名セリフ、出ました。
ファンブックがあるなら買わなくちゃ。十勝にも行くべさ。
これは大事だと思うんですよね。
我が子に過剰な期待をしすぎるわけでもない。でも信じている。
そういう父としての顔は、ありました。
なつぞら42話 感想あらすじ視聴率(5/18)それぞれのキャンバス「父さんはお前が誇らしい!」
夕見子と明美の強すぎる個性を尊重し、進学させ、就職も見守った。
娘たちの突っ走る道に驚き、縁談を心配していたのはむしろ富士子でしたもんね。
あの泰樹すら、なつと照男を結ばせる作戦をしましたもんね。
「頼りない父だけど……」
なつはそう自嘲する剛男を励まします。
「父さんは、強くて優しい。開拓者の魂が宿ってる」
照男にも、夕見子にも、明美にも、なつにも。
それはちゃんと伝わっているって。私にも伝わっている気がする。
「なつの生き方も、伝わってるべさ」
剛男みたいな、そういう昭和の男だって、当然ながらいたんですよ。
プロじゃなくても料理をするとか。下戸とか。タバコは無理だとか。
社員旅行で芸者さんが呼ばれると、部屋に戻っちゃうとか。
そして子煩悩だとか。
映画での高倉健さんみたいな、そういう背中で語る男あたりがもてはやされたわけでして。
映画の像であり、実像ではありませんよ。それならまだマシかも。
実録路線を突っ走る系と言いますか……。
※「あとでミス広島抱かしちゃるけん」的な
そういう昭和の、隠れていたおとなしい男たちを輝かせるのだから、本作は優しいドラマだと思います。
剛男がなつを十勝へと連れてくるところから、本作は始まります。
威張って、ドドーンとした像になっていても、まったくおかしくないと思う。
なつぞら1話 感想あらすじ視聴率(4/1)タンポポ食べるヒロインに期待♪舞台は昭和21年(1946年)――。
北海道十勝地方に、なつはいました。
9歳。終戦の翌年にあたります。ここで彼女を連れている復員兵が柴田剛男です。
でも、名前とのギャップが激しい剛男だからこそ、彼の魅力がありましたね!
そういう現実と、実像を把握することも大事かもしれない。
草刈正雄さんなんて、インタビューを読むと、謙虚で、マウンティングをしようなんて気持ちを欠片も感じさせません。泰樹のキャラクターには、彼自身が反映されているのでしょう。
◆草刈正雄「ポッと出の元モデル」だった僕が氷河期を経て、再ブレイクできたのは
◆草刈正雄明かす「“泰じい”が忘れられない『なつぞら』名場面」
吉沢亮さんに対して、地味だの暗いだのそんな意外性を見出すニュースをチラリと見かけました。
ウンザリです。
男なら飲む・打つ・買うヒャッハー! そういう世界観は、もう古びて朽ち果てておりましょう。
本作の語りかける「優しいあの子」には、男性もちゃんと入っていると思います。
マッチョイズムや、ホモソーシャルからは、カースト下位にされてしまう。
それはそう思う方がおかしいだけなんでないかい?
そでないんだわ、優しいあの子は、とても素晴らしいしょ。そう語りかけてくる。
女性だけではなくて、男性も救うドラマなのです。
ここはやはり、富士子ちゃんでないと
そんな剛男が十勝に戻り、千遥の顛末を報告しています。
こちらは一件落着にせよ、心配しているのは、なつのこと。
家事をしつつ、家で仕事をする。それが6月まで!
しかも、春からは優が小学校に入学するから、保育園のように預けられるわけでもないのです。
学校に帰った優をどうするのか?
そこに悩んでいるのだとか。
やっぱり本作の男たち。それにスタッフは優しいべさ。
夕見子は女だけが食事の支度をしているとダメ出ししましたが、それでも彼らは家事の困難を知っているのです。
なつぞら84話 感想あらすじ視聴率(7/6)男子厨房に入るべきこういうシャドウワークを軽視し、「飯炊き(※しかも大人数)くらいで愚痴るババアw」と笑いものにしていた、そんな酷いドラマもありましたっけ……。
家政婦を探していると聞いて、優と同年代の拓男がそれは何か? と尋ねます。
地平が、その中身を説明します。
本作は子役にも手抜きがないのです。年齢、世代、個人による知識の差があります。
どう考えても、その年代、その年齢、その経済状況ならば知っているはず。そういうことは質問しません。
同じくらいの年齢でも、上流階級かつ年代が上ならば、知っていてもおかしくはありません。
「富士子、お前、行ってやれ」
ここで素早く、そう言い切る泰樹。
照男が牛を増やすと言った時と、比べてみましょうか。
判断力や知性は衰えていない。
照男に判断を委ねていたのは、権力移譲か、気力がないか。そのあたりでしょう。
「実はちょっとそう思ってた」
ここで剛男もそう切り出します。
この力関係よ。そう思っていても、富士子ちゃんにそんなことはっきりとは言えないんだよ〜。そういうことでしょう。
だがそれがいい!
