次の仕事では、短編アニメの原作を選ばなければならない――。
そんな状況の中、千遥が訪れた柴田家へ、兄・咲太郎と共に帰省したなつ。
哀しい戦災孤児きょうだいの運命が描かれた先週でした。
その締めくくりに、煽りに定評のあるイジワル軍師・夕見子が参上したのです。
イジワル軍師・夕見子はやはり強かった
三年ぶりになつと再会する、夕見子。
ここで咲太郎が挨拶をすると、いきなり煽りました。
「あの泥棒の咲太郎!」
「夕見子、失礼だべ」
照男がたしなめますが、これですからね。
「無実だからのう……」
そういう問題じゃない!
一体何をどうすればこんな性格になるのか? まぁ、中身が直江兼続だと思えば仕方ないっか。
夕美子に向かって、なんで来たのかと周囲が突っ込むと、母からの電話があったからだと理由を言うのですが……違う、そうじゃない。
「帯広からどうやって来た?」
交通手段を聞いておりました。
「車で送ってもらったのでござる」
「誰に?」
「大学の友人ですな」
「男の?」
「性別で言えば、男でござろうなぁ。ドライブのついでですな」
「どういう関係なんだ……」
これだけの会話で煽り、混沌に巻き込む。そして一人だけ平然としております。
「そんなことより、千遥殿はいかがした」
出た。これも軍師のやりがちなところです。
ひとつの話題をじっくりと考える前に、話を別の方向に投げる。これで夕見子の友人について、話が吹っ飛びました。
夕見子ちゃんが好きだった、雪次郎よぉおお……この二人はもうフラグ全部折れたのかな。
なつぞら43話 感想あらすじ視聴率(5/20)本当は凄い雪次郎「千遥殿は18で結婚とな!」
夕見子が興奮し始めます。
もう本人の交友関係は、これ以上突っ込めません。あきらめましょう。
放置ではなく、夕見子特有の現象でしょう。
坂場も、同系統の放置をやらかします。
めんどくさいけど、そこがいいのよ、キャラクター。
普通じゃない夕見子
軍師・夕見子は、猜疑心が強いんですな。
その目からすれば、千遥の結婚は疑念まみれなのでした。
・18で結婚? それは本人の意思によるものか?
・それできょうだいと縁切りとな? おかしいであろう!
・周囲の望みに応じただけではあるまいな?
この点を突っ込み始め、なつも動揺するのです。
確かに、その辺が実はクリアになっていません。千遥の結婚でわかっていることとは……
・相手は名妓である女将の養女として、千遥を見染めて結婚を望んだ
・上流階級らしい
・千遥から結婚相手への好意は不明。女将への敬愛はある
・千遥は苦渋の決断できょうだいと別れた
上記のようなことだけ。
この状況から疑問点を抱き、突きつける夕見子は知略が高いのです。
なつが動揺し、周囲はこう突っ込みます。
「なつを不安にするな!」
「人の心をひっかき回すな!」
もっと現代風に言えば「空気読め」ですね。
しかし、夕見子には通じません。
「18で結婚するのが女の意思とな? ハッ」
富士子がたしなめます。
彼女の考えでは、18は適齢期だと。
「母上は、今つまらんことを言いましたのう」
これには剛男も失礼だと止めに入ります。
それでも前作****の**さぁんほど怒鳴り散らさないんですよね。
だからこそ、こういうのびのびとした育ち方をしたとも言えるのでしょう。
軍師の煽りは止まらない
ここで、軍師の「直江状朗読タイム」です。
※このレベルの煽りだ……
女が子を産んだら母になる。それは当たり前のことでござろう。
されど、その前に誰かの妻となり、嫁となる。
そういうことを疑わねば、女は自由になれぬのだ!
この軍師スピーチに、周囲はざわつきます。
照男はこう反論し、砂良は納得しておりません。
「砂良は俺のものだと思ってねえ」
「そうなの?」
早速、兄夫妻を動揺させる夕見子。おそろしい弁舌よ。
そして夕見子はこう言います。
ゴオワッ!
