世の中がバブル景気で浮かれる、平成最初の年、1989年。
岐阜県東美濃市ふくろう商店街にも、ミラーボールのようにギラギラした【ぎふサンバランド】計画が迫ります。
そんな中、高校最後の夏を、甘酸っぱく生きている楡野鈴愛。
恋とは無縁の鈴愛にも、いよいよ運命の出会いが!?
もくじ
小林は地元の進学校・西高の生徒だった
「どうしたあ、楡野〜、今月2回目の遅刻だぞ。何考えとる?」
そう山田先生から叱られつつも、鈴愛はボーッとしています。
新聞部の小林は、実は毎日あれから鈴愛を待っていました。しかし、勇気が出せずに声をかけられないことの連続で。
今日この朝、勇気を出して声を掛けてきたのです。
学帽の校章は、地元の進学校・西高のものでした。創立記念日だけ被っていた、と説明する小林です。
小林は鈴愛を「自転車で送ろう」と言っておりました。
西高は鈴愛の高校とは逆方向なのに、そう言ってくれるのです。左耳のこともあって断る鈴愛ですが、彼の誠実さ、優しさはバッチリ胸に伝わってきました。
ちなみに、小林が鈴愛を自転車に載せるのは二人乗りですね。
現在、自転車の二人乗りは厳しい目にさらされており、二人乗りする高校生という描写は、ちょっとワルという印象かもしれません。
当時はそんなことはなく、むしろ甘酸っぱい青春の定番でした。
そんな青春ドストレートを味わっている鈴愛ですから、ニヤニヤしてしまい、遅刻で怒っている先生の話なんて1ミリも聞いてません。
「お前なんか、猿のくせに」
「こんな可愛い人、見たことない〜ステキな人、見たことない〜、どこかの国のお姫様みたいだって」
律の前でも小林の言葉を繰り返し、浮かれる鈴愛。
そんなわけないだろ、と突っ込む律に、お姫様以外は本当だもんと鈴愛は言い返します。
「お前なんか、猿のくせに」
ここで、生まれた日に律が鈴愛を猿みたいと思った場面が流れます。
覚えているの? まあ、胎内記憶ある人もいますしね。
それとスゴい細かいことですが、このシーンで流れていた「猿~♪」ってBGM、『さよなら人類』の「たま」の歌声に似てませんでした?
あるいはそういう曲があったり?
一昨日ぐらいの放送で「イカ天」(三宅裕司のいかすバンド天国)について触れていたので、出身の「たま」が出てもおかしくないかなぁ、と。昨日はハウスマヌカンでしたし。
鈴愛と律を意図的に二人っきりにしてみたら
一方、ナオはブッチャーと二人でいます。
「あの二人は同じ日生まれ、いってみれば運命の相手。敢えて二人にしたら、山が動くかもしれん」
って、ナオちゃん、ちょいちょい高校生っぽくない面白い言葉遣いを入れてきますよね。
そんなわけで、この二人は「ともしび」には行かないのです。
「俺は【ともしび】でお好み焼き食いてえ〜」
ナオに菓子パンをもらったのに、不満そうなブッチャー。
いくら食べても気がつけば腹が減っている、そういう年頃です。
とはいえ、ブッチャーもあの二人を気にしておりまして。
いい起爆剤になるかも、と考えています。
「ナオちゃん結構機微あるな」
とブッチャーも小難しい言葉を使いますが、ナオには通じていない様子です。
いいねえ、この二人。友達思いです。
150年前の建築物が残されている明治村
「ともしび」には二人がおります。
鈴愛は、日曜日に明治村でデートするんだ、と衝撃の一言。
「入鹿池でボートに乗ると別れるぞ」
そう警告する律。
そのあと、若いカップルだから別れる可能性高いんだよな、と付け加えます。
ジンクスの本質をついてきていますね。
それにしても明治村か〜。
明治村を、明治村そのまんまの設定で、しかも朝ドラが出してくるというのは面白いですね。
明治村は岐阜に近い犬山市にある野外博物館、テーマパークです。
明治時代の建築が残されていて、レトロなお土産やお食事も楽しめます。
現代モノで出てくることは珍しいのですが、戦前舞台の朝ドラはほぼ確実にここでロケをしておりまして。前作『わろてんか』でも、明治村ロケの場面がありました。
律にモテる女のコツを聞き始める鈴愛。
それは修行が必要だ、と重々しい口調で律は語り始めます。
「えぇ〜ほんとですかぁ〜しんじらんなぁ〜〜い」
そうベタベタと甘い口調で言い出す鈴愛。これが修行の成果か!
