手塚治虫氏の漫画『どろろ』を読んでいて、印象に残った場面があります。
貧しい子供であるどろろを駕籠の中から見かけた武家の貴婦人が、立ち止まって憐れみ、恵んでやろうとするのです。
その直後、どろろの父は激怒し、その施しを突っぱねます。
彼は「こんなものは偽善だ、上層階級のごまかしだ」と気づいて怒りに燃えたのです。
そもそも、どろろとその父が飢えに苦しんでいるのは、戦乱を続ける武士たちのせいでした。
そうした責任から逃れ、罪悪感をごまかすために、偽善的な施しをする。
お前たちは何様のつもりだ、こんなことは許さない!
偽善への怒りがそこにはあった……。
ナゼこんな話をするかって?
まさに本作の立花夫妻が、この偽善的な施しど真ん中を突っ走っているからです。
自分たちが使う鈴、タカ、従業員たちを搾取するようにコキを使っておき、他の人に施して、
「人の役に立っているんですぅ〜〜〜!!」
とは、まさに偽善のど真ん中ですよ!
本作ってこういう、嘘っぱちの偽善だらけですね。
今日はその偽善ポイントを、怒りのデスロード指摘してゆきます。ヒャッハー!
【46話の視聴率は21.4%でした】
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優しき帝大卒のジェントル……じゃなかった!
タカに群がって所有欲争いをする従業員ども!
誰一人として、タカを大切にしたい、タカに感謝している、そんなことは言いません。
「俺のものだー!」
ツバをつけるのが誰が一番か、そればっかりを話し合っている。性的なニュアンスをいちいち匂わせるあたりもゲス。
これがもし『仁義なき戦い 代理戦争』のようなヤクザ映画で、
「後でミス広島を抱かしちゃるけん」
と言い合う世界なら、まぁ理解できなくもない。
善悪は別として、
『そういうアウトローの世界なんだなぁ』
と納得できます。
※おなじみゲス親分、山守のセリフっす
しかし『まんぷく』は違いますよね?
聞きますけど、朝ドラですよね?
今朝、最低最悪だと思ったのが、神部が力仕事を手伝うところです。
それまで編集さんは、神部のことを
「実はタカを守ろうとする優しき帝大卒のジェントル」
だと思ってたらしいです。
なんせ周囲は鼻息荒い野郎ばかりですからね。
16才の娘を守ってやろう!という人が一人ぐらいいたっておかしくない。
神部君だったら適任――と思っていたら……むしろ姑息な手でアプローチするクソ野郎だった、と。
男ならではの力仕事アピールして、
「すごぉ〜〜い!」
とパチパチして貰いたがる奴!
女でも出来る仕事でも、ちょっと力仕事でカッコつけられると思うと張り切る奴!
それって
【皿運びは手伝わないのに、BBQで肉をカッコつけて焼く時だけドヤ顔する系男しぐさ】
ですわ。
本当にタカの重労働が気になっているのであれば、立花にシャドウワーク要員を増やすように掛け合えって話なのです。
そうしないで本気で口説こうとするんですから、こいつは本物のロリコン野郎です。
いくら初婚の早い時代だったとはいえ、萬平(まんぷくモデル→安藤百福)の腹心であり、立花家に恩を感じていて、その家の娘を狙うって最低最悪ですわ。
自分の漢らしさを見せつけて口説こうとする。
神部もクズ路線一直線だ。
全員山守 全員犯罪者
そんでもって、このタカ関連の一連の話。
【ただしイケメンに限る】思想も感じさせます。
ナゼ本作の男性描写ってこんなのばかりなん?
・盗電萬平
・親スネ忠彦
・缶詰野呂
・中抜き世良
・横流し加地谷
・ロリコン神部
全員山守であり全員犯罪者。それでもセクシーイケメンだからエエやろと思っていたら、それは違いますよ。
あっ、忠彦は仕送り貰ってるだけで犯罪者ではないですね。それと真一もまだマシ(ただし出番が少ないからか)。
でもやっぱり、最低最悪の座は立花萬平に決まりです。
神部はじめ皆働いているのに、今日も机の前で考え込んでいるだけ。
タカが重たそうな洗濯カゴを運んでいてもスルーでした。
それで、なんですって?
