半分、青い。124話 感想あらすじ視聴率(8/23)幸せの天才は強い!私は泣かん!

「センキチカフェ」で五平餅をせっせと焼く楡野鈴愛、37歳。

目下気合いを入れて制作中なのが「岐阜犬」という名のぬいぐるみです。
スピーカーフォン機能を生かし、実際に喋ることもできる。

このマスコット人形は、縫製等をナオちゃんが協力し、ブッチャーが突っ込みながら、律も技術を請け負う――。
まさに梟会の四人が、あの【糸電話の実験】をして以来の協力プロジェクトとなりました。

さらに!
鈴愛の計画では、岐阜犬の声担当を療養中の和子さんにお願いしようとしております。
さぁどうなる?

【124話の視聴率は22.4%でした】

 

岐阜犬の音声テスト、大成功!

「もしもし岐阜犬!」
今日は岐阜犬の音声テストから。

鈴愛も、ナオも、健人も、ビックリ。ちゃんと喋りよる!

「気分と言われても犬やしな〜」
答えているのは、ブッチャーです。ノートパソコンに繋いだボイスチェンジャー越しに話しているのです。

草太はこれぞノーベル賞も狙える律のおかげと褒めそやしますが、律としては、俺は作っていないからとあっさり。これも彼が仕事で得たからこそ利用できる技術なんですけどね。

宇太郎と晴も、岐阜犬ボイスを当てます。
しかしブッチャーが迷走して、わけのわからないことをペラペラと喋り出すのです。

「ちゃんと喋れ、岐阜犬!」
鈴愛が岐阜犬をポカリとすると、ナゼかブッチャーも叩かれたようなリアクション。

うん、コレは課題が見えて来ましたね。
声は誰でも入れられるけど、ブッチャーみたいにふざけない人が必要だわ。

鈴愛が和子に頼むのは、まさにそこです。

悩み相談に答える場合、最適と判断したのでしょう。
和子は金八先生の真似も得意だし、実際、鈴愛の前で、久々に金八の物真似を披露します。いやぁ、かわいいですし、思わずニヤニヤもしちゃいます。

律は、携帯で岐阜犬の写真を和子に見せました。
デザインは、なかはら・ももた先生の……と思ったら美術スタッフさん気合いの立体造形ですね。

※Twitter上で話題になってましたが、公式アカウントが誤報出しちゃったみたいっす^^;

https://twitter.com/momotaNakahara/status/1032231262956675072

 

友達は無理して作らんでもええ

花野も岐阜犬を気に入り、ぎゅーっと抱きしめています。
その映像を見て、和子も弥一もニッコリ。

こうして和子の声入り岐阜犬ができあがりました。

センキチカフェに置かれ、早速、目についたのか。
場面変わって岐阜犬に話しかけているのは、深刻な悩みのありそうな女子中学生です。

聞けば「友達が出来ない、みんなに避けられている、死んでしまいたい」そう切々と訴えるのです。

和子さん、すかさず言いました。

「死んだらあかん。友達は無理して作らんでもええ。僕に会いに来て」

いいなぁ。
斬新ですよねぇ。

このくらいの子供って、どうしたって友達を作ってこそすべて、みたいに思い込まされがちで、特に思春期ともなれば激しく悩んだりします。

なんでなんだろ?
と思ったら、小学生の頃からこういう刷り込みがありますよね。

 

名曲『いちねんせいになったら』です。
友達100人出来ることが良いことのように歌われます。

コレ自体を否定する気はありませんが、仮にクラスで孤立していると思われたら、周囲から「友達ぐらい作れば?」なんて軽く言われたりもする。

でも、そう簡単な話じゃありません。

自分を見下すような相手と即席の友情を築く――そう見せかけるために自分をねじ曲げ、圧し殺し、作り笑いを浮かべるぐらいなら、他にやるべきこともありますよね。

自分の好きな本を読むとか。一人で空を眺めるとか。死んだらそういうこともできない。
友達作りで消耗するより、自分の時間や人生を大事にするほうがいい。
そういうことなんじゃないかと、思います。

