アンリは、花をいける花瓶を喜美子に頼みます。
喜美子はアンリの手をみて、そのサイズをはかる。絵付けは任せるとのこと。
いつもこういうオーダーメイドをするのかと聞かれ、たまにすると答えます。
そのうえでアンリは5万の花瓶を買うと言い出すのでした。
アンリと喜美子
喜美子は、動揺しています。
アンリが気に障るようなこと言ったのかと考え、5万では安いのかと気づきます。あたった、あたりやな。そうはしゃぐアンリに、喜美子はキッパリと否定します。
5万は安くない。高い。お米どんだけ買えるか。うちやったら一人やし、半年もつくらい買える。喜美子はそう言います。
人気の陶芸家となった今、どれほど財産があるのかはわかりません。
けれども、衣食住は地味。うわついたところがまるでない。先生だと気取るわけでもない。浮世離れした人になりつつあります。武志にしたって、もう何かなければお金はかかりません。
ここでアンリは、美味しいワインを飲んだことあるかと聞いてきます。
ワイン?
喜美子はピンときていない。
美味しいものをどうやって作ってはるのかとアンリは考える。どういう人が作っているのか? そう考えてしまう。
陶器を作った先生のこと。どんな人やろ。そう思うているところ。知的好奇心が疼いている!
そう言い、指先で喜美子そのものを聞こうとします。
「なんやドス黒いメロディが聞こえるな」
きみちゃんは、緋色に燃えたぎる紅焔のメロディーでしょうか?🔥🔥🔥#スカーレット pic.twitter.com/UxfDfGVxeT
— 朝ドラ「スカーレット」第19週 (@asadora_bk_nhk) February 14, 2020
喜美子は、ドス黒いは否定しつつ、いやぁなんやすごいなぁと思うていると言います。
おそらく本音でしょう。住田の値段の付け方は「相場」を気にしておりました。
住田は恩人、購入者もお客様。お客様は神様だから、反論はできないもの。本当に好きで評価しているのか。こうなるとわからなくなってしまう。
作品が本当に好きなのか?
何に対してお金が払われるのか?
そういう疑念を喜美子が抱いてもおかしくはない。
喜美子は、自分の作り出すものの価値が変遷するところを実感してきた。
草間が評価した絵を、ジョーは金にならんと一蹴する。
中学で金賞を獲得した絵。その製作過程を知る信作は感心したもの。フカ先生の兄弟子からはもっとすごい賞歴を持ち出されて、口を閉ざされる。
荒木荘でペン立て作りをしていると、大久保からそんなことより金になる内職をしろと勧められる。
絵付け火鉢は、マスコットガールミッコーの宣伝で売れた。
「陶芸好きのただのおばちゃん」そして「陶芸家・川原八郎の妻」から、穴窯の先生になる。
宣伝の仕方で価値が変わること。その虚しさを喜美子はわかっているはず。陶芸あっての生活だとは思う。それでも何か引っかかっているのでしょう。
喜美子は、いつも展示会でうちの作品を買うてくれる方は、お金があってすごいと思うと言います。
うちとは違う人生を生きてきはった方や。そう語る喜美子は、中卒のおばちゃんということもあるかもしれない。過去、そう言ったこともある。喜美子は黙ってはいるけれど、そのことを自覚していないとも思えないのです。
違う人生?