こういう状態を「女房の尻に敷かれる」とは言うものの、尻に敷かれる幸福もあるんですよ。
しかし、富士子は気乗りはしません。
拓男も入学するし、牧場アイスクリームのこともあるし。
なつぞら140話 感想あらすじ視聴率(9/10)圧巻の北海道開拓史二人はアイスクリームを作り、牧場見学者に販売するそうです。
そういう理論を、きっちり埋めに行くのが本作よ。
照男は「入学しても拓男のことは心配しなくていい」とキッパリ。
砂良は「アイスクリームのことは私がやる」と言い切る。
照男が、アイスならば夏から、6月までならば気にしなくていいと付け足す。いい夫婦です。
「わかりました。私が行きます!」
かくして、富士子出馬と相成るのでした。
本当に短い会話ですけれども、今日も巧みでして。
・富士子に押し付けない、反論はさせる
・富士子は孫や夫への愛情、面倒ではなくて「アイスクリーム販売」という商売への意欲を見せている
・反論に対して、きっちりと理論で反論する
理詰めバリバリではあるんですよね。
これも『半分、青い。』以来の女性自立への流れだと感じています。
あの作品では晴の写真にせよ。
キミカ先生の車にせよ。
女性が一人で楽しむ――夫や男以外と楽しむことを見せていました。
鈴愛は、晴の撮影した写真を見ます。
素人とも思えん!と感嘆の声。キミカ先生は赤いマイカー写真を見せました。
夫と登山するとか。
彼氏の助手席にいるとか。
そういうものとはちょっと違うのです。
まぁそういうのが脳天直撃する人っているんですよね。男でも、女でも。
女は常に男にアピールするためのスイーツ作り、メイク、ファッションばかりを気にしている。そう信じたい信徒たちよ……。
「もぉぉぉぉ〜おかぁさんてばぁぁぁ〜」
と、何ら確たる理屈もなく、ともかく口封じに走る。そういう同性牽制と盲従こそ、いい女♫ そんなゲスワールドです。
富士子の背後には、じいちゃんの愛
かくして富士子が上京し、マコプロにやって来ます。
陽平も「おばさん!」と迎えております。
「お久しぶりー」
富士子は、駅からタクシーで来たそうです。
マコは早速丁寧に、ロケハンのお礼を言っています。
下山と茜もご挨拶。
富士子は、優がお世話になったと頭を下げます。
なつぞら130話 感想あらすじ視聴率(8/29)少子化の足音が……「私は何も……」
そう謙遜する茜。
皆それぞれが感謝しあっていて、本当に素敵ですよね。
富士子は、ここで道産子あるあるを発揮。
それは大量のお土産です。
しかも農作物と酪農品。じゃがいもとバターのセットでした。多い! こんな重たそうなお土産を、十勝から運んできたの? なまらすごいべさ。
「なんもないんだわ」
と言いつつ、その物量がすごかった……そういう道産子らしさがそこにはある。
ブランドだとか、老舗の羊羹だとか、デパートで買ったとか。そでないんだわ。これが道産子だわ。
神っちがここで大喜び!
ちょうど描きたかった、そうモモッチを誘って調理しようとし始めます。
「すみませんっ、いただきます!」
とは言うものの、テンション高いし、子供っぽいんですよね。
これも、濃くてちょっと残念な神っちかも。
マコさんや他のメンバーのように挨拶を抜きにして、自分が使えるかどうかで浮かれてはしゃいじゃう。
人によってはこいつは非常識だと怒らせかねないので、要注意ですよっ!
マコの経営センスと常識、社会との折り合い。
神っちのちょっとズレている、かつ濃いセンス。
やっぱり、二人でひとつです。
なつはここで、富士子にこう謝ります。
なつぞら133話 感想あらすじ視聴率(9/2)魔王が男女で降臨だ「なつを甘やかすなって、じいちゃんに怒られない?」
「じいちゃんがなつを助けろって言ったのさ」
なつも、これにはびっくり。
90を超えても、孫世代を驚かせる。これぞ柔軟性、まさに知略99、【表裏比興】ォォォ!
泰樹のすごいところはたくさんある。
この最晩年までアップデートできること。それこそ彼の偉大さではありませんか。
――偉大なる総大将は、牛舎におりました。
牛の間に、小さななつの姿が。
一生懸命に働いています。
その姿を探して、しゃがみこみ、そのまま動けなくなってしまう。
なつぞら2話 感想あらすじ視聴率(4/2)大人が守り、育ててゆくものなつよ、感謝を込めて、来週に続けよ――。
来週が、本作のフィナーレです。
無冠の王者
今日はもう、感無量です。
来週で終わりなんだな、と。
ただ、ロスにはなりません。
なんでもかんでも【ロスと言えば盛り上がっていて、私はファンだとアピールする風潮】が好きじゃないという、個人の性質もありますが。
本作は大好きだし、『大草原の少女ソラ』は、いっそ全編作って欲しいほどではあります。
スピンオフも絶対に見る!