「ありがとう、岐阜犬!」
中学生は御礼を言いつつ、立ち去りました。

 

律の不眠はかなり悪化しているようで

キミカ先生の元に来ているのは、律です。

律は和子が岐阜犬の声を張りきってやっていると報告。
キミカ先生も、数値は安定していると太鼓判を押し、「人は仕事のような、やらねばあかんことがあったほうが生きるのだ」と笑顔を浮かべます。

これには律も「治ったりして」とニッコリ。
しかし、そうは簡単にはいかないようで……。

和子にも律にも“いつもの薬”が処方されます。どうやら不眠がかなり悪化している様子。
律が、その日の最終診療だというキミカは、このあとコーヒータイムに付き合わないかと誘うのでした。

この、律の満たされないような暗さ。気になります。
やるべきことがあるのは、和子だけではないのかもしれません。

「センキチカフェ」には、なんと、西園寺富子が!
ブッチャーの母であり、和子も「西園寺のマダムやわ」と気がつきます。

 

幸せの天才と生きるのが下手な……

さて、キミカ先生は、和子は強いと律に語ります。
人間には、辛いときも、不安で死んでしまいたいときもある。それでも和子は、強い。

そういえば、と律が語り始めます。
和子が調子悪くて食事が取れないとき、ほうじ茶を淹れたそうです。すると、こんな美味しいお茶は飲んだことがないと喜んだのだとか。

かつて鈴愛は、和子を幸せの天才と呼んだそうです。そうかもしれない、と微笑む律。

これも大事だと思います。
朝ドラ、特に良妻賢母ヒロインの笑顔は、夫や子供や他者のためにあるもの。メインビジュアルでヒロインは大抵ニッコリ微笑むものですが、それは周囲を明るくし、楽しませるためという点が重要だった気がします。

前作のおてんちゃんなんてオープニングでやたらと笑っていましたが、どうも本編を見ると、この人は本当に人生を楽しんでいるのか? 自分より他のことばかり考えていやしないか? と思ってしまいました。

それが、和子は違う。
自分の人生を生きるために、笑うのだと。

それが当たり前ですよね。自分の人生でなくて他のことばかり優先することは、人間できません。
和子はまず自分の人生の幸せを見つめて追い続けるから、楽しめるからこそ、周囲を明るくすることもできているのです。

キミカ先生は言います。
律は綺麗な顔をしていて、和子にとっては王子、鈴愛にとってはマグマ大使だ。それはええねえ、見てるときゅーっと悲しくなる、心もきっと綺麗や、と。

でも律は浮かない。
そうじゃない。俺は何者でもないのだと。

「まさか、俺は生きるのが下手や」
これもぐっと来る台詞です。

エリート街道を進み、妻子もいて、職業人として成功している律。本作のこの世代では、一番真っ直ぐ平らな道を歩んでいるように見えます。
それでも、不眠症で、何かが欠けていて、生きるのが下手だという。

どうしてなのでしょう。
その足りないものを、何で補うのでしょうか。

 

ずっと歳下のアメリカン

さてセンキチカフェ。
岐阜犬の前では、西園寺富子が長々と相談しておりました。

思わず鈴愛が、オーダーの五平餅が焼きすぎになるからとパクリとしてしまうほど、富子は話し込んでいるようです。

相談内容は、娘・麗子(ブッチャーの姉)と健人の恋愛でした。

関西弁とアメリカ訛りが混じった変な男。
しかもずっと歳下。

そう、そこなのです。アメリカナイズされた健人の個性もあるけど、まず年齢差ですよね。

朝ドラの恋愛って、特に前作みたいな戦前マダムだと年齢差なんかがわかりにくい。
脇役の恋愛って、なんかこう男女がぽーっとなって、主人公たちが祝福していれば終わるだけ、っていうところがあるのです。