そこにアンリは反応します。
「おもろいやん。違う人生を生きてきて、交わることのなかった人間が、こうやって先生の作品によって出会うんやで。先生の作品がなかったら、うちは今ここにおらん」
芸術品は、見知らぬ人同士の人生を引き寄せる。美しい二人の人生が、交錯している。
美しいかどうか。そう苦笑しつつ、喜美子はうれしそうではあるのです。
お子さんのことをアンリは話します。雑誌で見たとか。
喜美子はホットケーキが好きと書かれていなかったかと、苦笑しています。あんまり当てにならないとそのうえで言うのです。
生々しいといいますか。本作の「脚本家と主演が衝突」という、いい加減な記事が出た後だと、余計にそう思えます。
NHKだって、作り手だって、そりゃいろんな記事をみて、「これはちゃうやろ」と突っ込んでいるんでしょうね。
ご主人が亡くなったと言い出したアンリに、八郎は名古屋で元気に暮らしていると訂正を入れる喜美子。息子もアパートを借りて元気に暮らしてます。そう言い切ります。
「ああ、ほんで先生一人なんやな。うちも一人や、今は独りぼっちや」
そうしんみりと言うと、ええことを思いついたと言い、日が暮れるまでに絶対戻ってくると、黄色いショールを残して出て行くのでした。
喜美子はそのまま待ちます。
夕食も食べる。そして朝になっても、アンリは戻ってきませんでした。
敏春、スーツにバナナをしまう
信楽窯業研究所では、掛井が電話を受けてびっくりしています。
「ええええ〜〜〜!」
電話を受け取ったのは、真奈という女性事務員でした。
病院にいる掛井の奥さんからかかってきて、呼びに行ったらあの調子だと武志に説明。掛井に事情を尋ねると、深刻な表情を浮かべます。
「そやねん。具合が悪い言うてな、病院行ってんねん」
そして、おめでたが判明したのでした。それであんなに喜んでいたんですね、おめでとうございます! ここは喜美子の作品で出産祝いでも。
廊下には、バナナを持った敏春がウロウロしておりました。バナナて……菓子折ではいかんのか?
彼の目線の先には、竜也がおります。粘土をこねる我が子を見守っているのです。
「こうですか?」
「ああそうや」
ここで、小栗と榊という男たちが竜也をからかいます。丸熊陶業の後継は、土触らんでもええ。たくさんおる陶工に作らせたらええ、だってよ。
掛井はここで熱血指導や。
「上に立つ人間だったら、陶芸のことは何も知らんとあとは継がれへんがな。なあ、みんなで丸熊陶業の後継ぎ、育てようやないか!」
そして、かつてはフカ先生の作品に心躍ったきみちゃんも、今では誰かの心を動かす陶芸家になりました🙋♀️#スカーレット pic.twitter.com/Q0cJmNCtPt
— 朝ドラ「スカーレット」第19週 (@asadora_bk_nhk) February 11, 2020
「ほな教えようか」
「コツがあんねん」
「よろしゅうおねがいします」
これは泣いてまうかもしれん――そう言いたくなるほどの名台詞ではありませんか。
二位の永山は廃業したものの、一位の丸熊は健在。そしてその後継者が、こうして地元に根付いてこそ、続いていくと思える。熱い場面でした。
こういうの昨年も見たかったんやけどな……。大学で何したのかようわからん、言動の端々から性格と頭の悪さが伝わってくる。ともかく親父がスゴイと言い張るだけの二代目。そういう昨年にあった食品業界の劉禅よ……。
と、思っとったら敏春が先にすすり泣いてたわ。そらそうよ。
武志が敏春を見つけます。どういう会話をしたのか、バナナを持って室内に入る武志です。
なんだそれはと聞かれると、そこに落ちていたと言います。
「竜也、あとで食べようか」
「バナナ好物なんか?」
「親父の好物です」
この短い会話で、親子関係がわかるといいますか。
敏春は、すすり泣きしながらバナナを食べて(自分の分を残しといたんか!)、スーツにバナナの皮を入れる(汚れんのか?)。あまりにツッコミどころが多い、そんな父の姿を見せます。
笑えばいいのか、泣けばええのか。困るわこんなん。
不良更生物語に父子の愛情まで入れ込む、欲張りなドラマやで。
本田大輔さんの人気上昇中なのか、2月20日『あさイチ』にも出るそうです。本田さんの一皮剥ける出世作になったんちゃうか。若い有能な社長ぶりもカッコ良かったけれど、おっちゃんになってからの魅力も炸裂してます。
役者を育てるええドラマやで、ほんまに!
実はすごい男・住田
川原家で、住田が電話をしています。
小池家に電話して、実家に戻ったらご一報くださいと頼んでおります。そういえば、喜美子って最近こういう電話しとらんなぁ。
勤めることもない。PTAからも解放された。
それでドンと座り、電話をぶん投げた喜美子は武将感が半端ない。そういう世の雑事は任せる。そんな風格がある。
男性ならともかく、女性でこういう造形はおもしろいと思う。
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