わろてんか67話あらすじ感想(12/18)栞と宝塚はどうなるん

大正時代の大阪・天満。
てんと藤吉夫妻は寄席「風鳥亭」を経営している。

人気の落語家・月の井団吾とも契約を結び、売り上げは絶好調です。
向かうところ敵なしといえそうな経営ですが、この後どうなるのでしょうか……。

 

風鳥亭の立ち位置が史実からかけ離れすぎに

売れっ子の団吾を迎えた風鳥亭は、押すな押すなの大賑わい。
寄席も天満、玉造、松島と三軒に増えまして、髪型を変えた藤吉も番組編成に大忙しです。

なんだろう……松坂桃李さんってもっとイケメンだったと思うんですけれども、前のボサボサヘアーも、今回の髪型も、わざとイケメンぶりを落とすようなスタイルにしているような。
髪型を変えることで加齢を示したかったのだとしても……。

ここで、上方芸能界の歴史を、大河ドラマ使い回しと各人の時代劇風の顔を入れつつ説明します。

笹野高史さんは2009年『天地人』の豊臣秀吉風、寺ギンは上杉謙信風、そして藤吉は2014年『軍師官兵衛』の黒田長政風。
しかし、肝心の説明内容が、なんだか無茶苦茶な気がしてなりません。

本来は、おちゃらけ派(史実の反対派)を乗っ取って吸収した北村風鳥派(史実の吉本花月派)が、伝統派(三友派)まで飲み込んで天下統一している頃のはずです。
先週のレビューで「架空戦記っぽい歴史改変だなぁ」と書かせていただきましたが、『信長の野望』の歴史イベント無視シナリオ「夢幻の如く」レベルの大幅改変かもしれません。
もうわけがわからないんス……(´・ω・`)

そろそろでっかく「このドラマはフィクションです」とテロップ入れる頃合いかもしれません。
史実から逸脱し過ぎた2016年『とと姉ちゃん』みたいに。

 

キースとアサリはノリノリだけど……

キースとアサリは新たなコンビを結成し、ドツキ漫才をしております。
と、これも何がなんだかわからない。

二人の衣装は和装で、伝統的な「万歳」に近いように思えなくもない。

 

しかし、時空を越えてハリセンを持っている、と。

見ていてかなり混乱してしまったのですが、本来は

①万歳

②しゃべくり漫才

③どつき漫才

という歴史的な流れが、

①万歳

②どつき漫才

③しゃべくり漫才

なんて時系列になりそうです。

伝統万歳ではなく、万歳スタイルもキースとアサリの発明ということにしたのでしょうか。

あァアあああああ! わからない! 何がなんだかわからん!!
とまぁ、悶絶しているうちに「お前の話はツマラン!」の大滝秀治さんテレビCMを思い出してしまいました。関係なくてサーセン。

それはそうと、この2人の芸、渾身のリニューアルのはずですが、バシバシと痛そうにどつくキースへの不快感がどうしても先に立ってしまい、痛々しいのです。
もうこの気持ちをどう表現したらいいのかわかりません。

しかしキースとアサリは大爆笑をかっさらい、三軒掛け持ちで大変な一方、万丈目はどうにも芽が出ないようです。

うーーーーーーん。見ている分には万丈目の方が面白いという方が多いんでは?
私のセンス違いでしょうか。

 

寺ギンもリリコもどんどん魅力が喪われ……

そのとき、舞台上で曲芸師の佐助が転んで足首を捻挫してしまいます。
寺ギン所属の佐助。こんなことが寺ギンにバレたらやばいと嘆いています。

肝心の寺ギンは、女を侍らせて朝からガハハ笑いをしています。

朝から人をハリセンで思い切りどついたり、女を侍らせたり。主婦層視聴者に配慮しているんだかしていないんだか、よくわからない作品です。

風太は寺ギンに命じられ、佐助の妻・富に借金を取り立てに行きます。
困窮する富を見て、虚しくなる風太。

富は風鳥亭に金を借りに来ました。
藤吉は寺ギン所属芸人の妻なので藤吉は断りますが、てんはそっと金を渡します。

一方のリリコは、ドレス姿で映画撮影中。クランクアップを迎えたようで、伊能栞は花束を渡します。
リリコは次の撮影は出たくないと言い出します。

契約があると言われても、
「そんなんしらんもぉ~ん!」
と栞の頰をつねってシラを切ります。

あーあー、リリコまで変なやつに><;
結局、彼女は人の好さそうなパトロンの後添えが一番向いていたのかもしれない(第6週)。

そんな風に思えてくる面倒くさい人になってしまってます。

 

栞もいよいよムチャクチャです

栞は風鳥亭で、うしろ面を見ながら爆笑しています。
先ほどはキースとアサリより面白いと書いた万丈目のうしろ面ですが、のけぞって笑うほどかなぁ、という印象。

まぁ、こればっかりは今と昔の笑いが違うので、しょうがないかもしれませんが。

ただ、栞が粘っこい目で働くてんを目で追っているのが、どうにも萎えてしまいまして。
なぜ朝ドラに、既婚者がらみの恋愛風味のシーンを織り交ぜるのか。切実に、高橋一生さんにこんなことをやらせないで欲しいです……。

その栞が見ているてんはというと……皆が褒めるほど有能でテキパキしているようには思えないんですよね。
なんと言いましょうか、「てんはそういう設定なんですから、そう思ってください!」と言われている気がしまして。

