若者がディスコでユーロビートにあわせて踊り狂っていた時代。
バブル末期の1990年、ヒロイン・楡野鈴愛は人気少女漫画家の秋風羽織に弟子入りしますが、一週間以内に課題の【かけあみ】をマスターしないとクビという事態に……。
技術習得に懸命な鈴愛は、アシスタントの先輩であるユーコに性格的な甘えを指摘されて喧嘩になり、その後、確かにそうかも、と落ち込んでしまいます。
一方、そのころ萩尾律は、ゆるふわイケメンのモテモテ隣人・朝井正人と友人になりました。
もしかしてディスコデビューの日も近いのでしょうか?
頭がお花畑だもんね、と毒づくユーコ
律は大学の体育で、弓道を選択。
弓道場まで備えた西北大学、流石です。
ナゼ今さら弓道なのか。
って、あの弓道部の美少女・伊藤清との思い出があるからですね。
ドラマでは、鈴愛とこばやんの、カセットテープで始まって明治村の拷問で終わった恋の陰に隠れておりましたが、律の胸にはあのときの「バドミントンシャトル」が胸に残っているのです。
「はい、もうすぐ暖かくなりますので、夏物をお願いします」
オフィスティンカーベルでは、ユーコが電話中。
現れた鈴愛に、仕事前なら私用電話をかけてもいいんだよ、と声を掛けます。
ユーコは母親に電話をしていたのでした。
彼女は、実のところ世田谷区出身のお嬢様なのです。しかし母娘関係は悪そうで。
お嬢様だからこそ、
「せっかくエスカレーター式私立に入れて、おぼっちゃまとお見合いさせてやろうと思っていたのに、漫画を描くなんてとんでもない!」
なんて対立してしまっているのかもしれません。
ナレーションで廉子さんが「毒親という言葉はなかったころ」と語ります。
そう、定義しなくてもそういうタイプの母親はおりました。
ボクテのようにゲイをオープンに語る人がいないころから同性愛者は社会にいましたし。
毒親もいましたし。
朝人のようなゆるふわイケメンも当然いたわけです。
「お母さんと敬語で? まさか継母とか?」
と思わず声にしてしまう鈴愛。
すかさずユーコは笑いながら、シンデレラに白雪姫、おとぎ話は継母じゃないと仲悪くないもんね、頭がお花畑だもんね、と毒づきます。
作画資料を誤って撮影してしまった鈴愛
場面変わって、鈴愛は、秋風羽織の前に写真を置きました。
ピンク色のかわいい船で「海賊船アドベンチャースカル号」。
羽織は怒りだします。
「なんだ? ホワイエじゃないだろ! こんな下品な船を撮影してきやがって! 上品なホワイエ号がいいんだ!」
はるばる横浜まで、作画資料を撮影してきたのに、間違っていたという話。
今のようにインターネットで画像検索できない時代ですからね(※編集談 私が出版社へ入社したころも、しょっちゅう街中へ写真を撮りに行き、堀内カラーにネガを出してました!)。
実はこの撮影がなかなか難しくて。
ちょうどホワイエ号がいない時間帯だったのです。
そのことを鈴愛は電話でユーコに聞いていました。
「ホワイエいないの? アドベンチャースカル、若い女の子に人気あるからそっちでいいよ!」
そう背中を押されて、鈴愛はアドベンチャースカル号を撮影してきたというわけ。
鈴愛が困った顔をしていると、菱本がすかさずフォローします。アドベンチャースカル号は若い女性に人気ですよ、と。
岐阜では和子が「空の巣症候群」
座席に戻った鈴愛に、羽織は近づき囁きます。
「岐阜の猿! 田舎に帰れ、玉ねぎでも売ってろ!」
しかし鈴愛の耳には届きません。
左耳が聞こえないです、と涼しい顔をしておりますが、途中から怒鳴っているので右からでも聞こえるんでないの?と羽織以外は全員突っ込んでいるようです。
場面は岐阜へ移り……。
和子は、「蜂の巣症候群」(廉子さんの言い間違い)ならぬ、「空の巣症候群」です。
子供は18年も一緒にいたのにポンッといなくなるのね、泣けてくる、と晴に語ります。
楡野家にも、萩尾家にも、手紙は来ていないそうです。
都会で楽しい日々が続くと、手紙どころじゃないですもんね。この話は、まだ電子メールもLINEもない時代なのです。
まぁ、電話ぐらいできますけど、電話代ももったいないですしね。
親は子供に永遠の片思いなのね、と嘆く和子。
でも、この寂しさも、ユーコさんの家族を見てからだと温かいですよね。
ユーコさんは電車乗れば実家にいって夏物くらい取って帰って来られるのです。
物理的な距離は近くとも、心理的な距離が隔絶しているんですな。
どうしたユーコ?急にデレ始める
さて、そのユーコ。
鈴愛が頑張っていると、丸ペンではなくてスクールペンがいいよ、と差し出します。
鈴愛はスクールペンの描きやすさに驚きます。
「それ、あげる。私、人に親切にされたことないから。だから人に優しくするの、慣れてないんだ。でも、やってみたら気持ちよかったりして。昨日は喧嘩しちゃってごめんね、やっかんじゃって」
「ありがとう、ユーコさん!」
「同い年だし、ユーコでいいよ」
ん〜〜〜。デレるの早くない?
