丸熊陶業の朝――。
フカ先生はめっちゃ集中しているらしい。
喜美子は、そーっとやかん交換に行きます。
喜美子が怒られないか心配しになる照子。
「気ぃつけぇ、先生怒らせんよう気ぃをつけぇ」
そう言われつつ工房の中へ。
喜美子がやかんを持って入ってゆきます。
鳥の声がする朝の工房。フカ先生はじっと火鉢に向き合っています。
そろり……そろり……。
やかん交換は終わったものの、喜美子は集中しているフカ先生が気になって仕方がない。
くしゃみして、うなり声をあげつつ、火鉢に向き合うフカ先生。
赤と白の花が描かれてゆく。
好奇心を抑えきれず、思わずそーっと背後から近寄り、そして横から覗き込み、驚いてしまうのです。
喜美子はいったい何を見たのだ!?
親心子知らず
大野商店では、陽子がちゃちゃっと接客を終え、マツに住所や電話番号の一覧を見せています。
一瞬だけ接客シーンがありますが、お客さん役も含めて滋賀ことばが柔らかくてええですね。
本作は大阪、滋賀、京都それぞれの言葉指導がついております。
関西弁の細かい違いを反映させる、素晴らしいことだと思います。
さて、その一覧とは?
絵付け火鉢を扱う工房でした。
なんでも永山工房さんがよいとか。
ちょっと通いけれど、代替わりして、息子が社長になってから絵付けに力を入れており、職人さんも多いそうです。
そうなれば、絵付けを教えてくれる職人さんもいるかも!
女の子は厳しいかもしれんけど。そんな条件はありますが。
マツは喜びます。
「行って聞いてみる! ありがとう!」
陽子はここで、いっぺん電話してから行くように促します。
それでもマツが「いやいやいや……」と固辞するとこうだ。
「もうわかった、かけたげるわ」
しみじみ大野夫妻って、ぐうの音も出ないほどの聖人ですね。
ちょっと凸凹した川原夫妻をよく支えております。
そしてここで、卒業式帰りの信作が帰宅。背後には今日子という女子生徒がいます。
「おばさん来てたんや……」
ろくに挨拶もせず、マツが卒業祝いにおはぎを持って来たと聞き、やっとこうです。
「わざわざすんません。あとでいただきます」
そして当然のように今日子を連れて、家に上がっていく。
この間、陽子の顔がすごい。
「なにかいてたで……」
マツがそう声を掛けます。
「三日前に連れてきおった。ギター覚えてな。二人でよう弾いとるわ……」
「同級生?」
「つきあってるんちゃうん?」
信作、弾けていた模様。これには親もイラっときます。なんでも、話を聞いても詳しいことは一切言わないそうです。
陽子はここで、信楽町の永山陶業に電話。
そして愚痴るのです。
男の子はつまらん、話してくれないってさ。
伊賀の甘やましぃだったおばあちゃんが亡くなってから、しゃべるようになったとはいえ、それも外だけ。
「親には『あっ』、『うっ』、『やっ』しか言わへん」
陽子は電話を続けます。
信作の激痛青春ライフは、見たいようで見たくない。ですので、ここまでとしまして。
マツは陽子から聞いた結果を、川原家で話します。
永山陶業なら、週一で大勢いる職人が交代で教えてくれるそうです。
女の子でもまあええんちゃう、って!
週一で半年終えたら、簡単な作業だったらやさせてもらえる。絵付け火鉢は売れているから、それでいいそうです。
うっとりとしたマツに、直子はこうだ。
「半年通ったらお金になるん?」
「本人の頑張り次第……」
「喜美子姉ちゃんならできる!」
マツがいなし、百合子は母に同調する。直子は、百合子は黙れという。短い会話で親子の関係が見えてきます。
脚本家の水橋氏は、人の会話や体験談をじっくりと聞いてきたんでしょうね。会話に優しいぬくもりがあります。
直子はムキになる。
お父ちゃんは週一でもお金にならんことやらせない。そう言うわけです。
マツはそれを受けてこうだ。
「お母ちゃんがやる!」
「言えるわけない」
「ないけど、気持ちよく酔わせたところでうんといわせる! お母ちゃんにまかしとき!」
マツ、頑張る宣言!