ところでてんと栞と言えば、以前、ゴロゴロ冷やし飴を発明したてんの機転に惚れ込み、「栞がてんを借りる」という話はどうなったんでしたっけ(第8週)。
割と大きめの前フリだった気がするのですが、すっかり忘れている様子で
「いやあ~あんなに笑う栞君は初めてみたわ~」
と、藤吉。長屋に栞を迎えて笑っていみあす。

そこで栞が、リリコは女優としてやる気がないとこぼします。
適性がないなら、辞めて貰ってもいいはずです。芸の世界は、ヤル気も大きな才能の一つでしょう。

栞はここで唐突に、大阪郊外の駅周辺に、映画館を中心とした一大リゾートを作り上げると言い出します。
「笑いは人を前向きにする力を与える。がんばろう!」
と、これまた総集編で出したらよさげな台詞を言いますが、意味がわからない(´・ω・`)

リリコの撮影していた映画って、おそらくコメディではありませんよね。
むしろシリアスなラブロマンスで、以前栞が見せていたチラシもそういう雰囲気でした(第11週)。

てんと藤吉はともかく、栞は人を笑わせることを目的としてないはず。何かおかしい。
自分の映画のジャンルすら理解できないって、もうこれ以上、栞をボンクラにせんといてや!

その晩、アサリが泥棒と間違われて捕まるところで明日の放送へ。

 

今回のマトメ「寺ギンは団吾の契約を認めたの?」

葵わかなさんがちょっと鼻声気味に聞こえました。
長丁場の朝ドラです。無理しないでください。心配になりました。

あと、もうこれは毎週つっこんできたので、私の方が息切れしそうなんですけど、登場人物の行動がとにかく無茶苦茶です。

寺ギンと風鳥亭が対立する前振りとして、今日の佐助と富の借金の件が出てきたようです。
が、そもそも寺ギンは、風鳥亭と団吾の契約に警戒していました。
寺ギンと契約寸前のところまでいっていた団吾を、風鳥亭がよくわからん経緯でかっさらった格好になったのが先週第11週なのですが、そのことを寺ギンは忘れたのでしょうか。

これから言い出すのかもしれませんけど、団吾が風鳥亭の高座に上がることが判明した段階で、
「うちの芸人は、もう風鳥亭には一切出さんで!」
ぐらいのプレッシャーがあっても良さそうなものです。

それなのにノンキに女侍らかして酒飲んで。寺ギン、またもや無理矢理に悪者にされている感が強いです。

今週やりたいのは、吉本の月給制度ですね。
先週、散々月給制度の描き方がおかしいと文句つけましたけど、早とちりでした。すみません。

でも、それならば何故団吾が、月給の契約内容を持ち出していたんでしょうか。
時系列がいろいろとおかしいのではないですか。
栞がてんを借りる件を忘れたように、これもスルーされるのでしょうか。

 

今回のマトメ「宝塚は消されないよね……?」

本日、最も頭が破裂しそうなのは、栞の言動です。

なぜ唐突に栞が郊外開発に乗り出したのか。
これは彼を製薬会社の息子、貿易会社社長にしてしまったことでまったく意味が通じなくなっています。

本来の小林一三は、阪急電鉄の経営者です。
鉄道を通した沿線を賑やかにするため、そうした事業に手を出した、いわば逆転の発想。そこが彼の偉大さなのです。
そこを吹っ飛ばしたため、わけがわからない……。

栞のエンタメへの関わりを、いきなり活動写真にしたのもまずかった。

小林が映画事業の東宝を始めたのは、1932年(昭和8年)です。
この映画を前倒しにした結果、小林の心血注いだ「宝塚歌劇団」が消滅しそうな予感がしてきました。

映画は関東にもありますけど、関西だけ、世界にここだけ、そんなオンリーワン、日本の芸能誌に燦然と輝く、大輪の薔薇「宝塚歌劇団」。
それを一体なんだと思っているのでしょう!

くぅぅ~、私は悲しい。悔しい。酷い。
そんなことするなら、中途半端に小林一三をモデルにしたキャラを出すなや!

そして、この映画事業も時空が歪んで奇妙なコトになってます。

創生期の日本映画は、東京が現代劇で、京都が時代劇なんですね。
リリコが洋装で現代劇に出ているのも、流れからして不自然です。

本作は、時系列を引っかき回して日本の芸能史を軽視するかのような、そういうスタンスがちょいちょい目立って、私の心に突き刺さってくるのです。
箸で料理をぐるぐるにかきまぜて、食べたいところだけつまみ食いしているような、行儀の悪さと申しましょうか。

しかしなぜ、ここまで改変したり、時系列を変えなければならなかったのか。

それはおそらく藤吉の存在でしょう。

史実で藤吉にあたる吉本吉兵衛は、早世してしまいます。
吉本興業の本格的な発展は、彼の後継者である吉本せいと弟の林正之助の代からです。

それを本作では、てんと藤吉のラブストーリーで引っ張るため、二人の背景も変えて、時系列も変えてしまった。
誰が得したのかよくわからない恋愛話のせいで、日本の近代芸能史がパラレルワールドレベルまで歪んでしまった感が否めません。

ともすれば吉本せいだけでなく小林一三のキャラまで崩壊してしまいそうな。
ほんま罪作りな作品やで!

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

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