スカーレット112話あらすじ感想(2/13)【女性】は余計や!

信楽窯業研究所の近くで始めた武志の一人暮らし。実は、あっさりいったわけでもありません。

喜美子は反対しました。学くんは実家暮らしだってよ。

そうそう、喜美子は学のベッドの話を聞いて、うちもそうしようかと言ってましたっけ。

「よそはよそ、うちはうち!」

我が子から、そんな祖父ジョーのような言葉で、キッパリ返された喜美子でした。

武志vs喜美子、勝負あり

手付金は払った、保証人のサインと印鑑が欲しい――そう求められる喜美子。

一人暮らしがどれほど大変かわかってんのか、と苦言を呈すと、武志も京都で四年間、一人暮らしだったと返す。

学生寮とは違う。
やりくりをどうするつもりかと心配すると、武志はアルバイトでまかなうとのことです。

信楽にそんな場所あるかと喜美子が言うわけですが。

◆武志のやりくり計画

 

勤務先:「ヤングのグ」

給与:時給500円、週末ならさらにあがる

結論:18,000円ならバイト代でカバーできる

これは武志の勝ちですね。

喜美子は自分が理詰めであるだけに、相手の計画に隙がないと黙る。

なまじ誇り高いだけに、

「あかんもんはあかん!」

というちゃぶ台返しルートは使わない。

「んもぉ〜、お母さんはぁ〜、武志が心配なのぉ〜、一人で生きていけなぁ〜い」

感情に訴えて、クネクネ踊ったりもせんのよ。

喜美子が一人を辞める時。
それは義姉妹のような同志を発見した時か、あるいあ弱った時か……って、そこまで武将かッ!

そうして喜美子は、また一人になりました。

喜美子作品のお値段

喜美子は噛み締めていることがあります。

武志の先生・掛井が、安月給だから喜美子の作品は買えないと言っていたこと。大学初任給12万円の時代に、穴窯作品は安いもので一つ5万――。

喜美子は、当初、もっと低価格を考えていました。

ところが住田が勝手に値段を書き換えてしまう。

「なめられまっせ、こんな値段」

4千円を8万円、20倍にしてしまう。ひょえー!

「たっか! 高すぎるわ!」

「相場でいうたらこれくらいします」

「こんなん、こんな値段売れるわけないです!」

売れました。

喜美子は戸惑うものの、世間が低価格を許さない。喜美子の作品は、気軽に変えない値段となっています。

喜美子はうれしいようで、ちょっと寂しい。八郎の和食器セットのような、誰にでも手の届くものではなくなってしまった。

高額で売れること。金額ばかりをやたらと自慢する、そんな昨年のアレとはちゃうな。

うーん、これはNHKの良心かもしれんね。実在の個人や組織の売り上げに貢献しそうなモチーフは、朝ドラのお約束ではあります。

ただ……

・品物が気軽に手を出せない(契約を伴う『あさが来た』、高価格『スカーレット』)

・同業者や地元経済に貢献する(信楽においでよ!『スカーレット』)

・商品宣伝よりも、人間を描く

この辺をクリアしていればアリですね。

真逆となれば……

・気軽に買える価格帯

・企業とコラボ

・出演者が企業宣伝に協力

・同業他社を貶める描写

・嘘のある企業神話を押し通す

・国際問題につながりかねない

・そもそもモチーフとなった企業の背景が黒い

そういうもんを受診料でやったらあかんで!
いつか明るみに出るんちゃうか……。

やってきた小池の姫君

そんな川原家を、覗く女性がいます。

庭には青い陶器のテーブルと椅子。丸熊の新製品かな?
今まで考えたこともなかった、陶器の歴史を考えてしまう。本作に動かされてるなぁ。

本作は時系列をいじるために、難易度があがっています。
「何が言いたいのかわからない! 主人公と信楽焼の関係が理解できない!」というような声もあります。

描写不足か、鑑賞者の何らかの問題か、そこは考えんと。個人的には15分でよくもここまでできるとは思います。限界に挑んでますね。

さて、赤紫のショールを巻いた女性は何をしているのでしょうか。マダム感がすごい。香水の香りすら漂ってきそうで、信楽マダム・照子よりも格上のような気がするで。

そんな彼女が、気軽にこう声をかけてきます。

「おはよう」

「おはようございます」

「なあ、あれ何?」

「窯です」

質問にあい、穴窯の説明をちゃちゃっとする喜美子。あの窯に焼き物を入れて蓋をして、薪を入れて焚く。

喜美子の真髄やな。それがどんだけえらいことであったか、見ていたこっちにはわかるで。どう温度を設定するか、どんだけ焼くか。その試行錯誤が熱かった。

そういうことを、ラーメン店主みたいに腕組みして気取って話てもええのに。あの業界人がインタビューでやる、意識高いろくろを回すポーズで語ってもええやろ。それこそ、ろくろに関してはプロやし。

