れていないからそうなる。

あのラーメンは、もともと台湾にあったもの。
だからこそ、台湾出身華僑が改良し、作り上げ、製品化することが可能であったのです。

秘伝でも発明でもなく、台湾伝統食文化です。
だから一気に、売れるとなれば花が咲くように広まったのです。単純な仕掛けといえば、そうです。

もしも本当に秘伝であれば?
今日の出汁の味のように、そうそう再現はできないはずなのです。実際に、作中で咲太郎はできませんでしたから。

朝ドラで、一体何が起きているのやら……。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

4 Comments

匿名

> 千遥はすぐに仕事を探すと引き下がり、なつが援軍を出します。

千遥は引き下がってないですよね。食い下がってました。

匿名

千遥はすぐに仕事を探すと引き下がり
は、
千遥はすぐに仕事を探すと食い下がり
の間違いではないですか。

匿名

脚本の大森さんのインタビュー記事を読み心からのエールを送りたいと思ったが、それに対する書き込みがあまりにもディスる内容ばかりで目を疑った。悪意あるひと握りが扇動しているにしても酷い。

大阪のおばちゃん

朝ドラのヒロインは昔は「雲のじゅうたん」のように、女性の先駆者が多かった気がします。ヒロインとしては極めつけのお嬢さまである広岡浅子は、珍しい方だったのに、それが受けたので、貧しい米屋出身のはずのヒロインが、薬問屋の大店の娘にされてしまったのでしょうね。

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