まんぷく 13話 感想あらすじ視聴率(10/15)『あさが来た』で鈴さんのお口直し

「僕は無実です!」ってのはわかったから

このあと、立花は収監先でこう言っております。

「僕は無実です!」
稀代の発明をすることとなる立花からも無能感が漂ってきました。

「誰かに証言させれば身の潔白を証明できる! いいから会社の人間を呼んでくれ!」
とでも、看守に訴えればマシなんですけどね。

まぁ、加地谷も憲兵の言葉を鵜呑みにして、立花を全然信用していない、という状況ですが。

無実の罪で収監され、知力と度胸の限りを尽くして切り抜けようとするお話ならば、『ジョジョの奇妙な冒険』第六部あたりがオススメ。
脚本家さんにお勉強してもらいたい。

にしても、憲兵描写の無茶苦茶なことよ。
今週どこかでジックリ見てみたいと思います。

明日以降、そこに突っ込むとして、今朝は別の点に注目してみましょう。

 

「ベグデル・テスト」を知ってるかい?

「ベグデル・テスト」っていうものがありましてね。

私のドラマ批評スタイルは、イギリス人モータージャーナリストであるジェレミー・クラークソン氏がお手本と先日申し上げました。
実は他にもありまして。海外の批評基準も参照しています。

私の好き嫌いだけで判断しているんでしょ、というツッコミも聞こえてきそうなので、そういう基準もご説明申し上げたいと思います。

ベグデル・テスト」およびその派生テストがそのひとつとなります。

【「ベグデル・テスト」の基準】
1. 少なくとも2名、女性が出てくる。
2. 互いに会話をする。
3. 話題は男性以外のものである。

上記の基準に照らし合わせた場合、女性が主役の朝ドラで、まさかこれをクリアできない作品はないと思われるでしょう。
朝ドラのトータル放映期間は、映画よりはるかに長いわけで、クリアできない方が異常です。

それが本作は、この基準にあてはめると、かなりグレーな領域に踏み込むと感じてしまうのです。

本作の女同士の会話って、発言者が極めてバカであることと、男のことしか考えていないものばかり。
戦時中なのに、変わりゆく日常生活のことすら真面目に考えない――そう描きたいように思えます。

「ホワイトウオッシュ」めいた台湾ルーツ抹消の時点で、本作はダメだと諦めておりましたが、ジェンダー的な観点から見ても、こりゃイカンなぁ、と。

ちなみに、こうした基準に対してのよくある反論として、
「ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)なんか気にするから、作品はつまらなくなるんだ! そういうことを無視してこそ、面白くなる!」
という意見があります。

いやいや、海外コンテンツはそこを乗り越えてこそ、安易なパターンに陥らない良いものが作ることができると考えています。

斬首、爆殺、全裸がバンバン出てくる『ゲーム・オブ・スローンズ』はポリコレをやぶった作品という的外れな評価が時折出てきますが……あの作品だってHBO側が充分考えていますってば!

反論としては、
『マッド・マックス 怒りのデスロード』

『パシフィック・リム』
で充分可能だという気がしますね。

前者はジェンダー論でやらかさないよう、専門家監修を受けております。

 

後者は、ヒロイン名から採用された「マコ・モリテスト」が生み出されたほど。

 

んで。
こういう作品、無茶苦茶面白いじゃないですか!

結局、現在の基準を無視して作られた作品は、差別主義者を喜ばせるだけの陳腐なものに成り下がる。そういうものです。
私が本作を【青いピル】と評した理由でもあります。

そしてそんな世界基準を無視すればするほど、日本の作品は海外から遅れ、失笑され……COOLと言い張る日本産コンテンツも弱くなることを少しは考えていただきたい。

 

朝ドラヒロインの悲しいこと

「女の子がやってはいけない一番悲しいことは…」エマ・ワトソンの”名言”拡散、でもソースをたどると… 

ここから彼女の発言を引用します。
朝ドラヒロインについても、まったくこの通りだと思います。

もし、男性として認められるために男性が攻撃的になる必要がなければ、女性が服従的になるのを強いられることはないでしょう。もし、男性がコントロールする必要がなければ、女性はコントールされることはないでしょう。

これは、朝ドラについてもあてはまるのではないでしょうか。
なぜなら実在したモデルから、不自然な改変がなされることが多いのです。

・知能が大幅に低下したとしか思えない言動
・モデルにあった気の強さや意志強固な部分がぼかされる
・当時の女性としては不自然なほど、幼い服装や髪型にされる
・「女性の権利」向上のために活動していたことが抹消される(『花子とアン』が顕著)
・女性が外で労働することにより、育児が疎かになり子供がひねくれる描写が入る
・女性が外で労働することが否定的に描かれる
・外で働くけれど、ヒロインは本当は良妻賢母型だというアピール
・女性同士が程度の低い対立をする(嫁姑関係等)

なんでこんな能天気で、ヘラヘラした女性が成功できたのか?
そんなふうに思ってしまう作品ばかりです。
これはいくらなんでもモデルに失礼だと唖然とさせられることもしばしば。

これを男性主人公のドラマでやられていたらどう思いますか?