それを、お湯を注いで3分待って食べればええみたいな、そういうぶっきらぼうな語り口で言うところが喜美子やなぁ。ほんまに喜美子姉貴には尊敬しかないわ!

ここで喜美子は、視聴者も気になっていることを言い出します。

「あの、どちらさまですか」

「あっここに住んでんの? ほな先生もここに住んではるんやろか? 女性陶芸家の、川原喜美子先生!」

そしてこう言います。

「小池アンリが来たいうといて」

喜美子はわかっていない。アンリはこれや。

「滋賀県いうたら小池やろ!」

なんでも、小池紡績という戦前大きな紡績会社がありまして。そこのアンリは、今でいうたらミス琵琶湖だったってよ。それも神戸に嫁に行くまでだって。美貌で知られた女性だそうです。

それでも喜美子には通じていない。

世代間ギャップか、それとも留守電勘違いでわかった喜美子のすっとぼけのせいか。照子の意見を聞きたいところです。

そのうえで、アンリはこう来ました。

「先生、呼んできて」

「うちが川原喜美子です」

「うそっ!」

「どうぞ、どうぞお入りください」

おっ? 15分の限界に挑みますね。

三津と喜美子の対照も、おもろいもんがあった。今回もそう。

大阪からフラ~っと来て、貧しくて、そのへんのどこにでもいる女だった喜美子。身なりに気を使わず、今でも先生と呼ばれたって地味。威張るつもりもない、そんな喜美子。

滋賀で誰もが知っている(と、本人は認識している)、照子どころじゃない、いわばお姫様のような生まれ。地元に戻れば、その名声をアピールするところから入る。神戸に嫁入りして、誰かの名声で生きてきた、そんなアンリ。

原色緋色の喜美子と、赤紫のアンリ。この色の出会いは、何をもたらすのでしょうか。

非売品の価格交渉

「あ、失礼します」

恭しく入ってくるアンリ。喜美子は気さくに応対します。

ジョーの松茸ご飯のお皿が割れなくてよかった。割れたらどうしようかと不安だったけど……、割れるかもと思っとったけど……、ここにあってよかった。そう思ってしまう「かわはら工房」です。

「たまーに見せてください言うて、訪ねて来はる方いるんです。そんなに置いてはないんですけどね」

「拝見させてもらってええんですか?」

「もちろん!」

アンリは育ちがよいとわかる。言葉遣いがコロッと変わった。

そして、あの喜美子が穴窯で初成功させた作品に一例して、そっと指を伸ばす。

この自然釉の壺は美しい。

魂の色のようで、いつ見てもしみじみと綺麗。それは撮影技術、演出、役者の演技あってのものだとも思えるのです。

焼き上がったときの、戸田恵梨香さんの真剣なまなざし。

そしてこの烏丸せつこさんの、何か神々しいものに出会い、魂をつかまれてしまったとわかる動き。

陶芸だけではない。ドラマそのものが美しいと感服してしまう。

どんなに言葉でうまいだのなんだの言われてもな。顔芸して奇声をあげて「最高!」「うまい!」言うだけやと、説得力ゼロやで。

「おいくらですか? この作品、おいくらですか?」

アンリは切り出します。

「えっ? 非売品です」

「売ってください!」

「これは売り物やないんです!」

「おいくら払えばいいんですか?」

「非売品です、ほやから非売品です!」

「10万? 30万?」

唐突にも思えるこのヤリトリ。今朝もまた、そういう意見はあるやろなぁ。難しい脚本ではあります。

アンリがどうしてお金を出すのか?
そこを考えたいところではある。

彼女は実家の名声や美貌で滋賀では有名になれた。神戸でも綺麗な奥様だった。

だからこそ、自分の内面を焼き尽くすような、その輝きあふれる喜美子の作品に、自分にはない何かを見つけたのかもしれない。

これは重要な人物ですわ。

ほんで喜美子も、初成功だから売れないと言わないあたり、頑固でこの人らしいちゅうか。

100万円をふっかける智勇兼備ヒロイン

さて、川原家にあの人がやって来ました。ちや子です。

そのちや子と、寿司桶で何かを作りながら喜美子が喋っています。

高額買取要求は美術商ではないか?と探るのですが、喜美子は情報を整理しています。

◆小池アンリとは?