マツは頼りない。
喜美子に依存しすぎてジョーに反抗しないから、「毒親」なんて意見もあるようですが。
うーん、それはこの年代が置かれた状況、マツの生育環境を無視したように思えるのです。
選挙権もない。物事の契約もできない。
女は無能で何もできないと法律が定めている。ずーっとそう頭を押さえつけられてきて、それに順応してしまった。
『あさが来た』のような環境じゃないんですよ。
喜美子に頼りすぎなのは、川原家だけの異常な状況でもありません。
当時は、とにかく女性は義務教育後に金を稼いでこいと言われてしまう。
マツが際立ってひどい親ではないんです。これは恐ろしいことに、ジョーもそうです。
マツは病弱だし、実家の支援もないし、できる範囲で頑張っている。
等身大のお母ちゃんだと思う。
そして見ている側にも、こういうマツのような母や祖母はいてもおかしくないのです。
そこをちょっと想像して、調べて欲しい。
現代の基準でダメな親だと言わないで、ちょっと想像してみていただきたい。
それこそが朝ドラの使命でもあるはずです。
あかん、お見合い話撃沈
そしてここでジョーが帰ってくるのです。
しかも、何か連れて来ました。
登場の瞬間から「あかん」としか言いようがない、今朝も安定感があるジョーのカッスパフォーマンスに期待が高まります。
「入ってください、入って! 喜美子ぉ挨拶しなさい! 米屋のお宝さんの三郎さん。この前言うたやろ」
聞いてへん!
あんなん話のうちに入らん!
そう突っ込みつつ、毎朝ジョーを殴りたくなる人も多いのでは。
ジョーはご機嫌です。
なかなか話がまとまらなかったらしい。それがようやく念願叶ったために上機嫌なようで、嫌そうな相手を強引に家まであげます。
「喜美子ぉ!」
「なんでうちが」
「結婚するのはお前やろ!」
「そんないきなり!」
「そうなるかもしれんから、黙って上がれって」
喜美子はもちろんのこと、マツも困惑しております。
こんなん、マツが止められるわけないやん。レトロコミカルなBGMが流れますが、笑ってええんかこれ?
直子は邪魔者扱いされて、座布団を出したと思ったら追い出されます。
「酒、酒! 酒持って来んかもう!」
連れてきた相手・三郎もさすがに困り顔。真面目そうなサラリーマンですし、どう考えてもこれは迷惑しております。
「僕はもう……喜美子さん! 僕ははよ結婚したい思ってます」
「いきなりやんもう!」
「ちょっと待ってください!」
「喜美子さん以外の人です。心に決めた人がいるんです。喜美子さんには申し訳ない。今日来たんは、ハッキリお断りさせていただくためです。喜美子さんのお気持ちにはお応えできません。許してください。堪忍してください。すんません、すんません、すんません、すんません!」
「あの! 三郎さん! あの!」
「すんません、失礼します!」
【速報】三郎、初登場数分後には退場。再出場、なし!(確定)
三郎を演じるのは「NONSTYLE」の石田明さん。
本作はやはり、極めて有能です。関西のお笑い芸人さんが一瞬出て、話題をさらう。
「ええなぁ……俺もそろそろ『スカーレット』出な(アカン)」
と思われる、そういう作品になっとる。
マツと百合子が、凍りついた目でジョーを見ています。
ジョーは適当にごまかそうとする。
しかし、喜美子には通じない。
「お父ちゃん……」
「なんやおかしいなもう、なんやおかしいやっちゃなもう!」
「うち結婚する気なんてないで!」
「まだええけどな」
一、二年のうち云々言うジョー。
それでも結婚しない。やりたいことあんねん。喜美子はそう切り出します。そんな姉を見守る直子。
いつ結婚するのか?
そういうものじゃない。喜美子はそう反論しますが、ジョーには通じない。
結婚できへんと脅されても、喜美子はこうです。
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