「人は食べなければ生きてゆけないんだ!」ってか?
いや、なに、その失笑もんの雄叫びは。
従業員を慰労するなら、ラーメンでも寿司でも注文して、ビールを飲んでぱーっと騒いでいればマシでした。
慰労会の食費すらケチるブラック経営者では、1ミリも同情の余地がありません。
徳川家康の側室・英勝院(お梶)を見習え
そもそも塩って食の根本ですよ。
それを「人の役に立たない」って何なのでしょう。
以前も指摘しましたけど、太平洋戦争時の日本兵は塩分不足に苦しみ、そのせいで亡くなった方もおります。
現在だって肉体労働現場には塩味のキャンディーがあるでしょ。
塩が欠乏すると、命に関わるんです。
塩をなめんな!
こんな話があります。
徳川家康の側室・英勝院(お梶)は、あるとき家康と家臣団が一番美味しいものは何かと盛り上がっていた際、こう答えました。
「それは塩でございます。いかなる美味であろうと、塩味が欠けていれば食べられたものではありません」
周囲がなるほどそうかと盛り上がっていますと、今度はこんな質問が出ました。
「それでは一番まずいものは何だろう?」
「それも、塩でございます。どれほど美味しいものであろうと、塩味がきつすぎれば食べられません」
この答えを聞いた家康始め周囲は、その聡明さに感心したのです。
「この方が男であれば、大軍を率いる名将となったであろうに」
これぞまさに賢夫人であり「内助の功」なのです!
武将の妻の逸話ってのは、
『なんてこの人は賢いのだろう』
というものばかりなんですよ。
自分の妻がいかに賢い女性であるか
『三国志』の英傑たちも、
「自分の妻がいかに賢い女性であるか」
に誇りを持っています。
それが本作みたいに、自分の意思も感情もない、ただの「すごぉ〜い!」と褒めてくれる女。
賢夫人列伝からは確実に除外されます。
まぁ、わかりますよ。
当時は女性の扱いなんて酷かったって言いたい方もおりますよね?
違うんです。
賢い女性は大昔から尊敬されてもいたんだってば!
英雄の隣にいる妻や母であれば、なおのこと。
それに本作と同時代、これより古い時代を舞台としたドラマで、ここまで妄想めいた扱いを受ける女性像はいませんでした。
『あさが来た』や『カーネーション』では、「女のくせに」と言われてもくじけないヒロインが描かれました。
女性が差別されることが当たり前の時代でも、それに対してヘラヘラ笑いでごまかさない。
自分の考えをハッキリ示す、そして行動に移す。
ナゼ、そんな女性像にできないんですか?
史実無視して好き勝手描くなら、いくらだって女性像を描きようがありますよね。
今日のラストの福子(まんぷく立花福子モデル→安藤仁子)が産気づくところ。
これだって、立花が福子の代わりに従業員を叱りつけていればよいはずです。
こんな出産ギリギリの妻に何やらせとんねん!
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素朴な疑問ですが、固定電話が引かれているのに、なんで電報が出てくるんでしょう?さすがに電報受けて電話で返事では、違和感MAXでした。
洗濯ゴシゴシのシーンがこれまで一切なくて、各自で洗っているんだか、奥さん大変だろうに誤魔化してるなと思っていましたが、唐突に干すシーンだけ出てくるんですね。現場の方は、洗濯機があるつもりになってるのかな?
そんなにミソジニー描写・差別描写・性描写がしたかったら、もういっそガリンペイロドラマでも手掛けてくれよと思いました。
丁度、NHKには大アマゾンという上質の資料があるし、国分さん初め現地を見てきたスタッフさんもおられるし。
視聴者だって「そういう世界ならアウトな描写が溢れてましかたねーわ」と納得できますし。