出来の悪い大河はやらかしますけど、それにしたって袋だたきですよね。
ところが、朝ドラなら問題にすらなりません。王道ヒロインともてはやされるほどです。

理由は想像がつきます。
ちょっとおばかさんで、良妻賢母型で、おとなしくて明るい女じゃなきゃ、朝ドラヒロインとして愛されないってことでしょ?

一方で、自分の意見を言い、いやなものはいやだと言い張る朝ドラヒロインは、性格が悪い生意気な女であると執拗に叩かれる。

これって悲しくないですか?
自分の意見があり、いやなものにはいやだと言い張る女が、そんなに嫌いなんですか?

私は朝ドラのそういうところに、悲しみを感じてしまうのです。

※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください

U-NEXTでスグ見れる!
『まんぷく』や『半分、青い。』全話ほか多数の朝ドラ・大河作品を視聴できます。
スマホでもOKですよ。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

以下は、まんぷくモデル安藤百福氏の生涯です。

まんぷくモデル安藤百福の生涯96年をスッキリ解説! 日清食品の誕生物語

ラーメンの歴史は明治維新後にスタート~日本の歴史と歩み、世界の食となるまで

 

10 Comments

Susuka

ポリティカル・コレクトネスがテレビドラマや映画に与える影響ですが、私は、「描きたい題材を取り巻く現実と、制作現場を取り巻く現状との間にどのように折り合いをつけるか」という点が重要であると考えます。
前者は、幕末の混乱の中での人々の葛藤や選択、戦時下での総動員体制が国民生活を圧迫していった展開です。一方後者は、「当時の価値観は、現代と比べて相当に受け入れがたい」「朝の時間帯のドラマなので、あまり生々しい描写はちょっと…」といったものです。私が考える「いい作品」とは、制作現場が外部からの圧力にどのように折り合いをつけて(ある程度ははねのけて)、本当に描きたい「当時の人々」を描けるか、にかかっています。
本作に置き換えると、主人公が受けた拷問は、実際の手順をそっくりそのまま描くと、編成部の立場では「朝の時間帯」という点からコード(規則、自粛ライン)に引っかかるでしょう。戦時下の生活なども同様の点から引っ掛かります。「台湾隠し」も、あるいは何らかの「自粛規定」があるのかもしれません(誰得?)。また、いわゆる「PC批判」のように、配慮が行き過ぎてがんじがらめになってしまうこともあるでしょう。
「面白くない作品」は、制作サイドが「史実はわかりにくいから自粛しよう」「これはまずいからやめておこう」「可能な限りマイルドにしよう」「抗議を受けたらまずいから、できるだけ避けよう」と過度に守りに入ってしまって、結果、一応平常運転だけど、見ていて全く面白くないし、制作サイドが全く楽しめない、何も得るところのない作品になってしまいます。
一方、「面白い作品」は、そのような「自主規制」に抵抗し、打ち破ることによって人気を得ています。豊臣と徳川の化かしあい、薩長と会津のつばぜり合い、真田一族同士の別離や愛する家臣を自ら手にかける直虎の悲しみなど、視聴者に頭をひねらせたり手に汗を握らせたり感情を揺さぶらせたり、そのような作品が視聴者を引き付けるのではないでしょうか。西郷どんからあくどさや表裏をそぎ落として、西郷が行くところ時代は明治へと自動的に進む、などという展開を誰が望むのでしょうか。
武者さんが挙げられたジェレミー・クラークソンの「トップ・ギア」も、車のレビュー以外のコーナーでは、車をビルから落とすは水に沈めるは、BBC(英国の公共放送)とは思えないほどのハチャメチャ展開です。ジェレミー自身も、際どいジェンダー・ジョークやエスニックジョークを連発しています。それが人気番組になったのは、車に興味のない人々を含めて「これは面白い!」「ジェレミーは本気だ!」と思わせたからでしょう。もしこの番組が、品の良いアナウンサーが車の性能をひたすら伝達するだけの番組だったら、車のマニア番組の域を出ることはなかったでしょう。嫌われることを恐れない作品だからこそ、目の肥えたファンを獲得できるのだと思います。
本作については、毎日15分という性質上、惰性でチャンネルを合わせて、15分流しっぱなしにする視聴者が多いでしょうから、近年の相場から大きく下げることはないでしょう。しかし、名だたる俳優を1年間拘束しておきながら、ただのBGMを制作するという苦行を強いるということについて、制作者は考えたことがあるのでしょうか。

塩ラーメン好き。

放映当時は酷評しながらも、
ぺっぴんさんの方がまし、
と武者さんは仰りたいのかと。
あれだけ、イライラむかむかした
べっぴんさんが、朝の清涼剤になるなんて。
ドクターXがよかったせいで、
べっぴんさんのヒロインの夫も、意外とよく見えてしまう今日この頃です。

Zai-Chen

そもそも、アルミ合金であるジュラルミンって、刃物の材料に適しているのでしょうか?

