幕末から明治、大阪経済再生への道
歴史的正確性では問題がある本作。
それを上回る魅力は、幕末から明治にかけての大阪経済隆盛を巧みに描いたところでしょう。
あさと五代の接点は、ドラマで描かれるほど濃厚ではありません。
にも関わらず、五代が重要性をもって語られる意味が痛感できるのは、大阪経済の立役者であるという史実があればこそ。
確かにあさとの絡みやロマンスの香りも、魅力的です。
しかし、それ以上に、五代という忘れかけられた英雄が、ヒロインとともに大阪経済を立て直し牽引する様を描いたこと。
それが、ともかく本作の偉大さだと思います。
大阪の歴史そのものの魅力を伝えてくる。
これぞ、大阪でなければ作ることのできないドラマだ!
そんな力強さがありました。
本作は巧みなロマンス描写のことばかりが魅力として強調されがちですが、私個人が強烈に推したいのが、まさにこの大阪の力強さが伝わってきたことなのです。
その点、『わろてんか』は小林一三の偉大さや経歴をろくに描かず、見事に失敗したわけで……。
本作は一体何だったのか?
後半は粗雑にストーリーが流れてゆき、竜頭蛇尾と言いたくなる部分もありました。
視聴者狙いの巧妙さによって、過大評価されているのではないかと思われる要素もあります。
それでも、突出した五代友厚像といい、魅力があったことは確かです。
NHK大阪の時代ものの一基準として、推すことのできるドラマ。
『カーネーション』まで引きあげろとは申しません。
それでも、本作よりやや劣る程度まで引き上げることができたらば、充分健闘であると現状では評価できます。
本作は、今後も朝ドラの基準として語り継がれるべき作品でしょう。
なお、モデルとなった広岡浅子と五代友厚の史実をご覧になりたい方は以下の記事をご参照ください。
お二人とも、ドラマに負けず劣らずの波乱万丈な人生です!
また、各話におけるレビューも記事末に追記して参りますのでよろしければ併せてお楽しみください。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]
親子の確執のシーンの評価については、以前の本放送当時のレビューで示されていましたが、個人的には疑問を感じていました。
レビューで論評する際、「登場人物の未熟さの表現として、このような台詞はそぐわないのではないか」等と客観的に論ずるならわかりますが、実際のレビューはそうはならず、「こんな未熟な登場人物は不愉快だ。嫌だ」という感情的な方向へ偏って行ってしまい、その挙げ句、作品自体についてまでマイナスに評価するに至ってしまいました。
『あさが来た』再放送に対するレビューが進行中(しばらく中断しているものの)ですが、この点についてはご再考いただき、同じことの繰り返しでない、冷静で客観的な分析・解説がなされるのが望ましいと考えられます。
なお、朝ドラの「親子の確執」シーンの解釈について、レビュー筆者の武者氏とは異なる理解・解釈が、『まんぷく』レビューの第76話及び年内総集編の各コメント欄に投稿されています。
いろは歌、西郷どんで出ていましたよ。「ろ」だけかもしれませんが。