朝ドラの挑戦よ、続いてゆけよ
一年前、『半分、青い。』を見終えたとき。
こんな朝ドラに向いていない人物がヒロインだなんて、それでいいのかと混乱していまいました。
ちょっと絶望しかけたほど。
こういう普通の世界に向いていない人物なんて、朝ドラではもう二度と取り上げられないだろう。
あー、ダメだ。終わった。そうどんよりしていたのです。
その後の作品で、徹底的にその思いは強まった。そう絶望している心に、多くの人が釘をぶちさしていきました。
「あのダメなNHK東京朝ドラと違って、NHK大阪の今度のドラマはいいんでしょ? あんなNHK東京の作品はそりゃ叩かれるよ。私だって気持ちはわかる」
そう言われるのが嫌なので、朝ドラトークは極力避けていた。
その『半分、青い。』の一年後。
一年前の自分に、大丈夫と言ってあげたい。
楡野鈴愛はかつて、
「この世界は私のために出来てはいない」
と言いました。
それはそうだろう。朝ドラに向いていないもんなぁ、だからこそ袋叩きにあったもんなぁ……さようなら鈴愛、律。きみたちのような人を朝ドラで見ることはないだろう。
そう思っていたのですが。

本作にも、鈴愛や律と同じく、朝ドラにも世界そのものにも向いていないような、そんな奴らがぞろぞろ出てきました。
唐突で、ドヤ顔をして、よくすっこける。
いきなり【抹殺パンチ】をする。登場と同時にダメ出しをし始める。
背後でものすごい顔をして絵を描いている。服のセンスが個性的すぎる。
一人でものを食べている。興味がない話を聞こうとしない。
猜疑心が強い。執念深い。めんどくさい。口が悪い。話がくどい、長い。
空気を読めない。妄想を長々と語る。
予算と締め切りが設定されるだけで、動揺する。
すねると一人でどこかへ去る。
本作は、ものすごく丁寧でレベルが高くて、登場人物も個性があって魅力的です。
だからこそ、そういうところは目立たないのかもしれない。
けれども、そういう割とどうしようもない奴らが楽しそうに生きていました。
ドラマからも。アニメからも。
萌える典型から飛び去った、元気な奴らが老若男女におりました。
ここから先、細かくは総評で書かせていただきますが、本作はしみじみと開拓だと思うのも、まさにこのあたりです。
社会の隅っこで俯いて生きてゆけ――そう言われがちな人たちに、顔をあげてもいいんだと伝える。そういう力がありました。
それは何も、善意だけの話じゃないんです。
そういう彼らと生きていかないと、世界は、開拓できない。101作目の先はない。
今まですくえなかった人をすくいあげて、新たな世界を一から作る。
そんな力強い傑作であったと思うのです。
朝ドラの開拓を描いて半年。
十勝を吹く風。朝ドラを作る風が、ここまで届きました。
そんな開拓精神には、敬愛しかありません。
素晴らしいドラマを、ありがとうございます。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
アニメにできることとして、
ありえないことを本当のように描く、
そして、
ありえないことのようにら本当のことを描く
この言葉は、アニメに限らず、多くの創作活動に通じると思い、特に後半がとても好きな言葉だったのですが、その後ドラマ内で取り上げられるときはなぜか前者(あり得ないことを本当のように)の言葉ばかり引用されてて、その都度軽くフラストレーションを感じてました。
こんなに共感できる物語なのに、肝心のこの部分で製作者と意識がずれてるのかと残念に思ってたのですが、最終回の最後の最後に満を持して後半の言葉が出てきて本当に感動的でした。
コラムも楽しませていただきました。
お疲れ様でした。
ありがとうございました。
武者さんへ
この度の半年感もありがとうございました。
私は、なつぞらは、アニメの世界をアニメのままで終わらない構成に希望を感じました。
かつて宮崎監督は、子どもはアニメばかり見ずに外へ的な発言をしていたように思います。※うろ覚えですみません
現実逃避としてのアニメではなく、現実と影響し合い、力を与え合うアニメの姿が描かれたと思います。
第1話の空襲のアニメは、なつと一久さんの作ったアニメでした。それが最終話から12年後なら、そのアニメはまだ未知のものなんですね。モデルとなった火垂るの墓をさらに進めたアニメになるかもしれません。それを作るのは、2019 年以降の朝ドラかもしれないし、私たちかもしれません。
なつぞらが、アニメの果たす役割に対し、ただの激務天才礼賛やジャパンクールの壺の中に留まらず、未来に続く伸びやか視点で描いてくれたことに感謝します。
また、なつぞらをより深く楽しませてくれた武者さんにも感謝いたします。
総評も楽しみにしています!
半年間、ドラマと共に楽しませていただきました。心からお疲れ様でした。総評楽しみにしています。
武者さん!!一日も欠かさず!!!本当にお疲れさまでした!!!
優れた作品をともに鑑賞できた喜びを多くの方が味わっていることと思います。なつぞらの世界にひたり、ワクワクしながらレビューを待つという半年間でした。武者さんひとりで毎日これだけの量と奥行きのあるレビューを続けられたこと。偉業だと私は感じます。心から、ありがとう!!!!