「承知した!」
鈴愛の独特な言い回しを面白がるユーコ。他にはふぎょぎょとか言い回しがあるよ、と答えます。
「スクールペンどちゃくそ描きやすい!」
と感激する鈴愛。どちゃくそは秋風先生でしょ、と突っ込まれています。
スクールペンでかけあみを一心不乱に描き始める鈴愛。
フリーハンドの技術で、漫画家の資質までわかってしまうとか。
鈴愛はそのまま寝てしまい、気づいたら朝。
出来上がったかけあみを見て菱本はニッコリ微笑みます。
鈴愛を起こすと、秋風先生に見てもらうと原稿を持ち出そうとします。
「原稿は持ち出し禁止です!」
あっ、そうだ、と止められて走って他の階を探すものの、羽織はいない。
菱本から「ネームを外で練っているのかも」と助言された鈴愛は、外へ飛び出してゆきます。
そしてたどりついたのは「おもかげ」。
「ともしび」そっくりだ、と入っていきますと……。
中には、正人のモテテクを真似して、美少女を前に不自然な一文節区切り話法を実践している律が。
いきなりチャラ大学生を実践しているようで。
おいおい、律くん、その喋り方も君のキャラと猛烈に合ってないよ!
「律? 律やないか! こんなところで何やっとる!」
こうして運命の二人は、全くロマンチックではない再会を果たしたのでした。
今日のマトメ「掴みどころのないユーコの行動」
昨日に引き続き、今日も気になるユーコさん。
おそらくや、お嬢様が漫画家という道を選んだゆえ、家族と不仲だったんですね。
それ以外にもなんだか深い事情がありそうですし、鈴愛にイラっとするのもわかる気がします。
一方で鈴愛は、思ったことはためることなくペラペラと喋る、そういう悪気はないけど欠点になりうるところが見えてきました。
「もしかして継母?」
なんて言ったらいかんよ。
素直っていうのはいいことばっかりじゃないぞ。
話をユーコに戻しますと、彼女の行動はちょっと掴めないのです。
アドベンチャースカル号のことは、羽織の性格を知って入ればあの指示では危ういことくらい気づけたはず。
スクールペンも、謎が残ります。
スクールペンの方がいいなら、ナゼあの親切なボクテが最初からそう勧めないのか?
ここは慣れて来た丸ペンの方が良いのではないか? と勘ぐってしまいます。
かけあみに関しては、どちらのペンが決定的かということはなく、個人差があるようです。
ボクテは丸ペン派、ユーコはスクールペン派なんだよ、という落とし所もありますが。
「丸ペンで慣れて来たのにスクールペンにしたら、やり方狂っちゃうわよ、ふふふ」
という嫌がらせの可能性もゼロではないような気がします。
鈴愛の野生の強さで、そういう嫌がらせを無効化するのかもしれないですが。
そんなわけで、なかなかユーコの言動がわからない。
デレるのはちょっと早いこともあわせて、結構引っかかるんですよね。
ただ、今のところ、癖の強い羽織もユーコも、そこまで憎たらしい悪役になりそうもないのは確か。
個人的に『こいつは悪いやっちゃ』と思うのは正人ですよ。
悪意はないのに、律の人格に悪影響を及ぼしそうで。
和子さんに変わって心配したくなっております。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
>「岐阜の猿! 田舎に帰れ、玉ねぎても売ってろ!」
このドラマは視聴者が「ん?おかしくない?」と思ったことに、2,3日後に解答を用意してたり、放置したりがあるため、まだ展開について読めないところが多いです。
脚本を信用していいのか、疑うべきか。
今のところ、自分には用意された解答が予想外且つ深い意味を持つことが多いので、信用したいと思ってる、というのが正直な気持ちです。
完璧に隙のないドラマというのも、そうそうあるものじゃないので、ある程度は許容範囲です。脚本そのものに好感が持てるから許容範囲も広くなります。(脚本そのものが低品質なら、どちゃくそ狭くなります)
ユーコさんのデレタイミングは確かに早過ぎる気もしますし、性格的に欠陥もある設定の主人公には必要なキャラクターと思うので、早々にデレられるのは勿体無い。
デレには裏がある、と思いたくもありますが、まだ確信が持てないのにドキドキ感があって、続きが気になるのもまた事実。