寒い国からやってきた“のっぺら坊”
ここで、小樽の土方組の場面に。
尾形百之助は、こんな変人どもを使って、蝦夷共和国の夢をもう一度やるつもりか、と持ちかけます。
この会話はかなり重要ですね。
尾形は、鶴見がのっぺら坊の正体はアイヌだと見抜いていたと語ります。
犠牲者の所持品に、アイヌの風習に従って傷が付いていたから。
土方は、のっぺら坊とその仲間は、極東ロシアのパルチザンだと語ります。
当時のロシアは、革命前夜です。
帝政支持者、レーニン率いる共産主義者、そして少数民族のパルチザンで争っておりました。
日本とロシア――。
この時代に、帝国として認識されていた国家のその陰で、踏み潰されてゆく少数民族がいたのです。
『ゴールデンカムイ』は、そんな巨大な歯車で潰されてゆく者の声を拾っているのです。
春の味覚です
ここで、杉元一行へ。
長い冬を耐え抜いてきたからこそ、春の味であるフキとサクラマスのオハウが美味しいわけです。
これも北海道の感覚だ！
長い雪から解放された喜びがそこにはあります。
喜びの中に、土方が、ロシアパルチザンと見抜いたキロランケがいるわけです……。
アシリパは、青い目をした父・ウィルクの夢を見ています。
ウィルクは、アシリパの母であるアイヌに敬愛を持っていました。
その夢から目覚めたアシリパは、寝ている白石にちょっとキレ気味。
八つ当たりなんですけどね。
谷垣とチカパシの出会い
さて、ここからは江渡貝の偽物刺青人皮作成タイムです。
鶴見がいなくてテンションがあがらない江渡貝を、月島が淡々と励まします。
小樽では、回復した谷垣がマカナックルとともに、村田銃の弾丸を購入中。
村田銃は連射ができない。これは幕末でも重大な欠点でした。
幕末の秋田では、マタギが狙撃兵として組織されておりまして。
谷垣のご先祖も、戦ったかもしれません。
マタギの装備はかなり旧式で、連発ライフルすらあった幕末においては完全に出遅れておりました。
それでもマタギは、一発撃つごとに伏せて隠れて、かなりの戦果をあげたそうです。
村田銃は、マタギにとって相性のよい武器でもあるわけです。
店主は、めんこいアイヌの女が、青い目をしたアイヌの少女を探していたと告げます。
帰り道、谷垣とマカナックルは鹿を仕留め、孤児のチカパシと出会います。
幼いころの自分とチカパシを重ね合わせる谷垣。
谷垣はチカパシの名前の意味も気に入って、運命的に出会う二人です。
チカパシが孤児となった理由にも、明治維新が関わっていると言えます。
明治維新以降、入植者が持ち込んだ天然痘はじめ伝染病で、多くのアイヌの人々が犠牲となりました。
先住民が入植者の伝染病で多数亡くなる事例は、アメリカ大陸等で起きた悲劇です。
日本の北海道やアイヌの暮らしてきた場所でも、同じ悲劇がありました。
幕末には、日本各地で先進的な人々が、種痘による感染を防ぐべく努力をしてきておりました。
しかし、明治期のアイヌの人々は、予防するどころか、天然痘の犠牲となってしまったのです。
インカラマッの能力は本物なのか？
このあと、アイヌコタンに戻った谷垣たちは、インカラマッが占いをしている場所を通りかかります。
アニメの醍醐味って、声優による魅力の増大があるわけですが、能登麻美子さんのこの声、たまりませんな。
心にまでぐっと来るハスキーな声。セクシーで素敵ですね！
ただ、それだけではなく、どこか信じ切れないような、そんな奥深さを感じさせます。
インカラマッは、アシリパの祖母・フチに、アシリパを裏切る男がいると告げます。
谷垣は、世話になったフチにアシリパを連れ戻すため、旅立つことにしました。
オソマはそんな谷垣に、テクンペ（手甲）を片方だけ渡します。
アイヌの女は、好きな男にテクンペを渡すのだとか。
もう一度会う時は、もう片方作っていてくれ、と告げる谷垣です。
こういう谷垣のように、アイヌの人々と交流するうちに心が通じ合い、一緒に暮らすようになった人もいるのでしょうね。
谷垣にはインカラマッが同行します。
ここで実はインカラマッが先んじて鶴見と出会っていたことがわかります。
それならば、初対面の谷垣が妹を亡くしていると、鶴見から知っている可能性もあるわけでして。
彼女の占い師としての能力は本物なのか？
それともトリックなのか？
彼女は信じられるのか？
顔に傷のある男が好きだという理由は？
アシリパをナゼ探しているのか？
そのあたりがハッキリしないところも、インカラマッの魅力ですね。
※うわぁあああああああ、金カム、見逃してしもたっ＞＜；
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文：武者震之助
絵：小久ヒロ
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