「方向間違っているな。【ねるとん】の見過ぎかも」
さすがに軌道修正をはかる律。
女はあまり喋らず、かわいらしく相槌を打つ。そう指導される鈴愛。
しかし、そのぶりぶりぶりっこを見た律は、
「キモいな」
即却下。
鈴愛本人すら自分でもキモかった、って思ったと言い出します。
「鈴愛はしゃべると面白い。でも女の子は、面白くなくていい。機関銃みたいにしゃべるな。あとラーメンの替え玉を何玉もするな」
「ラーメンの替え玉も駄目!? そんなら恋なんか、せんでもいい」
シュンとなる鈴愛。
律は一玉くらいなら、と言い出します。鈴愛はモリモリ食べる子なんですね。
オレはモテる! オレもモテる、オレもオレも!
家に戻った鈴愛は、晴と一緒にデートの服を選んでいます。
まるで自分がデートに行くように、浮かれる晴。
そこへ宇太郎が通りかかって、あわてて仙吉のいる茶の間にすっ飛んで行きます。
ここで、宇太郎、仙吉、草太による男だけのトークに。草太はこれまでのいきさつを喋ります。
「西高。おう、頭ええな」
ちょっとずれた反応をする宇太郎から、動揺が伝わってきます。
「大丈夫か、鈴愛一人で」
「デートなんだから一人で行かせてあげてっ!」
これまたすっとぼけた仙吉に、即座に突っ込む草太。このとぼけた会話に味があります。
ここで草太はモテる、という話題になります。
姉のいる男性は、女性への気遣いができるし、女性に過剰な期待をしないため、モテると言われています。
草太がモテるのは見ていればわかります。鈴愛に対する態度が、子供の頃から優しかったからねえ。
ここでナゼか対抗心をもやし、モテ自慢を始める仙吉と宇太郎。呆れつつも、ナレーションの廉子さんも参戦。廉子さんはそりゃモテモテのかわいい人だったはずです。風吹ジュンさんですからね。
「命短し、恋せよ乙女」
そう締める廉子さんでした。
4600円の300着で138万円も勝手に発注
そしてデートの朝。
「お土産買ってくるね!」
そう張り切る鈴愛に、晴はデートなんだからお土産はいらないよ、と諭します。
この鈴愛ちゃんのデートファッションが、これまたなんとも言えません。
髪の毛につけた星型のヘアピンが、おしゃれに疎い女の子が背伸びしてやらかす系のダサかわいさ、不思議ちゃんぽさ。
スタイリストさん、お見事です!
そこへ、血相を変えたナオちゃんの母・幸子が血相を変えて、つくし食堂に駆け込んできます。
手にしていた箱の中には、フリーサイズ、ロゴ入り、ダサい、誰でもサンバを踊れるユニフォームが入っていました。
ダ、ダサい。衝撃的なダサさ!
「山田ユニフォームさんからこれを300着も! 4600円の300着で138万円も勝手に発注した!!」
激怒する幸子。夫の五郎は、朝から釣りに出かけています。
ちなみに岐阜県は清流の国ですから、釣り愛好者が多いのです。
「あの女狐め〜〜!」
怒りの矛先は、商店街の男たちを骨抜きにする小倉瞳へ。
晴は、
「うーちゃん! うーちゃん!」
と奥へ向かって行きます。
さわやかな青春と、このドロドロした大人のやりとり。この対比が面白いのです。
窓の外からいつもの笛の音色が聞こえてきたら
そのころ、律は心ここにあらずといった風情。心配そうな和子。
ピアノで『ふるさと』を弾き始めるものの、鍵盤に突っ伏してしまいます。
笛の音色が聞こえ、思わず窓を開けにいきます。
鈴愛の笛!
……ではありませんでした。鳥の声です。
そう聞こえてしまったんですね。
そして明治村へ。
小林くんのファッションも、勉強ばかりで服装なんかにはとんと疎い優等生が、頑張って背伸びして迷走している感がある!
