わろてんか149話あらすじ感想(3/29)中立国ってドコやねん

昭和21年(1946年)、戦後。

てんと風太がいる北村笑店の寄席は、大阪大空襲ですっかり焼け落ちてしまいました。

そればかりか、かつて仲間だった芸人たちが次々に辞めることになり、落胆を隠せないてん。そこへ現れたのは伊能栞でした。

6年ぶりの帰国。
彼は一体何をしていたのでしょう。

 

開戦直前に中立国へ渡る神の采配

栞は家に手を合わせ、てんが淹れた茶を飲み干します。

おてんちゃん、ナゼか、
「どぐだみ茶……」
と照れています。

ここから栞様、輝かしい軌跡を語ります。

アメリカに渡った栞様は、マーチン・ショウのツテで映画会社に就職。
開戦直前に中立国の支店へ転勤したそうです。

この動きは、私の予想が、微妙に当たったようでして(わろてんか141話あらすじ感想(3/20))。

日系人なら収容所送りってことも十分あり得る状況です。

まぁ、栞様のことですから
「現地で映画話で意気投合した友人のチャーリー君に良くしてもらってね」
とかウンタラカンタラ、簡単に済ませてしまうのかもしれません。

ちょっと違ったのは、アメリカ国内のどこかで庇護されたワケじゃなく、中立国へ逃げ出した点ですね。参りましたw
しかし、具体的な国名を出すとボロが出そうだから、誤魔化した感もハンパないなぁ。

これをドヤ顔で語る栞に、ごめんなさい、嫌悪感しか湧いてきません。

世界中は戦争で燃え尽きそうな状況なのに、自分だけ上手に逃げてピンピンって、どないやねん。
同じくアメリカにいるハズの啄子は、おそらく収容所送りでしょう(あるいはすでにお亡くなりかな……)。
そこに全く触れない本作の冷酷さが痛いのです。

しかし、ここにきてマーチン・ショウの便利さが輝いていますなぁ。

隼也とつばきをくっつけ、栞様を救うために効果テキメン。
具体的に何なのか。相変わらずサッパリですけどね。

 

「横に並んでこそライバルだ」

栞は、資材を探して寄席を再建しよう、と言い出します。

渋るおてんちゃん。
皆食べる物にも困るような状況なのに、死んだ人もいれば、廃業してしまった人もいて、さらには隼也も復員してない状況で寄席なんて……。

と、ここで来ました、栞様の斜め上過ぎるアドバイスです。
「横に並んでこそライバルだ」
って、はぁああああ?

こんなの完全に自分の都合じゃないですか。
お前というライバルがいないとこっちもやる気が出ないから、食えないとか他人はどうでもいいから、奮起しろって?

完全脱力orz

せめて、こういう時こそ、作品の主題をなぞりましょうよ。

「おてんさん、そうはいうけど。キミはいつも言っているじゃないか。笑う門には福来たる、人生には笑いが必要だ、って。こんな時こそ人を笑わせてこそじゃないか?」

これまでの鬱陶しいばかりの、笑いの押し売りはどうしたのよ、ホントに(´・ω・`)

 

地蔵お嬢様と無能お坊ちゃま

こんなアホみたいな励ましでも、何も考えてないキャラたちはスグに動き始めます。

案の定、おてんちゃんは奮起。
ガレキで何かを組み立てています。

周囲に若者数名がいるからマシっちゃマシですけど、50過ぎのごりょんさんがやることじゃないでしょ。
ここのところも無茶苦茶で、加齢動作なんてもちろんやらないし、重たいものを持ち上げる時ではなくておろすときに「よいしょ」と言うし。演技指導をする人おらんの?

「久々に汗かいたら、すっきりしたわ」
おてんちゃんがそう言うのが、ギャグにしか思えません。

額に汗ひとつ滲んでいない。
首に巻いた手ぬぐいは真っ白、肌もメイクしてつやつや。
今日の【わろ点】はここでしたか?

ここでおてんちゃん、しみじみと言います。
「伊能さんには助けてもろうてばかりで」

まぁ、その通りですけど。そこはあんまり気にしなくてもいいでしょう。
なんせ栞だって他人へのタカリ体質が酷く、
「アメリカに行く。密航でもするさ」
とカッコつけながら、結局、北村笑店の社員として行ってますよね? お金とかどうなってたんだろ。

そもそも彼が社長の座におさまったのだって、親の七光りでしかない。
仕事ぶりを見ている限りは「無能栞」様です。

地蔵お嬢様と無能お坊ちゃまの、もたれあいカップルも、いよいよやなぁ。

 

山下はナゼ連れ戻しに来たのか?

栞様は、笑顔で続けます。

戦争に負けたからこそエンターティメントが必要だ、と。
自分の作りたいものを作るんだ、キミももう歩きはじめろ、夢はまだ終わっていない、隼也くんも胸を張って迎えられない、と。

だから、自分の作りたいものって何なの?
何も作ってないじゃない。
いや、もう、どうでもいいから好きにしてください。

ここで、栞の部下の山下が戻って来ます。
おまえらが追い出したんやろと、風太がオラつくのを栞が止めます。

「ぼくはきみたちを咎めない」
まぁ、咎めるも何もないですよね。
映画の赤字が膨らんで会社を追い出さたのは然るべき処置です。

どんな状況でも利益を出すように主導するのが経営者だとしたら、栞はとてつもなく無能なワケです。

フシギなのは、山下はナゼ連れ戻しに来たのか?ということ。

自由に作れる状況なら、面白い映画がデキるって?
ムリムリ。
むしろ、面白い作品というのは、規制がかかる中でも、知恵を絞り、表現に深みを与えて、視聴者にメッセージを届けます。
条件次第で【作れる・作れない】なんてのは、下手の横好きシロートなんですよね。

