わろてんか58話あらすじ感想(12/7)膝枕

商工業で賑わう大阪で、寄席「風鳥亭」を経営するてんと藤吉夫妻。
席主の藤吉は、「通天閣と並ぶ大阪名物」の売れっ子落語家・月の井団吾を迎えたいと奔走する最中、ごりょんさんのてんは、家庭を顧みない夫に不満が募ります。

そんな「風鳥亭」に、行き倒れの女性・お夕がお茶子として働き始めました。

お夕は、はぐれた夫を探しており、偶然その夫を発見。
彼は月の井団吾を名乗る「偽団吾」なのでした。

 

月の井一門の噺家だったと、なぜ気づかない?

偽団吾はふてくされて、「笑いの神様なんかおるかい」と、どこかワケありの様子。
皆があきれたり戸惑ったりする中、藤吉だけはものすごく険悪な目つきです。今週、どんどん人相が悪くなっておりますね……。

お夕と偽団吾は風鳥亭にやってきます。ここでお夕が、
「うちの夫は噺家で」
と切りだします。

てんは目ン玉ギョロギョロさせてビックリの様子ですが、お茶子の仕事に慣れていて、三味線のお囃子もこなせる、しかも彼女は噺家の娘ですから、その旦那が落語家だったとしても、『なんとなくそう感じていた』というのが自然な気もします。

そもそも偽団吾は、月の井一門の羽織を着ているわけでして。
偽物を名乗るための衣装とみることもできなくはありませんが、一門の噺家かもしれない、ということは推察できますよね。
ましてやてんも藤吉も、素人ではなく席主なんですから。

本物の噺家の可能性もあるし、実力未知数であるにも関わらず、一方的に偽団吾を「偽物」断定して忌々しそうに睨む藤吉。
いやあ……本当にこの設定の藤吉さん、席主として、経営者としてのセンスないですよね。

寺ギンだったら
「お前も月の井一門か。せやったら、ここで何かやってみい」
と即座に反応しているんじゃないでしょうか。

仮に団吾に及ばない実力だったとしても、同門の噺家が捕まえられるなら儲けものです。

藤吉が異常なまでに団吾や文鳥といった大物にこだわるのは、自身に全くセンスがなく、ブランドだけを見る――ということを彼自身が暗に認めているんですかね。
現役を磨く努力すらしないわけです。

 

膝枕とかいいなぁ 雰囲気バツグンのお二人です

お夕と偽団吾は、てんの世話で長屋に落ち着いたようです。

この二人のこの雰囲気。いいなぁ。
苦楽を共にして、お互いに惚れていてともかく好きだという、しっとりとした風情。
周囲の空気まで柔らかくなるような何かがあります。

膝枕なんて最高じゃあないですか。
彼女が夫の才能を信じきっている健気さが、部屋に差し込む暖かな陽の光のようで、ジーンとしてしまいます。

うーん、これはやっぱり言うしかない!
チェンジや! この2人と、てん&藤吉をチェエエエエエンジッ!

苦労する夫婦の物語で見たかったのは、こういう雰囲気ではないでしょうか。
ベタだったとしても、人の心に訴えかけたら勝ち。
思わずそう叫びそうになるようなシーンでした。

 

労働争議と称して家族会議のてんが痛過ぎて

ここでてんと藤吉夫婦に場面変換。
空気まで乾燥してザラついているように見えます(´・ω・`)
あの噺家の落語を一度は見てみたら、と持ちかけるてんに、藤吉はそっけない返事でして。

「一番大事なのは本人がどう思うているかや。女房の言うことなんてアテにならん」

カチンとした顔をするてん。
確かに藤吉に対して「芸を見る目」をあると言い続けたのはてんでしたものね。実のところ皆無だったわけですが。

「もう寝るわ」
冷たくてんをあしらい、フテ寝する藤吉。
第9週であれだけ大騒ぎして、周囲を巻き込んでまて行った夫婦仲直りがまた元に戻っています。

翌朝、藤吉と芸人四人組とてんの間で、第三回団体交渉開始です。そもそもが労働問題のはずが、てんがしゃしゃり出てきました。

1. 家族三人で朝食を食べる
2. 愚痴はためずに吐き出す(第9週の堪忍袋でもう懲りたのでは?)
3. 一日一回家族三人で笑う

って、なんやそれ!と視聴者が先にツッコミたくなるかのような要求。藤吉は「もう帰るわ。そんなん家で言え」と言い出します。

藤吉の対応もひどいものですが、確かにこれは職場でやることではなありません。
話し合いにすらならず、芸人は怒り、「ストライキに突入や!」と宣言してしまいました。

「お前が調子に乗るからや」

吐き捨てる藤吉。
ムカッとした顔をするてん。
このカップル、こういうギスギスした顔の時の方が自然体で、笑い合っている時の方が無理しているように見えるのですが、どうしたものでしょう。

 