しかし、本作は脇役の恋愛にも、きちんと障害がある。

これに対して岐阜犬は、
「親に出来ることは、子供を信じてあげること」
そう力強く答えます。

正直なところ、麗子と健人については、かなり障害も多いと思います。

ここまで色々ありそうで、年齢的にも日本では「もう売れ残り」とされる麗子。そんな彼女が破るべき壁はあるでしょう。健人ならば蹴破りそうですけど。
うーん、いいなぁ、この脇役の恋愛。

 

宝石はみんなダイヤだったよね

律は夕暮れの川縁で子供たちを見ながら、薬を飲めば治るものではないかと一人ごちます。律のこの悩みは何でしょう?

鈴愛は、和子に御礼を言いに行きます。
お土産は、草太がコトコト煮込んでいた根菜スープ。

本作って、男性のお料理が多いですよね。
もちろん草太は飲食店経営者ということもあるでしょうけど、男の手料理も美味しいと証明しています。

和子も、朝から鈴愛にクッキーを焼いていました。
あのドレンチェリーのクッキーです。鈴愛たちの幼少期は王道、現在はややレトロですね。

鈴愛はルビーとエメラルドと言います。

和子は、小さい頃の鈴愛ちゃんは赤いのも全部ダイヤだったと指摘。

宝石はみんなダイヤ、かわいくて直せんかった、と和子さん。

「小さい頃から、変わっとらん」
「そんなことない、おばさんや」

しみじみ、いい会話だなぁ。そうです、鈴愛を生まれた時から知っている和子さんには、鈴愛が持っている本質は変わらないと思えるわけ。
でも鈴愛本人からすれば、世間からすればおばさんだと。

実はこれも朝ドラとしては、画期的なんですよ。

朝ドラのタイムスパンが長いものって、加齢しているのかしていないのか?わからないところがあります。
劇中ではあきらかに加齢していても、誰もおばさん呼ばわり、扱いしない。加齢ゆえに迎える困難が育児ぐらいしかない。

前作のラスト間際、かなりいい歳のヒロインが「ねえちゃん」呼ばわりされていて、私はズッコケました。

 

「私は泣かん」

和子は鈴愛に頼みがありました。

律が生まれたときから大きくなるまでつけていた、育児日記です。
随所に写真が入り、デジカメ時代にはない手作り感が味わい深い。上京するまで、誕生日には家族写真も撮影していました。

「これ、おばさん死んだら、律に渡したってくれる?」
「了解致した」

出た、鈴愛の時代劇話法。
弥一に頼んでも、律本人に渡してもいいはず。

それでもその二人ではなく、男は弱虫だから敢えて鈴愛に渡すのだと。

「私は泣かん」
そう言い切る鈴愛でした。

 

今日のマトメ「幸せの天才」

総評前に、鈴愛話法について。

今日も「了解致した」と出てきましたが、これは時代劇大好き仙吉由来の、時代劇話法なんですよ。
性格として一本筋が通っています。

涼次への「死んでくれ」もブーイングありましたけど、これも時代劇話法だと思います。

例えば武将が、決死隊みたいな作戦に送り出す者に言うとか。
あるいはこの作戦が出来なければ滅びるというとき、仲間と涙ぐんで手を握り合って言うとか。

なんせ時代劇話法は「命が軽い」んです。時代がそういうものだから。

奇妙なことに今年の朝ドラは、大河ドラマ『西郷どん』よりもはるかに辛い決断があり、主人公もガンガン挑んでいくという時代劇っぽさがあるのです。

明治村デートで拷問にワクワクしたのも、仙吉由来の時代劇のせいかもしれません。

こういう味のある女、実は結構多いからなぁ。
歴女ですか?とか、刀剣女子ですか?とぬるい調子で聞くと、真顔で骨太な歴史ウンチクを披露する女とか、普通におる!