初デートの初々しい高校生カップルそのものです。
デートは順調に行くはず、と律すら信じていたそうです。
ただ、つけ耳をバッグに入れていることを誰も知らなかったから、とナレーションが入ります。
何が起こってしまうのでしょうか。
今日のマトメ「偽装した鈴愛を、律自身はどう思う?」
先週ラストは子役の熱演のあまり、名残惜しさすら感じたのですが。
永野芽郁さん以下皆さん素晴らしくて、もう何もいうことがないです。
永野さんは綾瀬はるかさん系というか、可愛いのに天然不思議ちゃん枠で、鈴愛のキャラクターにぴったりです。
ドロップキックしたり、パンを何個も食べたり、「替え玉できないなら恋をしなくていい」と言い出したり。
確かにかわいいのにモテそうにない、そういう女の子がはまり役だと思います。
最終回まで飽きずに見られる気がしてきました。
そして今日、鈴愛はちょっと成長しました。
最初は微妙と思った小林のことを「いいかも」と思えたのは話してみて人柄がわかったから。
シチュエーションやスペックではなくて、中身を好きになり始めているのです。
その一方で、律は鈴愛らしさではなくて【理想の彼女らしさ】の中に、鈴愛を押し込める方法、デートのコツみたいなものを伝授しているわけです。
替え玉しない、喋らない、そういうのはダメだと言いますけど。
そんなふうに偽装した鈴愛を、律自身はどう思うのでしょうか、という話です。
世間から見て、モテ基準からみて、そういうことではなくて鈴愛のありのままの性格が好きなのに、そこに気づかないでピアノを弾いてしまうわけですよ。
こういう、スペックで比較してダメだと決めつけてしまうのは、実は鈴愛も経験がありまして。
和子と比べておやつがダサい、理想的な母親じゃないと母娘喧嘩で晴にぶつけています。
恋愛劇が得意な脚本家さんだけに、なかなか深い話だと思います。
外側のスペックや世間的な基準ではなくて、相手のよいところ、本質こそ愛すべきじゃないの、というのが何度か出てきているわけです。
このへん、本当に、前作と真逆なんですよね。
前作は、
【金持ちだったり、美形で、ハイスペックだけど中身は空っぽ。あるいはドクズ】
そんなキャラクターが、理想の恋愛相手として出てきまして。
そういうタイプのダメ人間たちが歯の浮くようなセリフを連発しているだけでした。
本作は、きちんと描けてますよね。
しかも人だけじゃなくて、町や故郷といった単位で考えてもそうでして。
キミカ先生がサンバランドに反対して、ふるさとを守りたいと語ったあたりにも、そうした気持ちを感じます。
ふくろう商店街という地味で素朴な故郷。
世間的な基準からすればさびれゆく田舎町かもしれないけれど、そこは出身者からすれば、唯一無二の愛すべき場所です。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
同じものを見ても、感じ方は人それぞれで良いと思っていますが、時代考証がいい加減で浅はかな脚本にうんざりと仰っている方は、具体的な根拠を管理人さんのように提示してください。私もばっちり主人公と同年代ですが、時代考証がいい加減だとは全く感じておらず、どうしてそのような感想に至ったかの道筋を知りたいです。自分の感想と異なっていても、きちんとした意見には納得します。脚本も近年の他ドラマと比べても、説明台詞を使わずにキャラクターをきちんと描けていて(朝ドラ前作や今の大河は比較対象にもなりませんが)、今のところはかなりの秀作だと思っていますが、脚本のプロの方にはまた違った見方があるのかもしれませんので、どの点のどこが悪いのか具体的に教えてほしいです。
就職したてで、地方都市にいたもので、当時の空気感がバッチリだと、うなりながら見ています。
歌も小物も気が利いていて、
時代考証もきちんとしてる。
毎日すごい、と感心しながら、
ホロリとしてしまう。
作品も、本レビューも、
頑張っていただきたい。
朝ドラの東京制作班の方々の中には、旧車好きな方か、そういう方に繋がりの強い方がおられるようですね。
2017年の『ひよっこ』でも、主人公の故郷のバスに、本物のボンネットバス保存車を使ったり、時代が下ってワンマン化された時期のシーンにも、やはり本物のワンマン化初期のバスの保存車を使ったり。
就職した東京の工場や街角のシーンで出てきたトラックや3輪トラックも、メーカーや博物館の保存車動員という感じで、その時代時代の車が、しかも何台も登場していました。
見ている私もマニアですが、「ここまでこだわるか!」と驚いたほど。
今回の『半分、青い』でも、主人公が通学に使っているバスは本物の昭和50年代中後期の保存車ですし、小学生時代の商店街の店先には、ヤマハの「ソフトバイク」パッソルの保存車とおぼしきスクーターが。
これからはバブル期の時代になりますが、次はどんな保存車が繰り出されてくるか、楽しみです。
「時代考証がいい加減」
「脚本が浅はか」
『わろてんか』のことかと思った(笑)。