栞&リリコと飲みに出かける藤吉

その夜、栞が北村家にやって来ます。
藤吉がいないと知ると、てんに疲れているようだとねぎらいの言葉をかけて、去って行きます。

と、長屋のすぐ側で、うずくまる藤吉を発見。さらにリリコと合流して、酒を飲むために出かけて行きます。

「家に帰りにくいんや」
そんな言い訳をして、過去に因縁のある女と出かける藤吉……。
まーたかっ!
もう、団吾じゃなくて、藤吉が戎端から道頓堀にダイブしたらええのに。視聴者の溜飲もさがるで。

栞は活動写真のチラシを二人に見せます。
飲食店で機密情報をペラペラ漏らしていいのか?という素朴な疑問もありますが、栞の活動写真は、歌舞伎の女形ではなく女優を使い、時代ものではなく、現代劇のようです。
ここで栞がリリコも出てみたら、と提案する流れに。
リリコは演技経験ないし、と渋ります。

「そうや、こいつの義太夫語りは絶品や! 演技もきっとええはず!」
ん?んんっ?
義太夫語りと演技は別もんではないですか?

昭和のベテラン俳優の中には、歌舞伎のような口調が抜けず「時代がかった言い回しはやめてください」というケースがあったそうです。
義太夫語りの癖が出たら、むしろ現代劇ではマイナスになると思うのです。

藤吉の見通しが甘いのは百も承知ですが、さすがにこの活動写真は文化祭の出し物とはレベルが違うわけで。

 

借金取りに追われて団吾が小屋に飛び込んできた!

藤吉が家ではなく寄席の舞台で寝ていると、てんに起こされます。
舞台には偽団吾。一席みとくれやす、というわけで偽団吾が落語「崇徳院」を演じ始めます。

偽団吾、かなり頑張っています。
演じる北村有起哉さんはかなり練習したと思います。

しかもこの芸が高度であるのは、
「本当は実力があるのだが、地方回りでちょっとさび付いていて、エンジン全開ではない感じ」
が、表現できている点。
その点、文鳥の「時うどん」(第7週)より高度な演じ分けだと思います。

その熱演に水を差すのが、ぶすっとふくれ面の藤吉でして。
結局、この人は、母親や文鳥の前でどれだけ自分が落語を好きか、救われたかペラペラと話していただけで(第7週)、自身は何もわかってないんですよね。
本当に落語が好きなら、こんなぶすっとした失礼極まりない顔のままでいないと思うのです。

今後の展開で、もしも偽団吾に本物の才能があると判明したら、今日の藤吉のふくれ面を絶対思い出したいと思います(´・ω・`)

と、そこへ、突如、借金取りに追われた団吾が転がり込んできます。

てんがチンピラに絡まれれば栞が通りかかり(第2週)、外米が余ればインド人が通りかかり(第4週)、そして今度は団吾かぁ!

団吾は舞台の上にいる偽団吾を見つけると「これは何の余興や?」と吐き捨てます。

偽団吾はそれを聞くと大慌てで転がり落ちるようにして逃亡。
それから団吾はお夕に「あんな男に関わっても、ろくなことないで」と言うのでした。

 

今回のマトメ「月の井一門スピンオフが見たい」

うん、なんかもう、北村夫妻の話はもうええから、月の井一門スピンオフに切り替えてやりましょう!
ラストでちらっと触れられた彼らのドラマのほうがよほど気になって面白そうに思えるのは、なんだかなー。

本作を救うのは北村有起哉さん、中村ゆりさん、波岡一喜さんの三人になりそうです。
やっぱり関西のお笑いのドラマですから、そういう雰囲気の人が大事だと今週ハッキリしました。
他にもよい役者さんは出ていますが、何かが足りなかった。

高橋一生さんにしたって、言い方は悪いけど客寄せパンダ状態ですよね。
本作の中心にないといけない、夫婦の情愛や、芸が持つ業。そういうものが、月の井一門になってからぐっと出てきました。

が、しかし……。
悲しいかな、彼らはあくまで脇役なんですよね……。
頼りない夫を支える妻のしっとりした風情は、本来てんが担当するはずでした。

別の役者のほうがてんや藤吉に向いているパターンを繰り返してきましたけれども、お夕と偽団吾でついに決定打が出てしまった。

お夕夫婦が見せたのは、相性の良さもそうです。
てんと藤吉は、結婚して子供までいて、苦楽をともにしているのに、互いの情愛を全く感じられません。

この間まではハネムーン家のバカップル。
現在はギスギスした同士。
役者同士の組み合わせも、あまりよくなった気がしてなりません。
そういうのを相性やケミストリーと呼ぶそうですけれども。

出来の良い脇役が、主役のダメっぷりを際立たせる、そんな残酷な展開になってます。
厳しいようですけど、それが多くの視聴者の素直な心情ではないでしょうか?

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
NHK公式サイト

 

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