まぁ、結局は、彼がお坊ちゃまだから迎えに来たんでしょうね。
伊能家から「あのバカボンをなんとか首輪つけておかんと、出資せえへんで」とでも釘を刺されたというのなら、非常に筋が通っております。

それにしても、山下さん以下、ガレキの中を歩いて来て、なんで全員『キングスマン』レベルのパリッとしたスーツなんだろう。
ゲートル巻いている人や国民服の人がいてもおかしくないだろうに。

 

資材提供と引き換えに手伝おう

栞は「ぼくは北村の人間だ。あくまで北村の人間として手を貸す。そのかわり、北村に資材を提供してくれ」といいだします。

うん、いい落としどころだ。
無能な栞に映画事業を引っかき回されたら、今度はGHQから大目玉を食らいかねません。

北村で用意した人畜無害なポジションで、おてんちゃんと恋愛妄想ごっこでもしていてもらうのが、皆の幸せでしょう。

あと数回ですからそうでもないといけないのでしょうが、おてんちゃんの北村再興って空から資材が降ってくるみたいな話ですね。
汗ひとつかいていないうちに、どんどん話が進んじゃう。

ここで、青空会議をするおてんちゃん。

うちらには何もない。
せやけどこの青い空がある。
頭を塞ぐものは何もない。
空に向かって伸び放題や。
伸びる、伸びる。

って、何すか、この駄ポエム。
アタマを塞ぐもなにも、空からボロボロ、棚ボタが落ちてきて取り放題じゃないですか。

ここでも【エエ場面用BGM】が流れてきていますが……。
最終週のおてんちゃんは何もかもがぶっ壊れているとしか思えません。

ここで風太が「てんがはじめて笑うたぁ~~」とか泣き出すものいたたまれないです。

風太も何かが壊れている。

「ここがぼくたちの始まりだ。焼け跡だからできるよさがある」

栞様もずっと壊れている。

付き合いきれん。早く終わって欲しいorz

 

リリコとシローが演奏してた!

おてんちゃんは、ある夕暮れ突然走り出します。

遠くから聞こえてきたアコーディオンの音色の先には、リリコとシローがいました。

うん、よかった。
リリコのレパートリーに『リンゴの唄』が追加された。やっと一発屋卒業やな。

しかし、風鳥亭に音が聞こえてくるところまで来ていて、風鳥亭には顔を出さないリリコアンドシローってフシギですね。
楓なんて、重たい原稿持ってやってきてたのになぁ。

おてんちゃんはリリコに抱きつきます。
「うち、笑いの神様を信じるわ!」

はいはい。
本当に「自分たちさえ無事であればいい」感じが漂ってきますよね。
サバイバーズ・ギルト※とか無縁の性格だろうなぁ。
※戦争や災害で生き残った人が、死者に対して感じてしまう罪悪感

「風太が命がけで守った看板もある! 大阪、いや日本の、笑いの一丁目一番地の再開や! 新生北村の旗揚げや!」
そうリリコとシローに宣言するおてんちゃん。

看板はそんなにいいエピソードとも思えません。
あくまで風太が守ったものであり、おてんちゃんは何もしていない。

しかもおてんちゃんは、せっかく守った風太に
「アホ、そんなもんに命を張って」
と冷たく言い放っています(実際は、危ないからそんなことしたらアカン!ということだったのでしょうけど、まるでそういう風には伝わってこなかったシーンです)。

 

今日のマトメ「創造神に愛されただけの男」

昨年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』で、まだ幼い虎松(井伊直政の幼少期)が、泣きながら怒る場面がありました。
囲碁の勝負で、家臣が自分に対してわざと負けていることに気づいてしまったのです。

ナゼここで虎松の話を出したかというと、栞はこの時点の虎松以下の精神年齢ではないか、と気づいたからでして。
要するに、周囲がわざと負けていることに気づくほど成長していないのです。

伊能栞という男が、無能であることはあきらかです。
しばらくの間、彼のオフィスには誰もおらず、仕事に使うモノすらろくにありませんでした。

その状況を冷静に見ますと……。
親の七光りで無害な名誉職を与えられていただけの人間ではないか?
それが映画制作に口を出すようになった結果、経営が傾いて追い出されたのではないか?
というのが真相のような気がします。

それでも、親会社の親族が、
「さすがに路頭に迷わせるのも可哀想だから、持て余し気味のマーチン・ショウ関連会社の無害なポジションに引き取ってくれ」
と、デキる山下に伝えた――これならばスッと納得できてしまう。

そういう親のバリアに守られて、しかも鈍感な人って、全然気づくことなく、
「ぼくは自分の実力でここまで来たんだ!」
と天狗になりがちですよね。

おてんちゃんは謎の神のご加護。
栞は親の七光りというバリア。

二人共、この世界の創造神に守られているだけなのに、それには気づくハズもなく、ヌクヌクと道楽に興じる日々。
本作はそういう作品だったと思います。

モデルとなった吉本せいも、小林一三も、もはや何も関係ないのです。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【関連記事】
吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

2 Comments

匿名

なぜ、スイスと言わないのか。何か不都合があるのか?

匿名

栞が藤吉の写真にお供えしたチョコにスイスと書かれていたので、おそらく永世中立国スイス帰りなんでしょう。どうでもいいですが。
あと楓さん、青空会議にしれっと参加してますが、前の日に親の面倒みるとか言って断ってなかったですか?事情が変わったとか説明ありましたっけ?
あと数日で終わるし今更どうでもいいですが。

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