さあ、最後の壁はジョーだ!
愛と情熱のバッテリー【ミッコー&ハッチー】
vs
カスが火を噴く【ジョー】
「お座りください」
神妙な面持ちでジョーは言う。
おっ? 対談するつもりやな?
ここで喜美子が「いたっ!」と言った八郎を気遣います。もうこんなん、ジョー勝てんやろ。
するとジョー、いきなり頭を下げて、語り出そうとする相手にこう切り出した!
「本日はお忙しいところご苦労おかけしました。すんません、先日の件心から陳謝致しますとともに心からお詫び申し上げます。以上、終わりや」
ほんまカスすぎてクラクラ……。圧倒的なカスっぷりにめまいがする!
この長いセリフをめんどくさそうに一気に読む、こんなん北村一輝さん、台本読んだ瞬間、笑てまうやろ。
そして立ち上がって、風呂を沸かしてあるかとマツに聞き、もう一発、ダメ押しや。
「娘はやれへん」
風呂の話をする。沸かしていないと百合子が困っていると、自分で沸かすという。
しまいには【ミカンの皮を浮かべるか】なんて言い出す。おいっ、風呂の話はええから!
一回目、これにて終了――。
これでええんか?
いや、いかんでしょ。
諸葛亮「【七縦七擒】も通じないとは……」
えー、『三国志演義』でですね。
蜀の諸葛亮が、孟獲いう将を七度捕まえて、七度放すやりとりがあります。
最終的に孟獲は、
「これは勝てん!」
と降参するんですね。
三顧の礼では認めないジョーでも、七回負けたら孟獲になるやろ。
さ、見てみましょうか。
二回目:縁側で爪を切るジョーに話しかける二人。ジョーは無視して爪を切る。
→【失敗、全く口を聞いてもらえず】
三回目:あ〜虫や、虫! そううっとうしそうに追い払うジョー、話すら聞いてくれない。
→【失敗、茶の間にすらあげてもらえず】
四回目;雨の中、戸も開かず、家に入れてもらえない。
→【失敗、突破できず】
五回目:すっぽかされる。用意があると出ていったと、百合子が告げる。
→【失敗】
六回目:用ないけど、出て行ったと百合子が告げる。
→【失敗】
七回目:用がないくせに、また「あかまつ」に飲みに行ってもうた! 百合子ぷんぷん!
→【失敗】
劉備「なんでや!【三顧の礼】でええやろ!」
曹操「ワイでも関羽を引き止めたい時、五箇所しか関所作らんかったで」
諸葛亮「おぉ、もぅ……」
三国時代の英雄すら絶望させかねないジョー。
こんなん、キレた真田昌幸なら偽祝言して討ち果たす流れやぞ。
それにしても、三でもなく、五でもなく、七まで繰り返すこのチームがおかしい。
演じる側も、全員心の底で「ようやるわ……」と思いつつ笑いを堪えていそうで最高です。
もう笑いが止まらん!
いやいや、ミッコー&ハッチーがかわいそうだ。
多数決で決めようや!
日ィ改めさせてもらいます――そう告げる八郎に、百合子は辛そうな顔になっています。
「かわいそうやん。ええ加減、なんとかしてやらんと。怒らんとできた人や! うちは気に入ったで、直子姉ちゃんかて気にいる。お母ちゃんも。多数決で決めようや!」
おっ、百合子、この年代あるあるかもしれん。
敗戦へ向かう戦時中に生まれた百合子。
乳幼児死亡率の高さゆえに同級生の数が少ない、そんな世代。
彼らは授業でバッチリ、
「上からのいうことに従わず、おかしなことには反対して、みんなで話し合って決めましょう。それがあなたたちの新しい日本です!」
と習ったわけですね。
喜美子が余裕のある笑顔を見せていると、百合子は訴えるのです。
「笑てる場合ちゃう! 結婚せえへん言うたらどうすんの!」
「あかまつ」に行って、多数決で決めたと言うてきたらええんよ。百合子はそう迫ります。
これも世代や価値観のギャップです。
ジョーは、ともかく男尊女卑が当然で育ってきたから、百合子のように女が団結して反抗することは未知の世界でしょう。
マツも決意を固めます。
「お母ちゃんも、間をとりもたなあかん思てた! ここから先はお母ちゃんに任せなさい!」
……って、これはギャグかな? 無理やとまわりから止められることを前提としたギャグかな? そう思うほど、頼りないわけです。
喜美子は余裕を見せます。
「これは自分で決めたこと。自分で決めた結婚や。百回でも、二百回でも来る言うてくれた。うちが選んだ人や。心配いらんで!」
強い! きみちゃんは強いなぁ。
力も強いし、柔道もできるけれども、精神力がともかく強い!