番組に、どんな感想を持とうと自由だし、皆が皆、この番組を「良くできてる」と言わなきゃいけないわけでもありません。
「出来が悪い」と思うのも自由だし、そうコメントするのも自由でしょう。
ただ、コメント欄に書けば、それを見た人がどう感じるかもまた自由なのですし、当然、「このコメントには同調できない」「なぜこんな感想を持つのか理解できない」といった受け止められ方をすることも起こります。
コメント欄に書き込むからには、それは当然の前提としておいてもらわねば。
私は、やはり作中の主人公らと同世代ですが、「違和感なく番組を楽しんでいる派」です。
ここ数年朝ドラは録画で見続けていますが、今回の番組は、考証も脚本も良くできていると感じます。
いかに「自由」とは言え、根拠も示さず「出来が悪い」と言い張り、「出来が良いと感じるのは理解できない」とこれまた根拠も示さず書かれてもねぇ…
リアルタイムの方々が、あれが正しい、と言うのが理解できませんが、まあいいです。別に誰に理解してほしいとか言ってるわけでもないし。
80年代初め頃は賑わっていた商店街が、80年代末頃には郊外の大型店等に押されて賑わいを失う。そして怪しげな開発話に皆踊らされそうになる。
これは、当時の雰囲気としてあちこちで起きていたことでした。住民も、開発話に前のめりになってしまった人と、警戒する人とで分裂してしまい、地域社会が裂かれてしまうことも。
本作でも、ブッチャーの父あたりにそういう悲劇の影が漂い始めています。そんな空気の中で、主人公たちは高卒を迎えるわけで、「どうなるかな」と、当時を知る世代としては不安も感じています。
主人公らの微妙な思春期の空気感の描き方も巧みですが大人たちの事情もまさに時代の空気をよく描いていると思います。そんなわけで、来週も見逃せません。
本作を「時代考証がいい加減だ」とか、「脚本が浅はかだ」とかいう意見はどうにも理解できません。『西郷どん』レビューのコメント欄と間違えてるんじゃないの?と言いたくなる程。
とても面白かった‼普通に笑えたし。
書店の店頭で、『わろてんか メモリアルブック』なる本が。
あんな作品の「メモリアル」…なんて無意味で悪趣味な…と思ったけど、
「メモリアル」 ≒ 「お墓」
あ、そうか。なるほどwww
↓ (修正)
私は主人公の1年前の生まれ。
このドラマの「時代考証がいい加減だ」という評には大いに疑問を感じざるを得ない。
私は主人公の1年前の。そんな私には、このドラマは実に的確に1980年代の流行や日常を表現していると思える。どこが「いい加減」だというのか?
主人公らの小学生時代、商店街のシーンで店先などにさりげなく停めてある、当時「ソフトバイク」と称して人気商品となっていたヤマハのスクーター。実に懐かしいと思った。
TVを見ているシーンにせよ、会話のなかに出てくる当時のトレンドにせよ、主人公らの成長・時間の経過と共に変化させながら、よく当時を再現していると思う。この再現力は今後も発揮し続けてほしい。
私も、きちんとした朝ドラが戻ってきて、清々しい気分で日々過ごしています。
笑いの取り方が、『ひよっこ』とも似て絶妙。「笑いを取る」と「悪ふざけ」の区別もついていなかった(しかもよりによって、「笑い」をビジネスにした女性がモデルだった筈なのに)前作とは大違いです。
月~土曜は朝ドラを録画して楽しみ、日曜は夜ドラマが楽しみ という生活が半年ぶりに戻ってきました。
ただし、日曜夜の楽しみは、もちろん『西郷どん』なんかではありません。11時の海外ドラマ枠の『オクニョ 運命の女』です。
『西郷どん』なんかまともに見てられるか!!
『わろてんか』&『西郷どん』は、数年おきに現れるNHKの失敗作コンビですね。
大人編(まだ高校生設定ですが)のスタート、順調な滑り出しですね。武者さん同様、これならいけると私も安心しています。一般論としてカッコよすぎるイケメンがパートナー役だとドラマ展開は難しくなりがちです。視聴者の共感を呼びにくくなり、どうしても人物像が浮いてしまう。かといってカッコよさを建前上否定して消そうとすれば不自然でやはりダメ。前作ワロテンカがまさにその典型例でした。夫の藤吉は無理筋な三枚目キャラを作り損ねてわけの分からんちぐはぐ男に。そして伊能栞はんはあまりにも浮世離れしたスーパーマンでこれまたアウト。ただ、稀代の名優高橋一生の演技力で辛うじて破綻を免れたというところでしょう。それに対して本作は、脚本も演出もさらに佐藤健さんの役作りの努力も共にいい感じの雰囲気をうまく醸し出していて、嫌味感・ぎこちなさ感どちらも無く、バッチシです。まともに楽しめる朝ドラが帰って来て本当に良かった。
私は管理人さんと違い、あまりのくだらなさに脱落しました。主人公とほぼ同じ年代なんですが、あまりに時代考証がいい加減です。曲とそれらしい雰囲気さえ流せばいいという、浅はかな脚本にうんざりだし。月9のできそこないみたいな話になってきました。てなことで、このサイトを見るだけにします。