撫育方

(追記)
このサイトの安藤百福氏の記事を見ると、安藤氏の関わっていた会社は戦時中、当局の命令により、自社製品の製造は止めて軍需工場の下請として部品を作っており、その中で、保管していた原材料の横流し冤罪事件が起きたとのこと。

ドラマ本編で同じように描けば良かったのに、何で「根菜切断器」「その材料はジュラルミン」なんて余計な創作を入れたんだか。

理解できない…

撫育方

『べっぴんさん』では、戦時中、「企業整備」の名のもとに企業の強制合併などが行われ、経営者にとっては心血を注いだ企業が奪われていくところが描かれていた。
戦争の被害と言うと、人的な面がすぐに思い当たるけれど、こういう面もあることに、改めて気づかされた。

今回の、「子供じみて泣きじゃくる主人公」などは、全く異次元のものに感じる。

ドラマ制作者らのスキル低下は目を覆わんばかり。

孤独の胃弱

ジェラルミン、ジブリ映画『風立ちぬ』にも出てきましたね。飛行機の開発に使ってました。

『風立ちぬ』は『まんぷく』より少し前の時代(零戦開発者の話)ですが、
結核、貧困、憲兵に疑われる、技術者が主役、など要素要素がかぶってくるので比較してしまいます。

私が歴史に疎くてジブリ贔屓なのを差し引いても、緊迫感表現が雲泥の差です…

ビーチボーイ

脱落宣言したものの、どの程度ひどいかのぞき見したくなって今朝も野次馬根性で見てしまいましたが、
立花が憲兵隊に引っ張られてドラマが少しは引き締まるかとかすかな期待もあったのですが…
見てみりゃ、ふぎょぎょ…な、なんじゃこりゃ、もう腰を抜かしましたわ。
顔をぐしゃぐしゃにしてたちばなずゎーんと泣きじゃくるだけの幼児福子。
ホテルの同僚達は、戦時下だというのに自分の色恋に夢中で福子の話を聞いてやる暇もない。母をはじめ家族達はとんちんかん反応するのみ。二人の親友だけが辛うじて話を聞いてはあげるのだが、「福子、泣いたらあかん」とあやす以外何の役にも立たず。
こ、これが『ドラマ』なんですか?
NHK朝ドラという日本の朝の看板番組を、こんな小中学生の文化祭の劇以下のアホみたいな子供芝居にしてしまった脚本家や大阪局制作陣、どうするつもりなの一体?
ジュシンリョー返せ一揆が起きますぞやがてこれは。俺、知~らないっと。
もう何も言う言葉ありませんこれ以上。

独立艦載攻撃連隊

ジュラルミンが当時の重要な軍需物資だったのは本当。

でも、ソレがどうして「根菜切断器」の会社にある? 航空機の材料なのに?

と思ったら、何と、根菜切断器の材料がジュラルミンだって!

んなアホな!!

飛行機造るのにジュラルミンをはじめアルミ系の物資が足りなくて厳しく統制されてたのに、「根菜切断器」なんぞにジュラルミンの使用が許されることなど、そもそも全くあり得んやろうが!!!

それとも、「統制に反してこっそりジュラルミン使ってたのがバレて、逮捕された」とでも言うんならわかるけど。
でもそれならどこからジュラルミン入手したんだか。

考証が全く機能してない。馬鹿馬鹿しいにも程がある。

三太夫

初めまして。

「ヒー様」の遊郭遊びにうんざりして
今年の大河は早々にドロップアウト。
『半分、青い。』でなんとか受信料を我慢しておりました。
ところが10月に入るや‥‥(涙・怒)

怒りに任せてネットを探していたら武者震氏を発見。
大河にしても朝ドラにしても正に『我が意を得たり!』

今や武者震氏のレビューを楽しむネタ元として
受信料を許しております。

さて、まんぷく。。。
結局のところコンセプトは
吉本新喜劇をベースにした
『笑いと涙の15分』のつもりなのでしょう。

ところが実際に見せられているのは
三流以下の旅回り一座の紙芝居。
ちゃんとした脚本などは無く
稽古で座長が大まかな流れを決めるだけ‥

あとはそれぞれの役者が役にふさわしく
悲しいときは「悲しい‥‥」と言い
何かを食べれば「美味しい‥‥」と言う

定番のギャグや決めゼリフを作ってちりばめれば
テレビの向こうではドッと笑ってくれるはず、と

これだけの俳優陣を揃えて
脚本家も過去にはそこそこの仕事をしているのに
この体たらくということは
NHK大坂が宿痾なのでしょうね。

ついでに申し添えますが
どす黒い悪意が通底しているという意味では今作以上に
『べっぴんさん』もクズだと思っております。
その点だけは残念ながら武者震氏と些か意見を異にします。

たつこ

いつもここで的確なレビューを拝見して、溜飲を下げております。
それにしても、ツイッターでもヤフーのレビューでも何とまぁ皆さんお花畑脳なんでしょう。まさか自分がマイノリティとは驚きです。これからも応援しています!

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