武将みたいなたくましさを感じる。
マツと百合子も納得しています。
「わかった。もう何も言わんと静かに見守ったげよな」
「うん!」
これはこれでまとまっている話のようで、不安ではある。ええんか?
何かの策も欲しいところですね。ただし、ジョーには理詰めが通じない。
さぁまだ水曜だ。
あと三日、がんばっていこう!
直子からは「ガンバリイ」
多数決はさておき、東京の直子にも、手紙で状況を知らせました。
その返事は、加山に電話を引けとぼやかれつつ、電報で会社に届きます。
喜美子は、そのうち引くとバツが悪そうに言います。昇給の時に電話を持ち出したもんね。そりゃそうなるよね。
しかし、これも策。
ジョーに見られないようにしたのです。
直子の電報はいつも通り、一行っきり。ええ加減、葉書一枚ぐらいよこさんかい! そういうツッコミはこの際ええ。
「ガンバリイ」
ここでイメージ映像――熨斗谷電気の看板を背景に叫ぶ直子。
かわいい。ともかくかわいいなぁ。
この一瞬のために看板を設置し、衣装を作るスタッフも半端ない。
桜庭ななみさんをともかく魅力的に映したスタッフさん、演じる桜庭さんもがんばった。お見事です!
姉の喜美子はエールを受けて、絵付け工房で奮闘しております。
「ガンバレ」でなく、字数を増やして「ガンバリイ」にするあたりも芸が細かい。
関西弁のニュアンスを伝える。
「ガンバリ」でなく「ガンバリイ」にすることで、強くなってもいる。細かいところに直子の応援と、作り手の誠意が宿ります。
授業料で解決すればええやん!
喜美子が商品開発室に行くと、藤永と秋津がニヤニヤしております。
「ごくろうさ〜ん!」
八郎は掃除をしておりました。ここも頑固でめんどくさい八郎全開です。
掃除をしようと喜美子が言うと、こうだからね。
「掃除は僕の仕事やん!」
断固断った。ここ、どう思います?
あっさり流せればよいようで、そうれはどうでしょうか。
女性側から見たら、なんか冷たい、距離感縮められない、女子力アピールできない! ってなりませんか?
むろん中には全然気にしない、むしろよい心がけ、女が掃除をやってやる理由はない――とニヤリとしそうなタイプもいる。
『なつぞら』の夕見子です。仕事分担に性別はないとぶん投げる仲間ですね。
それに、八郎は物の位置がズレると混乱するから、自分のやり方で掃除をしたいのかもしれません。
喜美子はそのへん気にするタイプな感じです。
八郎は周囲の目を気にしているのかと気遣い、周りも知っていると言います。喜美子は、タダで習っていることにも引目を感じているから、掃除をしたいと言うわけです。
ここでの八郎の解決法も、斜め上なのよ。
「お金とろか。授業料」
「え〜!」
「ほんまに嫌そやな」
この一連のリアクションも大事。
喜美子の思考回路:むしろお金が介在することで距離感が出てしまうやん? うちと八郎さんの仲やんか。冷たいな〜。いややわぁ。
八郎の思考回路:お金を取ることで、タダやという心理的負担を軽減できる。合理的な解決策や!
八郎は、自信満々でええこと思いついた感満載なんですよ。
自信満々の八郎は、喜美子の嫌そうな態度を無視して一方的に瓶まで用意しています。
「瓶に授業料を入れてください」
「はい、わかりました」
喜美子がそう言うと、八郎はここでこう続けます。
貯まったお金は、結婚したら二人のお金。貯まったお金で陶芸の道具買うたらええわ。ハケやらコテやら出てくる。その時の貯金のつもりで。
「これは【めおと貯金】や」
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