 

職業:無職

結婚:不動産業者の夫と8年前に死別

性格:向こうからペラペラ喋って来たで

うーん、なんか寂しそうな女性ではある。初対面でいきなりペラペラと話すところからして、何かあるんやろなぁ。

ここで
「味見お願いします。ああ、ほなこれ全部入れてもろていいですか」
と喜美子がちや子に言うあたりが、生々しいヤリトリでいいんですよね。

お茶を飲みながらゆっくり話していたら、こうはならない。大久保が言っていた、「生きる基本である家の中の仕事」をしつつ、「語り合う女同士」に強さを感じるで。

ただのおばちゃん同士のおしゃべり。程度が低くて、つまらないことしか言っていないと偏見にさらされる。そこに力を宿す本作はすごい。

ここから先の、喜美子流の戦術も強い。

喜美子はお引き取り願うため100万という金額を吹っかけた。

「100万は流石に出せないでしょう……」

なんやこの武将みは?
『麒麟がくる』の織田信秀(信長のお父ちゃんな)も納得するレベルの金額交渉やで。

庵堂ちや子先生、当選おめでとう!

そこへ住田がやって来ます。ちや子が、万能褒め言葉「ちょっとシュッとしはったんちゃいます?」を言う。「なんかこの前あった時よりよくなった」の関西バージョンやな。

「いやあ〜、この度はご当選おめでとうございます!」

住田は開口一番、市会議員に立候補して初当選したことを祝います。

ちや子は市会議員に立候補、初当選、政治家の道を歩き始めていたのでした。

やりおったあああ!
ちや子、「朝ドラに政治を持ち込むな」を通り越して、政治家になりおったわ!

かっこええわ。ほんまに、ここまで来おった。

朝ドラは女性の活躍をうたいながら、女性と政治は分離する傾向を感じてはおりました。分離どころかロンダリングまでやらかす。

『あさが来た』のヒロイン実家は政商そのものです。そんな政治臭まみれのヒロインを、薩摩閥の政商・五代友厚を美化して絡めたのだから、もう胡散臭さが半端なかった(スタッフが被る来年の大河ドラマはどうなるか……)。

一方で、女性が無力なまま、耐えることが美化される。時代背景的に、そこは役所に相談したらええんちゃうか、と突っ込みたいところでも無視されがちで。

『半分、青い。』や『なつぞら』のように、周囲の支援を求めるだけでヒロインが殴られまくる様子を見ていると、どうなるか想像がつくところではありますが。

ともかく、ちや子は画期的やで!
ここまで来たんか……そう感動したわ。

百合子もやってきて、花束で祝っております。

喜美子もちや子も、先生という気負いがなくてええなあ。ここでちょっとした高いお店に行くわけでなく、ちらし寿司でお祝いするところがええなぁ。

住田、百合子も交えて4人で食卓へ。ちらし寿司を食べつつ、ちや子が当選の感動を語ります。

うれしい。
市民運動を、働く女性や主婦が応援してくれた。何よりも、うちのおかげで女性の投票率が上がったことがうれしい――。

喜美子も百合子も納得しています。政治に興味を持ち、選挙には必ず行こうと思えるようになった。そう語っているのです。

ほんま、何度も讃えたくなるな、本作。
『なつぞら』は、労働運動はありだと示した。団結する運動の力を見せた。

『スカーレット』では、政治への無関心に切り込みたいようだ!

住田は、川原先生の個展で会った時から、何かになると思っていたと言います。悪い人ではないけれど、自分の見る目を自慢したいおっちゃんなんやね。

「住田さん、なんでいるの」

すると百合子がすかさず、そこを見抜いたようになかなかきついことを言う。

お見通しやで。そういう権威に弱いことはわかっとるで。そう釘を刺すようではある。

けれども、別に蹴り出して追い払うとか、門前払いとか、そういうキッツイことはしないのです。
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