なつぞら150話 感想あらすじ視聴率(9/21)思えば剛男から始まったんだ

やっときたのか、剛男さん!

そう突っ込みたくなるところですが、そういうわけでもありません。

戦友であった柴田君、その孫である千夏を見て、剛男は感無量でした。

受け継がれる思い

千夏が店に帰ってくると、剛男も入ってきます。

咲太郎と千夏は初対面。おじさんだと紹介されました。
千夏は挨拶をして、ニッコリと微笑みます。

ここでなつと咲太郎は、こう声をかけるのです、

「父さん!」

「柴田さん」

「いやいやいやいやいやいやいや……」

そう「いや」を連呼する剛男。電話に対して「はいはい」も連呼していましたっけ。

こういう細かい語彙、喋り方、仕草に加齢を感じるんだな。
衣装や演技指導を見ていると、剛男がほんとうに人のいい昭和のおじいちゃんになりつつあると思えるのです。

千夏はなつそっくりだと、うれしそうな剛男です。

「びっくりしたもね。千遥ちゃんが心配で、つい来てしまったわ」

「うん、わかってもらえたわ」

そう語り合う剛男となつ。二人とも北海道弁になります。
本作の方言指導はおそろしいほど。東京にいる道産子も、道産子にふれると方言が蘇る現象が再現されております。

しかも、道産子本人は訛りに気づかないんだべな。
スカした態度の高山に北海道弁が混ざるところは、微笑ましいものがありました。

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やわらかい目になった千遥は、千夏もここで暮らせると告げます。

「おじさんも、おばさんも、みんな千夏の家族だよ」

なつがそう言うと、千夏の小さな胸にも安堵が染み渡っていくようです。

「そうか、それはよかった」

そう安堵しつつ、剛男は思い出します。

「富士子ちゃんから千遥ちゃんに返してって」

出たよ、富士子ちゃん。剛男の富士子ちゃん呼ばわりは残りました。
やっぱりそう呼んでこそ。それでこそ剛男だ。

即座に娘の明美が、
「出たよ富士子ちゃん」
と笑うあたりが、辛すぎる!

なつぞら15話 感想あらすじ視聴率(4/17)No 調略 No Life

そう取り出されたのは、藤色のあのワンピースでした。

ここで千遥は、なつに彼女の服を返します。

返さなくてもいいと言うものの、そういうことでもないのです。

「やっと返せるの、うれしいから」

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千遥はそう言うと、父の手紙が入った封筒も差し出してきます。

そう天丼の味に感激して「杉の子」を去る五人の客。
なつは、カウンターにそっと封筒を置きます。

なつぞら147話 感想あらすじ視聴率(9/18)101作目も勇敢に続いていけよ

「やっと三人に届いたんだね」

そう感慨を見せる剛男。
手紙を守るために、どれほど苦労したか。思えば、この一通から物語は始まったのです。

「奥原さんの思いは、こうしてしっかり、受け継がれていたんだね」

柴田君、本当にきみのおかげだよ、ありがとう――。

奥原家の父にして、柴田剛男の親友が、しみじみと告げます。

「何の用ですか?」

そう問われ、剛男は検閲の入っていない、本当の手紙を渡します。

なつぞら8話 感想あらすじ視聴率(4/9)「内向性」の描く世界

本作って、実は寺社仏閣による慰霊が見られないんですよね。
戦友とまた神社で会う――そういうことはない。

特定の宗教施設ではなく、手紙、絵、味。記憶による追悼と継承がなされていると思えるのです。

これもリアルかもしれない。
神社の慰霊碑に、むしろ敢えて行かない遺族も知っています。

そこに戦死したあの人がいるとはむしろ思えない。
静かに、自分なりにやり方で追悼したい。
本作を見ていると、そういう思いをどうしたって感じるのです。

戦争経験者である山田風太郎氏曰く――。
【戦死者は神社ではなく、デパートの地下食品売り場にいるのではないか】と。

彼は、戦争が終わって長い歳月を経ても、デパ地下は天国じゃないか? と感じてしまったそうです。

飢えて、故郷を思い、何が食べたいのか語りあいながら、命を落とした兵士たち。
山田氏の意見は、優しい想像力かもしれない。
水木しげる氏も、食への執着にすごいものがあったとか。