「普通を、疑えッ!」
ついに咲太郎は笑い出します。
なつの育った環境は普通じゃない、と。
なつは普通の家だと言い返しますが、咲太郎は普通じゃないと突っ込むのです。
まぁ、確かにこの煽り、軍師っぷり。普通じゃないしょ。
絵を通してつながるきょうだい
夕見子は夕食をかき乱し、寝室に戻ってきました。
千遥の絵を見て、感心しています。
明美は絵が得意でないのか、自分とは違うとちょっとしょんぼりしています。
彼女は彼女なりに、憧れとなつの妹の座を競うライバルとして、千遥を意識していたのかもしれませんね。
本人も無意識かもしれませんが。
「そったらさみしいこと言わんでよ〜」
そんな明美を察したのか、なつが抱きつきます。
明美は明らかに、実の姉である夕見子よりもなつに甘えています。夕見子には情緒ケアが期待できないのです。それはもう仕方ない。
夕見子はまたも推理タイムを始めました。
こいつはどんだけこういうこと好きなんだ!
ナゼ、千遥は父親の手紙を見ていないのに、似顔絵を描いたのか。
ひとつのことが気になるとひたすら考えてしまうのです。
知らないという意味では咲太郎もそうなのに、父のように絵を描いていたとなつが語ります。
なつぞら52話 感想あらすじ視聴率(5/30)噛み合わない兄妹「あんたが絵描きになるのも必然か……」
夕見子は妙に納得しています。
本作は緻密な構成で、偶然や神頼みのようなことはあまりしない傾向があります。
仏壇前セーブポイントアイテム使用で幽霊召喚とか。
女神が夢枕に立ってお告げをするとか。そういうことはしません。していた方がどうなのよ、って話でもありますが。
そういう『月刊ムー』コラボ現象ではなくて。
それでも、亡父のナレーション要素はあるわけです。
本作の数少ないファンタジックな要素として、父の存在があると思われます。作劇上、限られた範囲で、便利すぎないように入れることはありでしょう。
まぁ、遺伝的特性ということも考えられますけどね。
そして夕見子は、なつのグリム童話集を見てこう来た。
「随分幼稚なものを読んでるのねえ」
随分幼稚って……他に言い方ないんかーい!
夕見子にはきっと友人が少ない。これはもう、仕方のないことでしょうし、本人も諦めていることでしょう。
かわいげ? ハッ、左様なものはござらん。
なつも大して気にせず、漫画映画の原作選びの一環だと答えます。
なかなか決まらないと。
短編アニメでそこまで任されると聞き、興味津々の様子です。負けず嫌いですから、闘志もあるのでしょう。
それを受けて、夕見子はこう切り出しました。
「あんたのきょうだいは、『ヘンゼルとグレーテル』だね」
※こういうのもありです『ヘンゼル&グレーテル』
深い森に迷い込んだきょうだい。
彼らは自分の家にたどりつくために、パンくずを撒いておりました。
それを夕見子はこう喩えます。
◆ヘンゼルとグレーテル=奥原きょうだい
家に帰るための道しるべとなるパンくず=絵を描くこと
パンくずを食べるカラス=時の流れ
時の流れというカラスに、パンくずを食べられてしまう。
そして子供は、子供でなくなってしまう。
「なつがやるなら、ぴったり。これしかないべ!」
そして絵を描く千遥の姿も映ります。
言われてみれば、そんな気がしてきました。
さすが夕見子!
作劇上の何かを持つ、特別な軍師です。強い、いいぞ、強いぞ、賢いぞ!
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泰樹から咲太郎への言葉はこちらが泣きそうになりました。
父母を失い、長男として妹2人を抱えて生き延びようとした咲太郎。幾度も力不足を嘆いたと思います。その彼をよくやったなと労えるのは、同じ男性であり、たった1人家族を養おうと奮闘した彼だけではないかなと思います。まるで父親に労われた思いがしたのでは。
それはそうとして、最近、岡山の高校生が、蝉の寿命は7日というのは俗説と証明して、ニュースになりましたね。あれも、すごいなあと思いました。まさか、あんなに常識然とした知識が、俗説だったなんて。ワクワクします。世の中、まだまだ探検しがいがあるんですね。