でも、胸に穴は開かないと思う。
むしろ、満足です。
いや、だってさ。
これ以上を求められないくらい、完成度が高いしょ。公式サイトのマコプロセットなんて、文句のつけようがありません。
本作は全力投球なもんで、楽しいっちゃ楽しいけれども、見ていて脳をフル回転させられて、しんどいと言えばそう。
朝からこんな情報過多でいいの?
そう疑念を抱く人がいたら、黙って頷きたくなるくらい、毎日濃厚でした。
それはまるで、しぼりたての牛乳だった。
そうそう、予告編といえば。
ちょっとネタバレになりそうではあります。
嫌な方は数行飛ばしてくださいね。
大泉洋さんはある意味最強の存在ですね。
北海道の王者だわ。
そうかそうか、あのアニメのスポンサー、なんだか理解あると思っていたらそういうことね!
信之でスポンサーのパロをしていたので、爆笑してしまいました。
地味でもいい。
それも、スポンサー枠総大将あってのことじゃああ!
それに、私は確信しています。
NHK東京チームの挑戦は、次作も続きます。これで終わりじゃない。
『スカーレット』も好感触がありますが、それ以上に今からもう『エール』が怖くて、そして楽しみなのです。
さて、今日の締めくくりに。
泰樹といい、剛男といい、なつといい、イッキュウさんといい。
【内助の功】路線でもない。
成功した誰かが、ドヤ顔マウンティングをするわけでもない。
本作は結局何がしたかったの?
そんな理解する気のない、薄情者反応を集めたネットニュースもある。
でも、答えはあるんです。
本作は、無冠の王者の物語だと思う。
どうしてかれらの精神は、年老いないのか?
歳をとっても、感覚をアップデートできるのか?
答えは、この文にあると思うのです。
引用させていただきましょう。
光るもの全てが黄金とは限らない。
彷徨うもの全てが、道に迷っているわけではない。
年老いても、強き者は枯れない。
深い根に、霜は届かない。
灰から火が蘇り、
影から光がまた芽吹く。
折れた刃はまた研がれ、
無冠の者は再び王となる。
J・R・R・トールキン『指輪物語』
信尹「読まんでいいタイム、まだあったのか……」
次作以降にむしろひきずっていただかなくて結構です。
ちょっといつものきついことを書きますけれどね。読まんでいいタイムです。
せっかくだから、NHK朝ドラに漂う淀んだ空気は突っ込んでおかないと。それもあと少しですし。
NHK東京朝ドラを日がな一日罵倒している信徒が多い割には、NHK大阪前作って功績をアピールしますね。
そりゃもう、不自然なくらいに。
声だけ数秒間出演しただけの****主演女優のおかげで、恩恵を被っただの。
同じく一瞬出てきただけの、****ヌードルのおかげで、SNSが熱狂しただの。
呆れ果てたのは、朝ドラ恒例ヒロインリレー記事にまで、****主演女優の名前が見出しで出てきたこと。
リンクはしません。彼女の名前で検索してください。
論調はこんなところです。
【****主演女優のありがたい教えのおかげで、『なつぞら』はなんとかなって、その恩恵が『スカーレット』にまで引き継がれる!】
関係ニュースまで、教団臭、宗教ぽさを演出せんでもいいしょ。
それに、関係ないしょ。
NHK東京チームの頑張りしょ。
ただ、NHK大阪****のセットや衣装が手抜きであった理由が、これではっきりと推察できました。
NHK東京は最終盤でもロケできていますが、年明けはずっとスタジオ内のセットをぐるぐる回っていた****。
どうしてお金が尽きたの?
メディアコントロールに取られたんですね。そういう嘘は、必ずバレます。その日が楽しみではあります。
下駄を脱いだかもしれない、そんな『スカーレット』も。
にしてもさ。
スポーツ新聞のエロ小説。カンヌ映画祭のようなブランド大好き。マウンティングとハラスメント大好き。
そんな空気が大好きだからって、それを周囲に広げなくてもいいでしょう。
あれは半年前に終わったんですよ?
いまだに【この素晴らしい私を怒らせたNHK東京ぉぉおお!】と激怒している信徒。
しかも、確たる理由がない。この素晴らしい私を怒らせたことがともかく悪い! そういう論調だわさ。
いや、もうやめましょう。
自分の人生を生きてみませんか?
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
剛男さんはステキなお父さんですね。最弱キャラとして和ませてくれる存在に見せて、実は子どものことを信じて見守れる、立派な父親でしたね。そして、ここぞという時にはしっかり主張し行動出来る人。その姿は物語の中でブレずに描かれていたんだなと、この回を通して確認することが出来ました。
柴田くん、本当にありがとう。のナレーションもよかったです。私も、そうだよ、本当にありがとうと思わず言っちゃいました(笑)
脚本家さんからの、剛男さんへの愛情を感じました。