私の知る範囲でも、あの戦争経験者にはそういう傾向がありました。

◆「ガ死ダ 食モノナシ」日記を残して餓死した父を追い、息子は忘れられた南の島に飛んだ

来年の『エール』の予習のためにも、その辺を調べるとよいかもしれませんよ。

ゲゲゲの女房モデル・水木しげる&武良布枝夫妻の生涯「なまけ者になりなさい」

朝ドラ『エール』モデル古関裕而(こせきゆうじ) 激動の作曲家人生80年

奥原家の天丼を、味わえよ

このあと、千遥の天丼を皆で食べます。

「うーん、うまい!」

剛男がしみじみとそう言います。

戦場でも話していたのかもしれませんよね。帰国したら、うちの天丼を食わせてやるぞって。

味を受け継ぐことには、そんな意味もあるのです。

「父さん、今日はうちに泊まってって」

なつはそう持ちかけます。なつはこれから会社に戻るのです。
『大草原の少女ソラ』が終わる来年6月までは、仕方ないのだとか。

ここで剛男となつは、千遥と千夏を十勝に誘います。
ソラがいるような場所だと告げられて、千夏は期待を隠せません。

「夏休みにおいで。みんな待ってるから」

千遥は、柴田牧場にお礼を言いたかったと返します。律儀なのです。

「なんも。じいちゃんも喜ぶ。じいちゃんも心配してた」

出た。道産子の「なんも」だ。
これぞ「なんも」。気にしないでいいよ、そう返す万能ワードです。

なつはそのじいちゃん、泰樹は元気かと尋ねます。

「それがこのところ穏やかで」

今年であの総大将も、91じゃ。そう語られます。
老齢とともに【調略】や【抹殺パンチ】もなくなったのかと思うと、寂しいものがあります。

やっぱり【表裏比興】には暴れて欲しい。そういう思いはある……。

「もう充分じゃ」と、老将が言うとき

そのじいちゃんは、十勝で牛舎におりました。
照男がこう声を掛けます。

「じいちゃん、便利になったべ」

牛を増やそうと思えばできる。ミルカーをパイプラインにするのだと。

すぐにではないけれど、進めてもいいか? と声を掛ける照男。

「好きにやれ。お前に任せる」

「じいちゃん……」

そう言われ、照男も寂しそうではあります。
農協との揉め事の頃は、逆らうだけの若さと元気がありましたもんね。

極めつけはこうです。

「理屈の通らんことはこれまでなんぼでもあったー!」

なつぞら17話 感想あらすじ視聴率(4/19)そのとき爺ちゃんは「お茶が欲しい……」

砂良が「よかったね」と言っても、照男は力なく「うん……」と返すのでした。

本作は加齢描写が巧みであるし、敬意と愛を感じます。
あの手強かった人生の先輩が、素直になって、弱くなってゆく。そういう切なさがそこにはあります。

草刈正雄さんも、ほんとうにお上手で。
見ていて自分の知っているじいちゃんを思い出して、胸がキュッとなります。

富士子は、牛舎でそんな泰樹に声を掛けます。
次の夏には、なつと優、千遥と千夏が十勝に来ると告げるのです。背中をさする手つきが優しいなぁ。

「それまで元気でいなくちゃね」

それからこう続けます。

「一度、医者に診てもらったら? 本当に元気ってわかったらうれしいしょ」

富士子は優しい。
もう衰えているとは言わずに、元気だと証明したいはずだという方向に、誘導しています。

マイナスのことは言わない。ダメ出しをしないのです。
思いやりがそこにはあります。

「もう充分じゃ……」

そう語る泰樹。
いや、もう一度、あなたは総大将になりますよね? そう信じています。

ヒントは、この照男とのやりとりにありました。

高確率でネタバレ。
気にならない方だけどうぞ。

『GALACTICA/ギャラクティカ』というドラマがありまして。
惑星と宇宙艦隊が人工知能のハッキングを受けて、人類滅亡するところから始まります。
ところが、老朽宇宙戦艦であるギャラクティカだけが、オフラインであったため、被害を免れるのです。

技術に頼るということ。
それは、インフラへの打撃や供給のストップ、ハッキングで全滅しかねないというリスクを抱えることでもあります。
そういう教訓と、古い技術の継承者が窮地を救うプロットに、来週はなるでしょう!

本作チーム、SFや海外ドラマも好きなんでないかい?

柔軟で、素晴らしい、そんな父

剛男は、優に『ヘンゼルとグレーテル』を読み聞かせています。

伏線回収がお見事ですし、最高の祖父なのです。

なつぞら91話 感想あらすじ視聴率(7/15)漫画映画は子供のためか?

なつが働くことに文句を垂れるとか。
お酌をさせてふんぞり返るとか。
孫放置とか、孫への容姿ジャッジセクハラとか。

そういうことをしないからこそ、彼は偉いのです。

夫婦が浴衣でやたらとゴロゴロし、妻をわざとらしく絶賛する酷いドラマがありましたっけ。
あのドラマの男性が、こういうふうに育児に関与するシーンって一箇所でもありましたか?

優を寝かしつけたあと、剛男はなつを労います。

なつはこの作品は、特に大変だと言います。

わかる、わかるぞ。
プライドがかかっているんだべな。
自分自身の手抜きを許せない。妥協できない強い決意を感じます。

威張りたいから。褒められたいから。クリエイターだとマウンティングしたいから。
そうではなくて、魂を込めた仕事をしたいからこそ、なつは走っているのです。

イッキュウさんは放映日以外、会社に泊まっている。優とも会社で会っている。

なつは、優を急がせているようだと思うところはあるのです。

「優のために変えたいけど、仕方なくて」

それを聞いて剛男は、優にだってなつの愛は伝わっていると言います。

「優を信じろ。子供は期待しすぎるのもよくない。期待しないのもよくない。信じるんだ」
※続きは次ページへ

1 Comment

匿名

剛男さんはステキなお父さんですね。最弱キャラとして和ませてくれる存在に見せて、実は子どものことを信じて見守れる、立派な父親でしたね。そして、ここぞという時にはしっかり主張し行動出来る人。その姿は物語の中でブレずに描かれていたんだなと、この回を通して確認することが出来ました。
柴田くん、本当にありがとう。のナレーションもよかったです。私も、そうだよ、本当にありがとうと思わず言っちゃいました(笑)
脚本家さんからの、剛男さんへの愛情を感じました。

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