朝ドラヒロインはじめ、理想の中で暮らす女の子は、時代劇なんて好きじゃないし、恋愛小説ばっかり読んでいますけどね。

さて、今日から岐阜犬始動です。
これがしっくり来ますし、プロットとしてすごく練られています。

梟町にもある、中学生の人間関係、その暗がり。
娘の恋愛を素直に応援できない西園寺マダム。

悩みに答えることで、和子の人柄や性格を表します。
幸せの天才は、周囲も幸せにするのだと。

ここから見えてくるのは、和子の強さです。優しいだけではなく、すごく強いのです。
そしてそういう女の強さが、鈴愛やキミカにもあるように思えます。

和子の周りの弱い男である律は、そうした和子のように強い女に腕をつかまれて、これから生きてゆくのではないでしょうか。

そう思えるのです。
本作は、男女や人間関係の固定観念を吹っ飛ばしてくれます。

男が手作り料理で女の胃袋をつかみ、喜ばせてもよい。
強い女が、弱い男を補い、腕を掴んで引っ張って歩いてもよい。

特別な絆は、結婚して子供を作る男女だけのものではない。

固定観念を吹き飛ばしつつ、見る人を勇気づける。そんな素敵なドラマです。
毎朝これを15分見られるって、本当に素晴らしい!

◆著者の連載が一冊の電子書籍となりました。
ご覧いただければ幸いです。

この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

4 Comments

ミユキ

こんにちは!
私はあらすじを読んでいましたから、何故、和子さんが鈴愛に育児日記などを渡すのだろう?っと思っていましたが観て納得しました。鈴愛の一言が和子さんが渡した理由だと…普通だったら、そんな死ぬとか言わないで!とかグダグタ言ったり泣いたりする。だけど鈴愛はにっこりと了解致した!とだけ。鈴愛は強くて優しい…和子はそれを知ってるから渡した。と私は感じました。
この作品はなんでもないようで色んな所に心に染みる会話があって素晴らしいと思います。

ビーチボーイ

多くの人は、間違った思いこみというか勝手な決めつけをします。つまり《律のようなイケメンで頭も抜群に良くてなおかつスポーツマンという男は、きっと関白藤原道長みたいに「この世は俺様のためにある」ぐらいに思って日々肩で風切ってのし歩いてるんだろう》みたいに。たとえば私の親友にそういう三冠王の男が一人いますが、そいつはやっぱり萩尾律に似てて、凄くピュアでナイーブな、ガラスのハートの男です。ノーテンキな私と正反対に苦悩の連続なんですよ。
まぁ、他人を羨むのは別に自由だけど、外面だけ見て全人格を判断するのは慎みたいものです。本作の脚本家さんはさすが、そのあたりの機微を凄く良く分かっている方だと思います。

ぱせり

幼少編は泣きながら見ました。
漫画家編はハラハラしながら、100均編はモヤモヤしながら、
そして今はイライラしながら見ています。

自分は女なので、どうしてもより子さん目線に立ってしまい、
鈴愛さんや和子さんの言動が許せないのです。
育児日記を、旦那が昔プロポーズした幼馴染に託されたなんて…
自分が嫁だったら離婚案件です…。

女から見て許せないヒロイン、
そのヒロインの非常識極まりない言動を笑って許す周囲の人々…
かつてこれ程までに神経を逆なでされるドラマに
自分は出会ったことがありません。

なのに、ああそれなのに…
毎日このドラマをものすごく楽しみにしている自分がいます…。

武者さんのように、ドラマの登場人物を心から愛して楽しみにしている人はもちろん、
自分のようにヒロインの不幸をひたすら望んでしまうようなアンチをも虜にしてしまう…
「半分、青い」は
本当に恐ろしい作品だと思います…。

いちこ

律は心の真ん中を見せん
と、前に和子さん言ってた。
和子さんに
最後に律が
心の真ん中を伝えれるシーンがあるといいな。あるかな。
泣いてまうなあ。
律の心の空白を埋めるのは、
スズメ。かな。

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